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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
11章前編 悪意差す世界/スベテが終えた日
346/353

新世界→信世界


 獄景とはある意味、空亡惡匣の亜種。

 おのれの領域で世界を塗りつぶし、内部をおのれ自身とする。


 領域ほにゃららや固有なんちゃらと違って、圧倒的な範囲を持つ代わりに、有する能力は似たり寄ったりだ。


 効果は内部における圧倒的なバフデバフ。

 自分は何でもできるし、相手を自分の支配下に置ける。


 最低領域は世界一つ。天国にいるなら天界を、異世界にいるなら異世界そのものを埋め尽くすことが最低条件。


 個人間での違いは範囲と見た目。


 私は火と光、真百合が水

 シンジが大地で、ハヤテが大樹

 それが各々の獄景のカタチ。


 ならば頂のカタチはなんなのか?

やはりというべきか神薙の獄景は、人であった。


 信世界の爆発に光も音も熱もない。

 ただの質量の発散。

 爆心地は神薙と私以外の森羅万象。


 何かを起点に、顔無し髪なしの人型をした存在が爆散。

 細胞、原子、意思。それらの最小単位が人に置き換わった。

 物質が、概念すら人のカタチに侵される。


 速さを越えた速さで質量を持った巨人が三次元四次元それ以上の次元に飛散する。

 虚構も埋まり、爆火はありとあらゆる世界にねじ込まれる。

 人の爆竹。人が人を生む爆弾。

 1つの爆発で人が炸裂しさらに分裂。

 1が無限を生み、無限の1が更なる無限を生む。


 質量による飽和圧殺。

 人の濁流。人型の津波。


 時にして一瞬か、もしくは永遠か。

 時の流れに頓着する必要のないが、それは確かに永遠にして瞬閧


 始まりの喪失は死。

 死という欠陥があることを「」は何人にも語らせない。


 続きの喪失は飢餓。

 奴が作りし道理に足りぬモノがあることはありえない。


 三度の喪失は闘争

 奴による完全完美な世界に、抗う余地は存在しない。


 そして喪失は支配

 使命のみを果たす奴らに、上も下もありはしない。


 喪失は傷、病、毒と順々にヒトに仇なす概念は、その存在ごとを否定される。




 そうして新世界は信世界に置きかわり、置き換わらなかった衣川早苗の肉体は潰された。




 次に私が知ることになったのは3次元的永遠、4次元的永劫の時が流れ出たときのこと。


 人は進化した。


 王領君子も遠くの稚魚も差異はなく

 人によく似た人でないヒト型の頭に置き換わった。


 手も足もない頭だけの存在。

 瞳は閉じ眠っているように見える。


 髪もなければ形も変わらない。

 差分もない完全で完璧なコピペされた頭顱。


 隙間なくすし詰めにした空間。

 上も下も右も左もただ人の生首がぎゅうぎゅうに詰まれれる。

 (それこそまるで果実を瓶に入れるゲームのようだ)


 そこに私が頭だけになっているだけだ。


 混乱したのは一瞬だが、私にしては察しが良く信世界これが何なのかもわかった。



 私達人間の言葉で一番近いものを表すなら呼吸。



 信世界は能力ではない。


 息をして酸素を取り込み、二酸化炭素を放出する。

 決して能力ではない。単なる事象。

 身体を動かすための機能。


 心臓を動かすことを攻撃とは言わない。

 これはただ神薙が本来の動きをしようとしただけ。


 何もしていない。防御も攻撃もない。

 ただあるがまま。

 それが正しいという本来のカタチ。



 ※何かを試しているわけではなく、単なる事実を連ねる。



 人の成り立ちを、神の姿を模して造ったとする聖書がある。

 さらに言うと私達の成り立ちは空亡惡匣だ。

 それゆえ、柱という中心理論が発生している。


 中心や頂点があり、周りはそれに倣って存在した。


 この事実がある上で、もう一つの事実を述べる。


 人は完璧じゃない。愚かで弱く間違える。

 他の生物からだとそう思われないだろうが、人から見ればそう見えるのだからしかたない。


 なぜこんなことがわからないか、こんなことが出来ないのか、感情で動くのか。

 誰もが他者の愚かさを一度は嘆いたことがあるだろう。


 特に神薙から見れば、それはもう想像に難くない。


 奴はいつも思っている。断言できる。

 これくらい、この程度、たいしたことない。


 大切に思っているのは間違いない。

 それが本音。


 この二つの事実。なぜそうなっているか。


 かつての天が愚図だったからで片づけられる。


 天が人をちゃんと作らなかったから、劣等がうまれる。

 天が人をちゃんと作れなかったから、弱者がうまれる。

 試しているわけでもない、そう考えられるだけの話。


 という考え方を200年前ならできた。

 今の私達、新世界の住民がそれを出来ないのは、頂点が完全無欠だからだ。


 それでもまだ、劣悪愚鈍が生まれる理由は、神薙がそうあることを望んでいる。


 この世界は奴が中心に立つことに耐えられない。

 この世界は奴が頂点であることにあらがえない。


 神薙が頂点だが神薙が頂点になると世界が耐えられない。


 この構造は間違えている。人々のために間違えてくれている。


 ならそれを止めれば?

 自重をやめ自縛をやめた先、楽をして何もしないだけ。


 それだけで新世界は崩壊する。それだけで信世界が構築される。


 それが新世界、ならば信世界は間違えることをやめた世界。



 あらゆる弱さを否定し、無駄を省いた最強無欠の完璧な世界になることこそ、信世界


 そう断ずることができるほどに証拠が残っている。


 まず気づけるのは概念。

 ここには【■】が存在しえない。

 【××】も【△△】も【◆◆】もなくなった。


 名前すら言えない。


 ○○と違ってこれらは存在が認められていない。

 そういった概念が無いだけでない。有ることが許されていない。

 そういうものは持ち込めないし、作れない。


 人間を脅かすソレは、存在できなくなった。


 考えてみれば当たり前の話で、そもそも神とやらがちゃんと作ったのならそれがある方がおかしい。

 完璧じゃないから【■】が生じる。

 リソースが有限しかないから【××】がある。

 出来に差があるから【△△】が出来る。

 解決策が見つからないから【◆◆】が生まれる。


 これすなわち神の怠慢。

 絶対者の愛なき怠惰。


 そんな不出来な檻から解放されヒトは永遠になったのだ。


 そのヒトというのも、最早新世界と同じではない。


 新世界が人の脳内を起点に数多の中に作られる大宇宙。

 想像妄想を起点にして上位存在の創造も引き連れ新たな世界を誕生させる。


 これに勝る世界は想像できない。だがそれが最大になるかといえばそうではない。


 そして単純に人の数もそうだ。

 人の数に依存している理論なら多い方がいいに決まっている。

 例えば地球には数十億の人間がいるが、この時点で数兆や無量多数いる星が同じ理論を展開したら劣ってしまう。

 無限の計算において有限の数値は無意味と言えるなら、脳が無限個ある星に劣るだろう。


 それが可能か不可能かは私達の理論。

 奴が先にいる時点で不可能なんて存在し得ない。


 だから進化した個体以外に、爆発によって生まれたヒトが周囲を無限体で埋め尽くす。


 こうやって信世界は頭で埋めつくされる。

 身体なんていらない。 人は頭だけあればいい。

 開いた空間なんて不要。だから隙間なく頭で埋め尽くされる。


 彼ら個人に意思はない。

 新世界の通りに従い、ただただ想像の義務を果たしているだけ。


 この想像も新世界とは勝手が違うと思われる。

 新世界は異世界や並行世界なんていう最小無限個で収まりそうなイメージを連珠のようにつなげ更なる無限の世界に発散させてきた。


 だが肝心の想像力はどうなのだ?

 新世界の人が思いつける程度の世界が最大値でいいのか?


 否だろう。世界の創造をするのなら、もっと大きく常に多くの世界を作り続ける必要がある。


 ひも理論や量子力学を理解しているかいないかだけで作られるイメージに差分は出る。

 並行世界一つ作ることだって、あの時ああすればといった短絡的思考よりも、人類の一つ一つの行動を起点に想像した方が多くの世界を作ることが出来る。


 イメージする世界は常に理論上の最高。

 新世界の住民が思いつけないほどの最大最多を。


 信世界の生首共は寝ながら休むことなく創造し続ける。

 それだけが彼らの存在意義であり、それ以外の役目は存在しない。


 ただただ愛を捨て最大になるように作り続けるだけの演算器具。

 それが信世界の住民。

 そんなのに母も育美さんも置き換わった。


 人類は人がたどり着く最大の頭脳を手に入れ、妄想演算を繰り返す。


 物理学でしか存在しない邪魔するものがない理想の理論


 完全で無欠で、個性なき演算奴隷。


 それが信世界におけるヒトという唯一の生命体。


 ここは完全無欠な理想世界。

 生物は高みに昇華され、物質は理想に置き換わる。



 この変換にどんな理屈であれ対抗することは出来ないだろう。



 この変化は進化であり、前身。


 倖せの唄に抵抗する余地が無いのと同じ。

 人が前に進むことは、能力では防げない。


 成長、進化、そういったもの。人が前に進むことを止めない限りこうなることを変えられない。


 より強く、より賢くなった成れの果てが、頭だけになった信世界のヒト

 進化の果ての理屈。





 かくいう私も―――

 手足はもがれ、身体は隔離され、頭だけしか残っていない。




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― 新着の感想 ―
[良い点] 信世界 絵にしたらトラウマになりそう 他の人の作品を出すのは恐縮ですが、駕〇先生の漫画の世界観を思い出しました。 [気になる点] σφの「全て」を内包するより、こっちの方がエグイのでは?…
[気になる点] 信世界に持ち込まれたのはヒトの生首だけ。他の生命もなく、概念も持ち込まれなかった時点でシグファイは消滅してしまったのでは(あるいはシグファイも生首人間に転生させられたか)。バックアップ…
[気になる点]  信世界は獄景の延長でしかなく『世界』で説明しているのも相まってあまりすごいものだと思えなかったです。
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