表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
10章 最強の終極
311/353

最終傀 二弐2②Ⅱ

作中最大の伏線回収






 努力をしない能力。


 振り返ればそういう能力だと気づくことが出来る。


 無知全能の弟と全知全能の妹を屠る努力をしない。

 群青の魔女から宝瀬真百合に戻す努力をしない。


 敵を倒すための努力、殴る蹴るといった武術も魔法や超能力といった奇術も、そういったかったるいことを一切必要とせず

 成したいことを成す能力。


 ただ人類の終着点。

 これから人類がたどり着くと定められた能力。


「そんな……そんな悍ましいものが最強であってたまるか……」


 擦れ畏れ怯え

 そんな状況でやっとだした反論はただ納得できないという精神論。



「理解が出来ないか。それとも理解をしたくないか。ならばもう一つ補足で説明してやる」


 理の外の怪物は、因数分解のやり方を高校生に教えるように、優しくとも落胆の声色を隠さず説明を続ける。


「最強の能力が分からないのなら、最速の能力はなんなのか考えるといい」

「……ぁぁ」


 簡単なことだ。

 これが気づければ簡単だった。


「時速40㎞で走ることか? 車に乗って100㎞で進むことか? 音速にならってマッハで飛ぶことか? 光速に沿って動くことか? 違う。分かるだろ? 答えてみろ」

「時間を……止める」

「ああ。時間を止める。若しくは瞬間移動でもいい。答えとしてはどっちでもいいが導きたい答えは同じだ」


 かつて嘉神一樹は、耐性がなかった場合時間を止める能力が最強だといった。

 それは限りなく正解に近い。


「この2つは俺が先に挙げたどれよりも速い。それはなぜか? どれだけ動けるかなんて競っていないからだ。時間をかけない、移動しない、楽をする。だから速い。だから強い」


 光速以上でも答えは変わらない。


 出来ることという分子の大きさで競うのは、幼稚。

 それにかかる分母の小ささで、そのものの強さが決まる。


 1秒で100万㎞進むよりも、刹那で1m進んだ方が速い。


 そんな小学生以下の計算が出来ない輩が、できることで物事を競っている。


 滑稽だ。


 最強議論は小学生までのたしなみかもしれない。

 だが問題ない。彼らはきっと小学生で履修すべき乗算除算の計算が出来ないのだから。


「速さを競う上で時間をかけるなんて面倒なことするんじゃない」


 そしてそれが分かれば最強が何なのか気づけるはず。


 強さの証明に物理だの魔法だの使うな。


 そんなめんどいことしている時点でお前は弱い。

 神薙信一の内心はそうやって嘲笑っている。


「そういう意味で、俺は愚息の大断淵の使い方は正しいといった。宝瀬真百合に一瞬後れを取ったのも仕方がないと思っている。だってあいつら強くなるのに楽をしていただろ?」


 強くなるため、そこまでの過程をすっ飛ばし、ただ目標まで到達する。


 それが正しい能力の使い方。


 分かって使っているのは、この世で神薙と宝瀬真百合ただ2人。


「これが、真っ当な思考回路における最強な話。ただのチートの話。ここからは最終傀の本当の能力。真の意味でインチキな能力を話をしよう」


 今までの話はあくまで前提。

 何が優秀なのか分からなければ、いかに悍ましいのか本当の意味で把握できない。


「努力をしない能力。だがこれでもまだ足りない。σφには届かなかった」


 誰もその存在を理解していない。

 誰もがその存在を知っている。


「そいつはこの世が始まる前の存在、混沌だとか無だとかそういった存在よりもはるか前に存在し、そして超越していた」

「……」


 存在は知っている。

 ハヤテは自分が神だと思っているが、唯一神はなんなのかと聞かれればそいつの存在を思い浮かべる。


「そいつはいかなる手段を用いても攻略できなかった。努力してもまだ届かなかった」

「……」


 そもそもとして前提がおかしい。


 アリが銀河をどうやって滅ぼす?

 ノミが宇宙をどうやって滅す?


 誰もそんなこと考えようとも思わない。


「俺以外誰もできなかった。俺もできないかもしれないと何度もあきらめかけた」

「……」

「そいつにあったのは能力ではない。ただの事実」


 σφの事実、始まりの一節。


「この世のすべてはσφの要素という事実。俺も人類も宇宙も概念も夢も希望も、ありとあらゆるものすべてあれのほんの一端」

「……!」

「全てが始まる前の存在故、終わる時は全てが終わった後。200年前、あれは気まぐれで自殺するためこの世全てを滅ぼしかけた」


 理解不能。

 支離滅裂。


「死も一部。無も一末。対抗手段は存在しない。人も神もそう決めつけ、それは終ぞ崩れなかった」


 何をしようが無意味。

 それは初めから決めつけられていたもので、最初の最終決定。


 始まりの前提。


 |וְאֵת הָאָֽרֶץ(プロローグ)。


「どんな手段を用いても、どんな手順を省いても、どんな描写を行っても、行きつく先にあれは健在する。どう足掻いても意味がなかった」


 努力しても、先がない。


 努力せず死に追いやっても、死がそいつ。

 努力せず無に帰しても、無があいつ。

 努力せず勝利しても、負がこいつ。


 何をしても、σφ。

 徹頭徹尾、彼女。


 努力をしない能力では、好きな結末を用意できるが、その結末が踏破できない。


 ゴールにワープする能力は、ゴールが存在しない場合最速になりえない。

 こんな理不尽をあげ、ようやく見つけた努力をしない能力の弱点。


 だがこの世界は理不尽(σφ)であり、当然、理不尽(σφ)をさらなる理不尽エピローグで討伐したのが新世界だ。


「考えた。匣の中で考えた。そうして思いついてしまった。絶対にたどり着いてはいけない答えに」

「そ、それは……なんだ? 父上は何に気が付いた?」


 神薙信一は笑った。


 ただただ自罰として、自嘲して、滑稽に。


「描写すらいらないという解答」

「え? え?」


 それが意味するところ。

 最低の結論。


「敵を倒すために、倒したなんて描写必要なのか?」

「……??」


 努力をしない。

 それはいかなる過程を蹂躙する能力。


 結果だけがあればいい。そういう能力。


 だが、神薙信一は最早その先。


 結果すら必要ない。

 ただそうであったことにしてしまう。


 それはつまり


 敵を倒す、殺す、誅す、屠る、滅す、鏖す


 それすら必要としない。 


「そんな描写はしなくていい」


 敵を倒すという描写。

 それがなくたって敵を倒したことにすればいい。


「能力というのは、困難の削除。そして目的も所詮敵を倒すための手段でしかない」


 倒す倒せない。

 そんな描写すら面倒。

 

 無駄。不要。非効率。


 ただ倒したという事実があれば、それでいい。


 倒すためのいかなる手段を放棄した。

 だが倒すことすら本来は必要ない。







 そこに描写は必要ない。






「描写をしない。これがヒト真実シンボル






 これが頂点の能力。


 すべての存在に勝利する、最低最強の能力。


「何かを成すための努力は必要ない。だがもっと言えば、何かを成すことすら、いらない」


 敵を倒すための努力がいらない。そして倒したという描写すら、いらない。

 そうしたこととして捻じ曲げ、その描写が必要ない。


 自分の存在のため、あーだこーだめんどくさい設定描写を出す必要がない。

 自分の強さのため、ずばばばばーなどうるさい戦闘描写を映す意味がない。

 自分の                            ない。


 描写をしない。

 描写がいらない。


 どれだけ不合理な状況で、どれだけ不都合なタイミングだったとしても

 すべてをひっくり返す、その描写をしないでそれができる。


 敵を倒す。やり直す。説得する。抗う。覚醒する。裏切る。根絶やしにする。乗っ取る。屠る。逃げる。


 そんなのいらない。


 そんなことしなくても敵を倒せる。


 勝利できる。


 努力をしない能力が、畜生共や団子を使わず「鬼を倒す」能力であるとして

 描写をしない能力が、話を一切語らず、「めでたしめでたし」とする能力。


 どちらがより上回り最低なのかは明白。


 文字通りの最終回。

 めでたしめでたし、fin、END

 そうなるための描写をしない。


「地の文の描写も、会話文の描写も、馬鹿らしいったらありゃしない」


 そいつは小説を否定した。


「漫画も動画も、面白いがそれだけだ。決して誰も強くない」


 そいつはフィクションを愚弄した。


 だがそれがなんだ。


 そいつが頂点だ。


「登場人物では勝てない」


 所詮は作品の中で描写して存在が許される有象無象。

 メタ発言だの主人公補正だのギャグだの御都合主義だの持ち出したところで


 所詮は描写。


 どんなに強いことにしたところで


 所詮は描写。


 神薙信一には勝てない。


「作者では勝てない」


 作者は描写をして初めて作品の創造主となれる。

 だが最終傀は描写を超える描写も、変更する描写も、必要ない。


 たとえ神薙信一は倒れたという描写をしたところで、描写抜きに克服してしまうのだから、それに一切の価値がない。


 神薙信一には勝てない。


「読者では勝てない」


 読者は描写を読まないといけない。

 だが最終傀は描写をもとにした意見も反論も、全て過ちにしてしまう。 


 何を言ったとしても、認識の食い違いによる恥の論理だ。


 神薙信一には勝てない。


 作者も読者も創造主も観測者もカミもアクマも


 神薙信一には勝てない。


「だからそういうことだ。俺が愚息をどうやって葬ったかだが、最も簡単な話。葬る描写をしなかっただけ。ついでに愚妹もやっておいた」


 対策も反撃も描写がなければ無意味。

 困難も不可能も描写がなければ容易。


 たったそれだけの話。


 たった6文字『描写をしない』だけのの話。


「全く、お前達はいつもそうだ。『めでたしめでたし』にすればいいのに。鬼を斬るだの、魔王を倒すだの、邪神を討伐するだの、平衡感覚のない阿保ばかり」


 最低最強は作品を愚弄した。


「それが面白いと感じる作者も読者も異常者だと気づけ。リアリティがなさすぎる。世界の危機として人が立ち向かうのなら、行き着く先は俺になっていないとおかしい」


 最兇災厄は人間を馬鹿にした。


「でもまあ、そんなお前らが大好きなんだ」

「はぁ?」

「だから俺は、馬鹿で阿保で無能で雑魚で幼稚で痴呆な御前達と共に生きるために、描写をするために、最果ての絶頂を習得したんだ」


 全ての能力を無限に持っている能力。


 言い換えれば、何をするにも能力を使うという描写をしないといけない枷。


 端から申し上げている通り、最果ての絶頂は弱点である。


「尊厳を破壊し、リソースを削り、ようやく俺はキャラクターとして生きていける」


 神薙信一はこの世で最も頭がいい。だが新世界になった後賢そうなことはしていない。

 当たり前だ。恥を耐えてお前達のまねごとを一生懸命にやっている。


「でもまあ、これが全てだ。これが神薙信一の全てだ。実は女達が俺の力を封じているとか、獄景のさらなる段階を使えるとか、最果ての絶頂も全部説明してないものがあるとか、いろいろ隠しているものはあるが、俺が俺である能力はこれで出しきりだ」


 全ての能力を無限に持っているという弱点を携え

 人間を馬鹿でかい存在に変貌させた罪を背負い

 たった一つ『描写をしない能力』を具えた男。


 神薙信一。


「初めまして、よろしく」


 最低最兇の最強である。






因みに何ですけど、この小説内の描写が所々おかしいのは、最終傀の力があふれて本来の描写がなくなってしまい、しかるべき描写ができていなかったからです。

つまりはどうしようもない仕様であり、異常でありSOSなり伏線です。

つらいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 一根君のシンボル。  まずσφには努力しない能力が届かず一根君のシンボルは効き最終傀で封印できたことから、一根君のシンボルは努力しない能力より強く最終傀より弱い能力であると考えられます…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ