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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
11章前編 悪意差す世界/スベテが終えた日
314/353

裁かれぬ懺悔

今日は神薙さんの誕生日です


神薙信一 全ての元凶

衣川早苗 ヒロイン1 メンタルつよつよ

宝瀬真百合 ヒロイン2 お気に入り

時雨驟雨 身長が170cmないので人権なし



「――――――はあ」


 もはや今生に命はなかった。


「やらかした。まさかまだ世界の強度が足りないとは」


 生物だけでない。


「これは恥ずかしい。大人げなかった。俺としたところが、まさか感情の揺らぎで生物を死滅させてしまうとは」


 物質も情報も私の目の前にいる男の恐怖に耐えられず、自滅を選んだ。


「生き残ったのは、衣川早苗と、あとは……宝瀬真百合、そしてあの子か。なら、いいか」


 曲がりなりにも私も超悦者だからわかってしまう。

 あの恐ろしき独り言は事実であると。

 残るは、ただ、私たちがいるだけ。


「驚きはしないぞ。貴様がこれくらいできることは何度も○○から聞かされていた」


 神薙信一が最強というのは、もう何度も聞かされているし、思い知らされている。


 私たちは誰も勝てない。


「はあ。はいはい。言いたいことは好きに言え。甘んじて受け入れる。衣川早苗、お前はそれをいう権利がある」


 目の前の男は、まるで警察に客引きがばれたかのように罰が悪そうにしていた。

 その程度のことしか思っていない。


「なぜこんなことをした、とは言わない」

「助かる。俺だってそのつもりはなかった。そうなっただけだし、すぐにでも元に戻す」


 ○○が言ってはならないことを言って、こいつを怒らせた。

 その怒気で、全生物が恐怖で死んだ。


 意識があるのは私だけ。


「なぜ私だけに意識がある」

「それを聞くか。俺よりも気の持ちようがまともではなく、狂死しなかったから。これでいいか」

「……どうも私を気狂いにしたてたいようだが、私はまともだぞ」

「類は友を呼ぶというか……ありえないぜ。それは俺が保証する。衣川早苗、お前はまともじゃない」

「冗談じゃないぞ。貴様の保証は何もあてにならない」


 この男は信頼できない。

 この男を信じるのは、ただの降伏。

 私はこの男を信じない。


「ただの水掛け論だ。それで、言いたいことはそれだけか」

「逃げるな。逃げようとするな。私に向き合え」


 どれだけこの男が最強で最兇であっても


 私だけが立ち向かえるのだ。


「○○が許されることはあるのか」

「無い」


 言い切られてしまった。


「あれは俺に言ってはいけないことを言った。その罪は重い」

「……」

「だから俺は俺のルールで、あいつを私刑にする」

「……」

「それに先に私刑を許容したのはあっちだぜ。だからここから何をされようが、文句は言えないはずだ」


確かに○○はそういうところがあった。


「だがそれを貴様がやるのは別の話であろう」

「それはそうだ。だがやってもいいはずだぜ」

「だめに決まっている。貴様と○○ではできることに差がありすぎる。対等ではない」


 大いなる力であるほどその責任は大きい。


「これから何をする」

「そりゃまずは、事の収拾だ。うっかり滅ぼしてしまったから何もなかったように戻す」

「そのあとは」

「処理」


 私が思い当たる中で、最低なことを最強が言い放った。


「器が小さすぎないか。貴様はもっと大物だと思っていたぞ」

「初対面で全裸さらした男に、何を期待してるんだ」


 そいつは耳をふさぎながら私の意見を肯定した。


「いい加減はっきりさせたいのだが、貴様は何をしたい。貴様らは何が目的だ」


 これがおそらく皆が、○○が知りたかったことだろう。


「証明」

「証明?」

最終傀エピローグ、その能力は描写をしないことだが、衣川早苗に説明することはできない」

「『物語』だから理解ができない。そういうことなのだろう」

「そうだ。分かるように言い換えれば、努力をしない。そこに至るまでのありとあらゆる道筋を、防ぐための道筋を必要としない。言葉なくして説得できるし、力なくして蹂躙できる」

「……なるほど。それが真実なら無限の能力など本当にハンデだったのか」


 できるための理由づけにしかならない。


「何でもできる。その中でできないことがある」

「分からん」

「たった一つの証明だ。馬鹿らしい証明だ」


 証明。ただ一つの証明?


「果たして俺は人間なのか」

「――――!」

「俺は人間なのは自明だが、なかなかどうして1+1を確かに証明するのは難しい」


 私は思い違いをしていた。

 ○○は失敗したが、それは皆同じだった。


 私たち人間は

逸脱しすぎた 超越しすぎた 無双しすぎた存在をいろいろな呼び方をする。


 人間離れ、神がかり、化け物


 神薙に届かない人間ですらそう呼ばれてしまう。


 ならば目の前の男は


 世界を救った英雄であり

 魔王を倒した勇者であり

 時代を作った天才であるこいつは


 何度も間違えた呼び方をされてきた。


 無意識の悪意に晒され続けた。


「そんな理由で、とはいってくれるなよ」

「言うものか。ただただ哀れだと思うが」

「そういってくれるのは衣川早苗、お前だけだ」


 結局のところ精神が力に追いつけなくなった。

 そもそも神薙信一の力においつける精神は、この世にないのかもしれない。


 誰だって彼に似た力を持っていればそうなるのかもしれない。


「最終目標は分かった。だがそれにはどうする。悪いが私では分からん」

「俺に触れられる人間を作る。極小でも無限に募れば次元が変わる。そんな人間がいれば俺という人間は証明できる」

「……このまえ○○と帰納法の勉強をした」


 Nが正であり、N+1も正ならば、それはずっと正になる。


「つまり貴様ははるかかなたの自分を証明するため、1つ下の人間を作ろうとした」

「そういうことだ」

「だが今度は手段が一致しない。貴様が人間だと証明するのにお前たちは何をしていた? 辺に状況をかき回したりしたと思えば手を貸したりで、分からない。人造人間でも作ればいいだろう」

「おいおいおいおい。衣川早苗とあろうものがそんな非人道的なことをすすめるとは。どうやら俺の方が人間味はあるようだぜ」


 私もそれが是としていったわけではない。

 こいつならそれをしそうだと思っていっただけだ。


「そんなことしたら人間らしくないだろ」

「らしくない?」

「人間というのは人との繋がりでできている。人との繋がりに笑い怒り悲しみ生きる。そういう中で俺は産まれたんだぜ」

「……」

「母の胎内から産まれなければ、人間と呼ぶのにいちゃもんができてしまう。曲がりなりにも親御のもとで育てなければ人間らしさが失ってしまうだろ」


 試験管の中で作ったり、監禁して育てたりするのは広義の意味で人間らしくないから、やらなかったということか。


「ならば俺達ができるのはイベント管理だ。俺と愚妹は起きるイベントを管理して誘導したり援助をしたりした」


 イベントの管理。

 ギフトや超悦者そしてシンボルにはじめ、人々の機敏もこいつらが操作していた。


 今更手のひらで踊っていたことに戸惑いもない。


 ○○が強くなるために敵になりそうな人に、敵になるような状況を作り、敵になるような能力を与えたのが神薙信一だということだろう。

 最終的な決定権をその人が持っていたのなら、それでもやはりやりすぎだと憤るだろう。


 だが


「………ランフォード夫妻もそういうことか」


 あの人たちを無理やり洗脳させ私を襲わせたのは許さない。


「読者に補足しておくが、ランフォード夫妻とは1章のボス。触れた鉱石を化け物に変換する能力で○○と衣川早苗が戦った」

「下衆め、○○のことは先に手を出したのはこちらだからあまり強く言わなかったが、誘導するにしても洗脳まですればそれは物扱いしたのと同義だ」

「それに関しても申し訳ない。そうでもしなければ衣川早苗に牙を向ける存在がいなかった。だがこういうイベントが発生しなければ○○と衣川早苗をうまくくっつけられなかった」

「他に手段は!」

「月夜幸を1章のボスにすることも考慮に入れたが、初期能力では多幸福感を攻略できなくてやめた」

「……」


 いい加減はっきりさせよう。

 私も怯えているのだ。

 だからこの事実に直面したくなかった。



 神薙信一は敵だ。



 この悪●羅刹に私達は立ち向かわないといけない。


「貴様の着地点は分かった。貴様が人間だと証明することだ。貴様の目的は分かった。貴様に似た強い人間を作ることだ。貴様の手法もわかった。強くなるようイベントを管理することだ。ならば○○を返せ。○○はまだ必要なはずだ。どう見ても貴様の極小に届いていない。このままイベントとやらを起こしてより強くする必要があるはずだ。例えばまだシンボルを持っていないのだら――――」

「もう用はないんだ」


 神薙信一は私達の命乞いを無下に捨て去った。


「勘違いさせたか。確かに俺は自分に届く人間を育てるといった。だがそれが○○だったとは言っていないぜ」

「なに?」

「始めたのは180年前からなんだぜ。その歴史を紡ぐ中で一人産まれてくればいい。そのための礎なだけだ。一応○○の父も候補だった。無理だったから子に継がせた。それは○○も変わらない。種馬としての役目しか残っていない」


 そうだ。1つ光明がある。

 まだ高校生だ。子供だっていない。


「だが、まだ○○は16だ。子供もいない」


 こういう考え方をしたくないが、○○の血は貴重なはずだ。

 恐らく玲実さんや双葉という血のつながった姉妹がいたのも、貴重な血筋を途切れさせないためだろう。


 その血をみすみす捨てるのは愚策だ。


「それがいるんだぜ。あれには見ず知らずの子が」

「まさか。真百合が手を出したのか?」

「……まあ、そうともいうか。そうじゃないともいうか。つまり、他にもいる」


 不埒な関係になったのは真百合だけじゃないと?


「まさか……駄目だ。当てが多すぎて皆目見当つかない」


 あいつ顔はいいし、適当なことを囁けば大体の女はころりといくからなあ。


「お前だぜ、衣川早苗。衣川早苗のお腹の中に、既に子がいる」

「――――――は?」

「気づいていなかったのか。衣川早苗、お前は妊娠している」

「はあ?」


 いくら私でも赤ちゃんがコウノトリから運ばれるなんて思っていない。

 やることやってできる。


 だがそのできることをした記憶にないぞ。


「ちょうど今2か月か」

「いったいいつだ。2か月前に……」


 2か月前といえば確か今この場の帝国に修学旅行にいったが。


「いや、それはないはずだ。だって」

「交尾する描写をしなかっただけだ。実際に衣川早苗と宝瀬真百合はやったし、妊娠した。処女妊娠だ」

「貴様、ほんと……ほんとっ」


 言葉が出なかった。

 あまりにも倫理を逸脱していた。


 最低最強の能力とはそういうことなのか。


「謂れのない汚名を被りそうだから訂正しておく。宝瀬真百合には許可を取った」

「私には? 聞いてないぞ!?」

「衣川早苗は……別いいかなって」

「……雑すぎる。私の扱い雑すぎる」

「そういうことで、だ。もうほとんど用済みなんだ。後はお前達のお腹の子がすくすくと育つのを待つだけだ。父の役目なんてない」


 最低最悪さらにまずいことに、私の妊娠が2か月前というのから、それ以上前から○○の処分は規定事項だ。

 今回は○○のやらかしだが、どの道神薙信一の意志は定まっていたのだ。


「そろそろいいだろ。次の質問で最後にしてくれ」

「な、ならば○○はどうなる」


 吐き気すら愛おしい極悪

 アレ以外言いたくない

 知っているだけで恥

 弱点が百八ある男

 下とメタの化身

 神権剥奪野郎

 人外の天敵

 最低最兇

 人間厨

 英雄

 ●


 ありとあらゆる異名が、真であるかを証明するかのように

 最後にこの男はこう言った。


「父の末路なんて子に越えてもらう以外無いだろ」



○○ やらかした

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― 新着の感想 ―
[一言] 「生き残ったのは、衣川早苗と、あとは……宝瀬真百合、そしてあの子か。なら、いいか」 ここで言う"あの子"とは宝塚生罪乃至あやか(名前合ってるか覚えとらん) のこと?個人的に宝塚生罪の可能性が…
[一言] 更新ありがとうございます。。
[気になる点] 「……このまえ一樹と帰納法の勉強をした」 ここ一樹じゃなくて〇〇ではないですか? [一言] 更新感謝。
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