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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
10章 最強の終極
308/353

家族内乱




「状況は」


 四の五の言わずに、すぐに決戦の会場に飛ぶ。


 そこには既に俺達以外の6人が集っていた。


「詰み、の一歩手前ってところだ」


 でかでかとスタジアムに掲げられているスクリーンには


 日本0勝 G国3勝


 と見るも無残な試合結果が表示されていた。


「なんでこうなった?」

「オレがそうした。それだけだ」


 父らしき奴が恥ずかしがらずに、はっきりと答える。


「オレが3つ負けてきた。だからこうなった」

「……どうやって」

「全員に今日の決戦が延期になると伝え、各々別の手段でだました。そうしてオレ一人になったところで、洗脳と構造変化により3つ負けてきた」


 確か父さんの『論外』のギフトにそういう能力があったか。


「ちなみになんて騙された?」

「私は騙されていないぞ。困っている人がいるから助けるべきだって言われて、みんながいるから一人くらいかけても大丈夫だって言われたから、助けに行ったまでだ」


 それを騙されたというのだ。


「……あんまり言いたくねえから、拒否でいいか」

「まあ、シュウがそういうのなら」


 父さんに騙されたなんて恥は伝えたくないだろう。

 分かる。分かるよ。


「姉さんと普通にショッピングに行ってました」

「楽しかったねー」


 両手にはたくさんの買い物袋がつかまれていた。


「ワイは普通に参加してたで」

「じゃあなんで?」

「力の序列が違いすぎて止められへんかった」


 弱すぎる。こういうことになるのなら、もうちょっと強い人に枠を費やすべきだった。


「一応、理由……言い訳は聞こうか」

「一樹を守るためだ」


 これまた恥ずかしげもなく、威風堂々と言った感じに父さんが語り掛ける。


「これ以上一樹が駄目になっていくのを、父として止める必要があった」

「俺のどこが」

「話を続けてくれ」


 シュウが俺の言葉を遮り、続きを促す。

 今は俺の感想よりも、状況の把握が優先か。


「順当にいけば一樹はこれから帝国と、帝王と戦うことになる」

「だろうな。たった今危ぶまれているけど」

「絶対にダメだ。父として、そんな危ないことをさせるわけにはいかない」


 聞き捨てならない発言を聞いた。


「それはあれか? 俺が帝王に負けるといいたいのか?」

「それもあるが、それだけでもない」

「言ってみろ」

「一樹、お前にこれ以上戦わせるわけにはいかない」

「なぜ」

「分かるだろ。お前のためだ」


 父さんのシンボルは、封印。俺の記憶や本来の力を封じている。

 だが今、封印はほとんど解けかかる。


 幼き日なら、封じることが出来た。封じている状況なら、再度封印をかけなおすこともできた。

 だがもう、俺を封じることはできない。


 それを察しての行動なのだろう。


「そんなに記憶を封じ込めたいのか」

「ああ。それが一樹のためだ」

「…………」

「気づいているのか? 自分がどんどんおかしくなっていることに。崖っぷちから更に数歩進んでいる先にいるってことに」

「それはもう手遅れだろ」


 自分がそうだという認識は無いが、そういわれたら、言い返さないといけない。


「言わんとしていることは、分かるけどよぉ。ちょっと相談した方が良かったんじゃねえのか?」

「それで? 相談をして君は受け入れてくれたのか」

「……まあ、多分無理だ」

「だろ」


 そりゃ、自分の子供をしつけるために、国を代表した選手が、敗退行為を行いたいなんて言ったらぶっ飛ばされる。


「これが最善だ。異論も誹謗中傷も後で聞こう。もう終わりだ。あと2敗……1敗すれば終わる」


 5vs5の勝ち抜き戦だが、3連勝すると次の試合は不戦敗というルールがある。

 対戦相手は不戦勝で3連勝したため、次の試合は誰が参加しても不戦勝となる。


 そして、その次の相手に負けた場合、最良の結果であっても3連勝以上をしないといけないので、敗北が決定される。


「そうはいっても、問題ない。俺とシュウで2つずつ白星を持って帰ればいい。1手遅れたな」


 あと1手あれば、適当な相手に偽りの敗北をプレゼントすることが出来たというのに。

 やはり、こいつは持っていない。


「いや、1手どころか3手一樹たちが遅れた。スコアボードをもっとよく見るといい。誰が闘ったのか」


 そういわれ、視線を勝敗表に向ける。


 ●嘉神一樹 vs アントニス・アンドレス〇

 ●時雨驟雨 vs アントニス・アンドレス〇

 ●宝瀬真百合 vs アントニス・アンドレス〇


「オレが何も考えずに負けると思ったか。上三つ既に負けておいた」

「……俺の姿で負けたのか」


 少し予想外だったが、敗北のためなら俺達外道五輪の姿で負けた方が効果が高い。


「だがそれならこっちだって」

「言っておくが一樹が何かできることはない。父さんがしたのは敗北のための暗躍。一樹がやるのは勝利のための偽装。父さんのはただチームの内乱として片づけられるが、一樹のは明確な偽装工作。やってもいいがその時は密告する」


 そうなってしまうと明確に俺の出場資格が無くなってしまう。

 むしろそうなったほうがこいつ的には助かるのだろう。


「なるほど。よくできている。いい作戦だ。ただ一つ言えるのはその作戦は初めから失敗すると決まっているが」


 一杯食わされた、そう思ったがなんてことは無かった。

 ただ驚かされただけで、現実的に何の支障はない。


「もう一度言う。一手遅れた」


 まあ、本当にやばくなれば月夜さんが教えてくれたと思うので最初から問題ない。


「本当は全部偽装で決着をつけたかったのだろうな。だが残り4人を一度も負けずに勝てばいい。それだけの話」

「……」

「帝国なら詰んでいた。準決勝の相手なら厳しいかもしれない。だが対戦相手は初戦の相手。予選がドン2の成績だった国。そんな相手に俺達が負けると思うのか」

「……さあ」


 仕掛け時をミスった。

 いや、初戦の相手だから俺達が油断したのか。

 どのみち主人公サイドが1回戦で負けるわけがないので、この作戦は失敗に終わる。


「じゃあとりあえず今から参加選手を選ぼうか。申し訳ないけど左右田さんは控えてもらう」

「しゃーない。ワイもこの大事な局面で出しゃばろうなんてせん」


 正直左右田さんは補助に回ったほうが強い。


「姉さん、妹。どっちが参加したい?」

「どっちでもいいよー」

「えっと……流石に負けたら終わりの試合に出たくはないです」

「じゃあ、姉さんと早苗でいいか」


 早苗が残った時点で3勝は確定しているし。


「いや、やっぱ妹、お前が参加するべきだ」


 言ったのは俺だが俺じゃない。

 月夜さんが俺の口調で俺の声色でそういったのだ。


「ええ? そんな無理です。正直いきなりのことで覚悟の準備をしていないので」

「平気平気。じゃあ、妹次の試合お願いね」

「せめて後の方に……」

「大将やりたいの? 意外に豪胆だな」


 残りは副将か大将のどちらか。

 大将は負けたらその時点で敗北だが、副将は一回勝てば次につなげられる。


「……わかりました。やればいいんですよね。やれば」

「物わかり良いね。後でこいつが責任をもって飯をおごるから」


 責任はこれが果たさないと。


「もう、こうなったら無駄に高いもの頼みますからね! いいですね!!」


 妹の了承も得たところだし、審判に副将の選手を伝える。

 数秒後電光掲示板に


〇式神双葉 vs アントニス・アンドレス●


 と表示された。

 これで1勝3敗。負けたら終わり。


 そんな試合の会場に妹が降り立つ。


「武器の使用はありますか」


 決戦のルールは宣言すれば一つだけ持ち込みが許される。


「もちろん、このマシンガンで」


 対戦相手はマシンガンを選択。

 俺達にとってはありえないが、海外だと素手で戦うより重火器で戦った方が強い。


「ありますあります。このスケッチブックで」

「……正気か?」


 対戦相手の男は大分不振がっている。


「負けるかもしれない戦いだった。だがここで勝てば国の威信が保たれる。悪いが女であっても容赦はできない」

「わたしも1か月前ならこんなことしなかったんですけど、知りたくないものを知っちゃったので」

「覚悟が出来ているのならいい」


 さて、大一番なのでこの試合だけはちゃんと観察しよう。


 審判が合図を取りほぼ同時にブザーが鳴り響く。

 そして1秒後、機関銃の乱射が始まった。


 ダダダッと大きな音を轟かせるが


「うわぁ。ほんとに見える」


 妹が小さくつぶやいた独り言にかき消された。


「なッ?」

「知ってるでしょ。超悦者ですよ」


 流石俺の妹(腹違い)※強いて言うなら神薙の分家

 呑み込みは人一倍早く、こんな攻撃なら簡単に防げてしまう。


「じゃ、終わらせますね」


 それだけいって、終わった。


二次色の筆レインボードリーム


 妹のギフトは、三次元を二次元に、二次元を三次元に変換できる。

 そして二人が立っている決戦場は、一切余計なものがない平らな床。


 こんなの二次元化しろっていっているようなもの。


 無事に対戦相手は床に磔にされた。


「えっと、この状況ってKO扱いになるんです気ね」


 審判に確認を取る。


「……まだです。意志をもってはっきりと動いているので戦闘不能とはみなせません」


 一応平面化しもう干渉できないとはいえ、床の上にアートとして動けているので、戦闘中と判断したのか。


「そうですか。わっかりました」


 なんてことはなさそうに、妹はスケッチブックからカッターナーフを取り出し


「陣取りゲームだ」


 床を一直線に分断。

 二次元としての移動なので、高低差をつけられたらその先にはいけない。

 自分の能力を知っているからこそこういう対応をとっている。


 四分割、十六分割と続けていき、ついに動ける場所がなくなる。


「はいはいっと、次はこいつです」


 へらで床を捲り持ち上げ


「えい」


 フリスビーの要領でぶん投げた。


「これで場外」


 審判が10カウントをとり、特に問題なく妹は勝利した。




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