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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
11章前編 悪意差す世界/スベテが終えた日
333/353

鮮血の聖女と群青の魔女 13

「シンボルの目的は空亡惡匣の対策で、能力は二の次だってのは分かったよね?」


 頷く。


「だからシンボルって完璧じゃなくてはならない。少なくとも外部の干渉からを受け付けるなんてことはあってはならない」


 何かしら対抗手段があればシンボルという存在に干渉される。

 何かしらの手段があるなら空亡惡匣の対策にならない。


 だから神薙もシンボルに関して本気で守っているのではないだろうか。


「でも内部からならどう?」

「内部から?」

「シンボル持ちがシンボルに対して何かしらの干渉はできるのか」

「分からんが、できないと思っていた」


 違うのか?

 シンボルの絶対性は相当のモノだろう。


「本来の仕様を思い出して。シンボルは空亡惡匣の対策。手に入れるのは神薙以外予定になかった。話を聞く感じシンボルは本来1人、多くても2人しか手に入れることはできなかった」


 確かに、神薙信一と手に入れる前段階でテストしたお子さんだけか。


「つまりね。本来シンボル持ちが複数人いることを作った当時は想定していなかった可能性がある。安全性や完全性の意識を神薙は向けてなかったかもしれない。そこを付けるかもしれないと考えている」


 そこら辺の話は分からん

が、道なんてものは最初からないわけで、どれだけか細い道でも、あるだけでましになったと言える。


「だから実験をしましょう」


 そういって真百合はどこからかチェーンソーを取り出す。


「右腕出して」

「いや待て。ツッコミどころが多い。なぜ?」

「説明いる?」

「いるだろ」


 この流れでいらないと思ったのか。

 いやどんな流れであっても人の腕をチェーンソーで切り取ろうとするのは説明がいるだろう。


「シンボルにおける個人の定義を確かめたい。まず早苗の腕がなくなっても必中の拳は使えるのか、義手にしても能力を使えるか、はたまた別の腕でも使えるか。どうかを確かめたい」

「それで何の役に立つ?」

「役に立つ立たないの話じゃない。理論を構築するにあたってこうなればこうなるというのは必要よ。いうならば基礎研究」


 む。

 そういうことなら……


「一思いにやれ」

「首を?」

「腕を! 分かってて言ってるだろ」

「はいはい」


 真百合は私の返答を最後まで聞かず、ナイフを入れるかのようにすっとチェーンソーを入刀する。

 実際首を斬られても死なないが、気持ちのいい物じゃない。


「縦に切る必要あったか? 右腕が二股に分かれているのだが」

「あったわ。たぶんきっとおそらく」


 失敗ではなくわざとのようだった。


「もういい。私がやる」


 斬らなくても、一思いに引きちぎればいいわけだし。


「これでいいか」


 引きちぎった右腕を机の上に投げ捨てる。


「ようやくあなたも超悦者が何なのか理解したわね」

「正直理解したくなかった」


私の知る一般的な感性とは異なるから、あまりこういうことも考えもしたくないのだが。


「その状態でシンボル使ってみて。物は……適当に宝石でいいでしょ」


 宝石かぁ。安い1カラットのダイヤでいいか。


速攻悪鬼正宗デビルメイクライ


 隻腕の腕で拳を奮う。


 カランカランと石が転げる音がする。

 どうやら机の上の腕の方にいったのだろう。


 必中の拳だ。私の拳に当たるのは当然か。


「次、義手」


 義手を装着し、さっきと同じようにシンボルを使う。


同じ結果だった。

 義手だと本人判定されないのか。


「――次、他の人の腕」

「細いな。合わない気がするのだが」

「いいから。ついでに、外れた腕は溶かしておくわね」


 机の上に置かれた腕は、しゅぽんと煙を立て私の腕が水の中に溶けていった。


 そして真百合から渡された腕はくっつくかどうか心配だったが、そりゃくっつくか。


速攻悪鬼正宗デビルメイクライ


 バチンと宝石が砕け散る音がする。


「うむ。やはり他人とは言え一度自分の身体にくっつくと自分のものと思えるぞ」

「私と彼の恋。」


 右腕が爆発した。


「ちょ、何をして……ん?」

「あら。気づかないと思ったけど気づくものね」

「今シンボルを使ったのか」


 真百合のシンボルはどこまでいっても自分にしか影響を与えられないのではないのか。


「ええ。だって、その腕私の腕だから」

「どおりで」


 細いと思った。


「もう一度やってみて」


 同じように真百合の腕を渡されて


速攻悪鬼正宗デビルメイクライ


 同じようにシンボルを使うのだが、効果がなかった。


「確認、あなたこれ自分の腕の認識だった? それとも私の腕という認識だった?」

「最初は私の腕で、次やった時は真百合の腕という認識だった」

「だったら自分の腕というつもりでやってみて」


 鬼人化も馴染み私の肌の色とマッチする。

 これなら私の腕といって差し支えない。


速攻悪鬼正宗デビルメイクライ


 今度は成功した。

 

1回目3回目は同じ条件で成功。

私の認識だけ違う2回目の実験だけが失敗。


「とりあえず仮説はついたわね。つまり明確なルールはなく、本人達の認識でしょう」

「なるほど」

「とりあえず、今の仮説が正と確証を得るため、何回か同じ実験をして頂戴」


 何度も正拳突きと意識の切り替えを繰り返す。

 全ての結果で想定通りの結果に終わった。


 どうやら真百合の仮説は正しいらしい。


「次は何を?」

「もう一回、同じことを」

「腕は交換しなくていいのか?」

「ええ。いい」


 言われた通り、もう一度拳をふるう。


 ダイヤが出現したところまでは同じだったが、砕けた音ではなく雷が鳴った音をたて分裂した。

 なんでこうなった?


 私のシンボルが保証するのは命中まで。

 分裂するなんて摩訶不思議な状態は引き起こさない。


「…………へぇ」


 一方で理由が分かっているであろう真百合の目は変わる。


 まるで興味深い結果をみる研究者のようだった。


「可能性が出てきた。とりあえず」


 問答無用で私の腕をちぎる。


「ちょ、」


 それを自分の腕に着け、ノックをするように拳をふるった。


「ダメね。早苗、この腕もらっていい?」

「奪ってから言わないでくれないか。まぁ、生やせるしいいのだが」


 もう一度同じことをする。


 ダイヤが爆音を立て分裂した。


「え? これって」

「大体わかった。仮説が正しいとするにはまだ実験が足りないけれど」


 そういった前置きを残して


「互いの身体と認識そして承諾があればいいのね」


 シンボルの別の使い方を導き出した。


 今のは私のシンボルだったはず。

 それを真百合が使えた。


 つまりシンボルは複製できないが共有はできるってことか?


「…………吐きそう」


 さっきまで決め顔で推論を導き出した真百合だったが、両ひざから崩れ落ちた。


「つわりか?」

「違うわ。早苗のシンボル使ったら気分が悪い」

「とりあえず水」

「ありがと」


 よほど気分が悪いのか。

 初めてじゃないか。真百合が私にお礼言ったのは。


 真百合が落ち着くまで数分


 自力で回復できるまで落ち着いたようだ。


「ホント嫌な思いしたわ」

「シンボルで気分が悪くなるって考えが全然分からんのだが」

「それはあなただけ。ほんと辛いわよ。自分の頭の中に別人が膨れ上がってくる感覚。気持ち悪い。メリットよりデメリットの方が大きすぎる」


 誰もやらないのはそういうことか。

 真百合ですらこうなのだから、選択肢として除外するのは当然か。


「と、私は思うのだけど、あなた本当に何でもないの?」

「すまん。まったく記憶にない」

「本当に?」

「本当だ。私は○○の前以外で嘘をついたことがない」

「……とりあえず、1ヨクトとかそういう確率だけれど、勝機があるかもしれない」

「おぉ」


 ヨクトの単位は分からんが、これまで完全なゼロだったのだから大きな前進だろう。


「気分が悪いならいったんここでやめておくか?」

「いいえ。まだよ。まだやらないといけないことがある。確立を1ナノにするため………まだまだ試さないといけないことがある」

「それはなんだ?」


 真百合はすごく嫌そうに、まさしく苦虫を嚙み潰したように提案する。


「腕だけじゃなくて、私と身体のパーツを交換してみない?」


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― 新着の感想 ―
[気になる点]  真百合が◯◯を救出する確率を概算出来ていること。  神薙信一を倒す方はとりあえず空亡復活させて精神攻撃、私と彼の恋。を極めてランク9以上の『物語』にする、最終傀をシンボル化したこと…
[気になる点] ここでいう’勝率’は神薙さんを倒すことではなく◯◯を救出出来るかってことですね(これ聞いちゃダメかもしれないでやばかったら消してください)
[一言] これも神薙さんがわざとそうしたのかなぁ……… なんかそんな希ガス
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