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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
11章前編 悪意差す世界/スベテが終えた日
325/353

鮮血の聖女と群青の魔女 6

AI画像でエロ画像を作って∞に45っていたので投稿遅れました

………」


 前回までのあらすじ。

1.○○が神薙信一の逆鱗にふれ、存在が許されなくなった。

2.私こと衣川早苗と宝瀬真百合は○○を救うため、何とかして神薙信一を倒す方法がないか策略を立てた

3.何とかして弱点を探すため、空亡惡匣とシンボルをキーワードに、攻略の糸口を探している探す。

4.4. 情報を聞くためにアレのお付きの人から話を聴こうとしたが、一瞬にして破談。戦闘に。


 何度も思い知らされていることだが、今一度思う。


私達にはいくつもの壁がある。(胸が壁という意味ではない)


「………よし」


 1つは超越者とそうでないものの壁。


 ほとんどの能力者は、自分の能力を使う前に、殺し切られたら負けるため、先手を取れる能力が優位を持つ。

 超越者は、限りなくゼロ秒に近い速度で対応でき、それは何もしない人間の限界を遥かに超える速さだ。


 超悦者であることは、戦うための常識。


 野球で例えると、腕があるとか服を着ているとかそういうレベルの次元。


 鬼人化のような身体能力強化といった超悦者でできること以下の能力だと、フィールドにすら立てない。


 『論外』と『時間』の壁は、フィールドにたてるかどうかの如き壁だ。


 超悦者である以上、『論外』の能力に対して絶対的な防御と攻撃を持ち、素手であっても制圧できる。

 物の数にならない。


 ここまできてようやく、戦うための人、戦手になったといっていい。


 しかし、当然あくまで土俵に立ったと同じ。

 幼児だって土俵に立つことが出来るように、これだけだと戦いにならない。


 『時間』の能力者が小学生、『運命』の能力は中学生レベルの技量。

 『世界』の能力で、高校球児。


『法則』までくると、そこはもうプロといっていい。


 勿論『法則』の中でも優位があり、ランクと呼ばれる存在によって一流や二流が決まる。

 能力同士が矛盾すればクラスが上な方の能力を優先させるのは有名な話だが、では同クラスの話だとどうなるのか。


 これは状況によるという何とも頼りない回答が出ている。


 その時の気分や能力の相性や状況によって決まる。

 いわば自分の理屈を通した方が勝つ。


 以前私と時雨で実験をしたことがある。


 私は速攻悪鬼正宗で、拳に必中を

 時雨は混沌回路で、ボールに確定回避を


 同時にぶつけてみる実験。


 私の主張だと拳にボールが当たり、時雨の主張だと拳にボールは当たらない。


 結果は当たらなかった。時雨のシンボルの方が私のものよりもランクが高いからだ。


 しかし完全に無効化になったわけではない。

 ボールそのものは私の拳近くに移動した。


 次に私が強い意思を拳に込めて同じことをする。

 ボールは拳にあたり、はるか遠くに弾き飛ばした。


 こんなものだ。

 ランク同士の優位なんてこんなものでしかない。


 一流の投手であっても三流のバッターにホームランを打たれることもある。逆もまたそうだろう。

 あったら有利程度の能力。

 勝敗を予想するに値する程度の情報がランク。



 ここまでは、私が踏み入れた領域だ。


 ここからは、私にとっての壁。


 『法則』がプロならば『物語』はなんなのか。


 メジャーリーガー?


 違う。


 そんな低次元な存在じゃない。


 彼らは審判、オーナー、狙撃手といった連中なのだ。

 プレイヤーが本気で野球をしている中、


 フェンスを越えても審判がファールといえばファールになるように

 成績を残してもオーナーが給料を払わなければ無職になるように

 最強の成績を残しても銃で撃たれたら死ぬように


 私達を愚弄する。


 その最たる原因は『物語』は『物語』でなければ理解が出来ないことだ。

 私達はあいつらが何をしているのか理解できない。


 言葉として発音をすることはできるが、何をしているのか脳が理解できない。


 例えばあいつの能力はコピーする能力だと思っているし、幸の能力は条件付きの未来予知だと思っている。


 その真の部分について、私は何度も説明を受けているが、どうしても脳が拒んでしまう。


 正しい認識ができない。


 理解が出来ないから対策が出来ない。

 何をすれば防げるのか、何をすれば倒せるかが分からない。


 野球なら点を取ればいい、点を取らせなければいいといえるのだが、彼らはその条件すら無意味に化してしまう。


 長くなったが私はこう言いたい。

『論外』と『時間』の間にある壁と同じ厚さの壁が、『法則』と『物語』にも存在する。


 だからこそ今、この目の前で起きた戦い

 宝瀬真百合VS神薙椿&神薙薊の戦いが

 今どっちが勝っているのか。


 四肢をもがれ血をまき散らしている真百合が勝っているのか

 青ざめ苦虫を嚙み潰したような顔をした椿さんが勝っているのか。


 私にはわからない。

(ちなみに、妖狐の薊さんは吹き飛んで気絶しているので、もう負けていることは分かる)


「早苗のために解説してあげるわね」


 自分の首を拾い上げ、ネジを締めるがごとくくるくると頭をまわし外れた頭部を動体にねじりこませる。


 表情だけで見るのなら、勝ちを確信している。


「私の能力は私と彼の恋。 ロードする能力。言い換えると好きな自分になれる能力」


 ここでいうロードというのは最近のゲーム機であるようなセーブ&ロードのロードではなく、レトロゲーの復活の呪文であるような実質無限のセーブデータから適応する状態の呪文を唱えている……と、説明を受けているが理解出ない。


 結局何をしても好きな自分に変化する能力という認識。


「基本的に何でもできて何にでもなれるけど、あくまで私が興味を持つもの。つまり実質私にしか使えない。自己完結型の能力」


 それが唯一の弱点といっていいほどの無敵の能力

(※私達にとって最強や無敵というのは、上限が育美さんや王領君子のこと。神薙信一は常に除外する)


 仮に私が同じ能力を持っていればもっと使い勝手の良い能力になったのだろうが、そもそも真百合だからそういう能力になったわけなので、この仮定はお門違いか。


「一方神薙椿さんの戦女神の冠ルナティックティアラは、治療する能力。ただその練度はかなり高い」


 椿さんは200年以上生きている。当然20年生きている私よりも経験は違う。


「病や傷、呪いや死を治すのは当たり前。治らない傷であっても治すことができる。傷を治すためにあえて開かせることも可能。その治癒強度はギャグ補正と同等。そうであることが当然なように、傷は存在できない」


 こと治療という行為ならば彼女の右に出る者はいない。


「最も特筆すべき能力は攻撃を受けた後ではなく受ける前に治すことができる。だから倒す手段がない」


 こと戦闘においてこれがどんなに理不尽か。

 兵士に使えば無敵の鉄砲玉が出来上がり

 病人に使えば不死のゾンビが出来上がる。


 真百合とは違う、他者がいることによって真価がはっきりするタイプ。


「さて、私と椿さんの能力がぶつかったらどうなると思う。早苗」

「え? えーっと。ランクはどうなのだ?」

「私の方が上。ただしランクとしては2つしか離れていない」

「ならば真百合が勝つのでは?」

「あなた大事なこと忘れているわよ。多幸福感ならば上から潰すことも可能だったと思うわ。でも『物語』の衝突には別のルールが入る」

「そうか。空亡惡匣の復活のトリガーになるから。衝突が起きる前に神薙信一が止めに入る」


 皮肉だと思う。

 空亡惡匣という絶対にアンタッチャブルな存在が、○○救出のキーとなっているなんて。

 そしてそれが真百合の敗因になるかもしれないなんて。


「復活されると困るから、その前に介入される。ならば今回、どっちを味方すると思う?」

「恐らくは……椿さんの方だろう」

「イエス。つまり強いのは私だけど、正面衝突をした場合勝つのは椿さんの方」

「……だがなぜあんなに怯えている?」


 強弱よりも勝敗の方が大切だし、そうなると困るのはこっちのはずだ。


「でも万が一、私が判定勝ちをもらったら?」

「ありえ……るのか」


 幾ら神薙信一が真百合のことを気にかけているとしても、長年連れ添ったお付きの人より優先するとは思えない。

 99.99%優先する確信がある。


 だが神薙信一は、私達をもっと言えば真百合に気をかけている事実がある。

 万が一、判定が覆るかもしれないと。


 その疑いを100%払拭することはできない。

 その場合のダメージは、椿さんにとって死よりも恐ろしいことだ。


 判定してもらうことを恐れている。


 だから判定勝負にはしたくない。

 真百合も判定勝負になった場合負ける可能性があるので判定勝負にはしたくない。


「だから、真百合は椿さんの攻撃を防がないのか」


 真百合が一切攻撃を失せがないのは、何らかの手段で攻撃を防ぐと、衝突が発生する。


「例えば無敵の私になった状態で、ギャグ補正としてダメージが与えられる。どっちがどうなるかは分からないから、神薙信一が判定する。その決着は望まないから、どんな傷を受けても影響のない私でいるの。こうすれば互いの主張は衝突しない。あ、因みに『法則』程度では死なない程度の防御力も持っているわよ。おまけだけど」


 なるほど……

 何となく、分かるようなわからないような。


「『物語』の能力者の戦いにおいて防御という概念は薄い。防御が成立した時点で勝負が決まっているわ」


 これは何となくわかる。

 防御をするということは相手の攻撃との衝突が発生する。


 防御が成立する場合というのは、ランクとして上に君臨している場合。つまり初めから勝っている。

 逆に判定勝負をもらう場合は、神薙信一が決めるという理不尽を受け入れないといけないので、この時点で意味が薄い(防御できないと判定すらしてもらえないという意味で完全に意味がないわけではないだろうが)


「互いが蹂躙する力を持っているわけではない。かといって判定を望んでいない。ではどうしましょう」

「それは……私が分かるのは『法則』までだぞ。その場合はより意志が強い方が勝つとか相性が良いとかそういうのしか……」


 半ばあてずっぽうの発言だったが


「あたら数とも遠からず。良い勘してるわ」

「そ、そうなのか? 相性の方か?」

「まさか。この世に相性は存在しないってママから習わなかった? 三竦みの中にあるのは蹂躙する側の都合だけ」


 だったら影響するのは意志になる。

 意志勝負になると私は負けたことないので、強く印象に残っていたのが幸いしたか。


「答えは、相手に負けたと思わせた方が勝ち」

「はあ?」

「圧倒的な力の差で蹂躙するか、

神薙信一に判定してもらうか、

負けたと思わせる。

これが『物語』の決着。覚えておいてね」


 また、ふざけたことをいいだした。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 早く続きが見たいです。天堂と時雨の攻撃の評価も知りたい。
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