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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
11章前編 悪意差す世界/スベテが終えた日
331/353

鮮血の聖女と群青の魔女 11

なんだかんだ感想くれると更新したくなる単細胞



「お前たちの説明は長くてわかりづらい。あらゆるとかすべてとか使ったって目が滑るだけだぜ。俺が簡単に説明してやる


σφはうんこである。

生物はうんこからうまれる、つまりσφからうまれる

生物はうんこをするからσφである

生物がいる限りうんこはなくならない。


それが臭くて嫌だからシンボルという脱臭装置をつくった。


この程度の話だ」


 空亡惡匣の話、そしてシンボルの話。

 神薙さんにとっての敵の話を聞くのだが、スケールが異常すぎてよくわかんなかった。


 なのでふざけてはいるが神薙さんの説明が一番納得のいく話だった。


 うんこから産まれうんこをするのだから、全てはσφ

 生物がいる限りうんこはなくならない。


 うん。よくわかってしまった。


「振り返ってみれば、伏線はあったのよね」


 先輩は神薙さんの下品な話を無視して淡々と口にする。


「まず神薙信一以外、空亡惡匣を誰も恐れていないこと。3神は空亡惡匣を恐れていなかった。あなたのパートナーもなんだかんだ恐れている素振りは見せなかった」


 言われてみればそうだった。嫌ってはいるが恐れてはいないようだった。


「もう1つは『物語』のギフトが存在するということ。バランス調整がどうこういっていたけれど、安全を考えるなら核兵器のスイッチを他人に渡しちゃいけない。私が神薙信一なら『物語』のギフトなんて渡さない。それが一番安全だから」


 セキュリティを重視するなら鍵は少ねえほうがいい。

 おれでも分かる程度の道理だ。


「最後に、なんて『物語』の衝突によって封印が解かれるのか」


 おれはこれまでそうなっていたのだからしょうがねえものだとおもっていたのだが。


「条件は何でもよかったのでしょう。強いてあげるならあなたが管理でき、かつ自分の力でどうしようもなさそうなものであれば、よかった。その条件なら、『物語』というのはやりやすいのでしょうね」


 神薙さんは空亡惡匣に確実に勝てるという前提があるなら、全てが納得いってしまう。


「答えていいのか。そもそも――今時雨驟雨の視点では俺が本物の神薙信一か否かの議論になっているはずだが」


 誰も気にしちゃいねえだろ。


 確定っつうかもはやしつこさまである。


 おれの興味はこの人が神薙信一かどうかではなく、宝瀬先輩は何をしたいかに移っている。


「一つ、言わせてくれないか」

「早苗。黙ってて言ったわよね」

「少しだけ、頼む」

「分かったわ。でもあなたもわかっているわよね」


 衣川は返事をしなかった。


「神薙信一」

「あいあい」

「…………」


 衣川はじっと見つめる。


 数秒、十数秒の間


 一同何を言い出すのか? 固唾をのんで見守っていたが、なかなか声を出さない衣川を見てざわざわとざわめきが起き始めた。


 その音が四方から聞こえだすと、すっ と神薙さんに指を向け、もう一度の静寂を招き入れる。


「私は怒っている」


 言葉というものは不思議なものだと思う。

 先輩も衣川も淡々と口にしていた。


 しかし、先輩から発せられる言葉には捉えることのできない流水のような飄々さを、

 衣川からは儀式で使う太鼓の力強い熱い衝動を感じ取れた。


 今ステージの主役は変わった。


 これまでは主演神薙信一、助演宝瀬先輩の三文芝居。

 助演は別の役者に交代し、主演と助演は入れ替わる。


「言葉の強さは恐ろしい。誰だって言われて傷つくことはある。それに対して怒りを覚えるのは当然だと思う。だから、どちらが悪かったというのなら、それは○○の方と考えることも一理ある。それは認める。だが、お前はやりすぎだ。悪口を言われた、傷つくことを言われた。その程度のことで、人の尊厳を奪ってはいけない」


 すらすらと流れる一つ一つの言葉に、マグマのように熱い思いを感じ取れる。


「だが、それはそれとしてだ」


 衣川は、顔はいい方だと思うが先輩のような息をのむような美人ではない。


「ありがとう」


 だがおれたちは衣川を見て主張を聞いて魅入っている。


「媚びられても何も出さないぜ」

「そうじゃない。神薙がいなければ人類史は続かなかった。褒められる気はなくても、お前がそのつもりはなくても、結果として人々は助かった。お前がどんなに糞野郎でも、私達はお前によって生かされている」


 当たり前だが、おれたちは神薙信一によって生かされている。

 いい意味でも、悪い意味でも。


「だからこれは私のケジメだ。私の自己満足に突き合わせたことも、一緒に詫びようか」

「感謝の言葉だけ受け取っておく」


 神薙さんの表情からの感情を読み取るのは案外分かりやすい。

 本人も意図して大きく見せているから、おれでも分かる。


 ただ、いま小さく笑った時の感情を、おれは一生分からない。


「じゃあ、残り4人だっけ? どうやって防いだかの説明よろしく」

「しょうがねぇな」


 先輩が話を遮り、再びの茶番劇が開始される。

 しかしなんでこのタイミングだったんだろうか。


「忘れている人もいるだろうし、能力の再履修といこうか」


 まず神薙さんは天堂さんの方を向き


「神薙です。これ名刺です。どうぞ」


 名刺を渡した。


「ど、どうも。天堂です」


 天堂さんも名刺を渡す。

 結構ほしいんだよなあ。魔除けになりそう。


「すいませんね。俺の子孫が色々問題起こして」

「い、いえ。これが仕事ですので……それにギフトは本来あなたのものと伺いましたが……お返ししなくても良いのでしょうか?」

「とんでもない! ギフトは個人の能力です。メーカーに商品を回収する権利はあっても所有権は持っている客のものでしょう」

「そ、そうなのですか」

「そういうものなのです。っと、ここまでにしようか。付き合ってくれてサンクス」

「あ、はい」


 神薙さんが敬語使っているの初めて見た。


「天堂御々のギフト、唾とハーツクローバー 罪を裁くギフト。王領君子の法の制定は、所謂やらせない能力だが、この能力はやってしまった人に対して好きに出来る。つまりまったく関係のない能力だ。

罪は冤罪でもいい。ただし与える罰は罪相応のモノでなくてはならない。そして与える罰は様々だ。死刑という即死から、懲役という支配、禁固刑という行動疎外に、罰金という名の能力の押収。対人限定ではあるが現在俺が配っているギフトの中でタイマンしても上位に食い込むだろう」

「あ、ありがとうございます」


 知識や繋がりはおれたちにとって強さに直結する。


 例えば能力の上下関係を知っているのは帝国と日本の上層部くらい。しかも『物語』については最近まで知らない。

 超越者も最近になって概念が浸透し始めたが、基本長い修業がいる。

 シンボルなんて神薙さんと親しくなければ身に着けられない能力。


 ある意味おれたち全員、神薙さんというドーピングをしている。


 だから天堂さんなんだ。


 正々堂々を条件とした場合、この地球上で一番強い生物は天堂御々だ。


「続いて祟目崇。能力は女帝の唐衣裳エンドレスエンプレス。他者を纏う能力」


 ある意味で一番強い能力だろう。


「他者を纏い、対象の膂力や異能力を加算し自ら行使できる」


 対戦相手を纏ってしまえば絶対に負けることはない。

 他にも攻撃を受けても纏った数だけキャンセルできる防御もある。


 次期帝王筆頭といわれるのも頷ける。


「ダメだろ。それは」


 しかし神薙さんはそれを否定する。


「前提として、俺は最強人類で、俺より強い人間はいない。他12人の力を束ねても無意味だぜ。正直これだけだと考察するに値しない」

「――仕方ない。貴様が相手だというのを考慮していない。そもそもシンボル持ちを対象にできないのは共通認識のはずだが」


 長い銀髪をなびかせ、呆れたようににらみつけている。


 普通に考えてありえない論理だが、神薙さんが人類を総じても勝てないのはみんな思っていることだし、全然理不尽と思えない。

 当たり前だ。空の色を問うような常識問題だ。

ひょっとしたら偽物か?


「だから今回は、代理で俺の強さと大体同じくらいの力を持った人間を纏ったことにしておいた」

「ありえない。それだといくら貴様でも勝てるわけがない。同じ強さを持った人間の12倍の強さを持った攻撃だぞ」


 甘いよ、祟目さん。

 あなたは神薙さんの理不尽さをまだ知っていないと思える。


「その12倍がよろしくない。ただの有理数だ。無限を12倍したところで、その数値は∞だ。∞で変わらん。そして俺は無限よりはるかに強い。だから誰を何人纏って何倍しようが、俺より弱い。パワーX倍なんて概念、俺にしてみればデバフにしかならない」


 理不尽決定。本人認証再確認。


「それともう一つ。今回2人は能力の組み合わせを行っている」


 そういえば必殺のコンボがあるといっていたか。


女帝の唐衣裳エンドレスエンプレスは自身に纏わせて戦うものだが、あえて俺に纏わせている」


 そんなことして何になるんだ?


「纏うその正体は、イエス君」

「ま、まずいでしょ。それは」

「キリストって名前出しても書籍化された小説あるし、こっちは書籍化する気ないから、へーきへーき」


 あんたがそういうのなら……言っている意味は分からんがいいんじゃないですか。


「賢い人ならわかるだろう。彼は人類すべての罪を一度背負っている。そして罪を裁く能力者において最大火力を叩きこめるわけだ。しかも、12回背負わせたことにもできる。いいね。90点」


 なるほどと思う。

 纏わせる能力に、そういう使い方がるとは。

 今回は聖人を使ったわけだが、死人そのものを12人纏わせて、12倍の死の状態を押し付けるなんて言う使い方もあるってことか。


「だが惜しい。俺は人類であるが、全ての人類には含まれないのだ。だから俺の罪はこれで裁けない。もっと早く説明してやるべきだった」


 これはさっき教わった全てには含まれないってやつか。


「えっと……それでも人類分の何千億の処刑が――」

「? 俺は死なんし変わらんよ」

「あ、はい」


 何千億人の死なんて、議題にすらならない。

 結局有理数で収まる概念なんて神薙信一の足元にすら届かないのだ。


 つうか今の話聞くと、数えられる数字は神薙さんの足元にも及ばないし、∞ですら神薙さんにとっては圧倒的に弱いし、じゃあ全てやあらゆるを持ちだすと、シンボルによって除外されるので意味がない。


 勝てねえじゃん。


 って、これは最初からだったか。


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