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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
10章 最強の終極
305/353

超異次元サッカー





「努力は必ず報われる。昨今この発言をすると、盛った猿のように否定する連中が湧いてくる」


 今俺は選手控室にいる。


「どれだけ頑張ってもNO.1になれないなら意味がない。当たり前だ。NO.1を目指すのは自分だけじゃない。他人も努力をするのだから」


 基本11人でスポーツをするプレイヤー

 そう、サッカー選手たちの前である。


「努力は万能の力だ。だからこそ、その否定は全能者のパラドクスと本質的に同じわけだ」


 選手たちは黙って俺の話を聴く。


「たとえ否定されたところで、それが優れたものであることに何の変わりはない。全能と努力は密接な関係がある」


 ただしそれは俺の話が面白いからというわけではない。


「努力をすることは素晴らしい。俺が足りていないものは努力であり、恐らくとして俺を倒せるものもそれだろう。故に俺は努力をする人を、選手を尊敬する。ただギフトガチャでSSRを引いた人間よりRであっても高みを目指そうとした選手を心の底から拍手を送りたい」


 むしろ逆、彼らにとって不都合なものになっている。


「とはいってもそれはあくまで心境の話。現実として俺より上手な選手はどんなスポーツであっても日本には存在しない。メダルを狙うのなら俺が前線で、全線で参加すべきだ」


 スポーツマンシップも大事だが、それ以上に実力が大切。


「さて、そうなってくると枠がいくつか埋まってしまう。俺が参加してしまうと参加できない選手がどうしても増えてしまう。尊敬する人間を不幸にしてしまう」


 彼らはスポーツに人生をささげている。

 その頑張りを俺は無に還してしまう。


「日本人として参加したい、人間として参加したくない。とっても苦しい。だが一つ思いついた。尊敬しなくてもいいスポーツをやればいいと」


 それがサッカーだ。


「サッカーは土人がする遊びだ。知性を持った生物が行うスポーツではない」


 月夜さんも言っていた。


 人間ならば、手を使うスポーツをやれと。


「キーパーは俺がする。なぜなら唯一人間が行うポジションだから。それでもまだ人間でいると自称するなら、頼むからコートの外でプレイをしてほしい」

「待ってくれ。流石にふざけるなといいたい」


 腕章をつけた選手が、待ったをかけてきた。


「言っていることは馬鹿にしていること以外分からないが、それはいい。つまりなんだ? あんた一人でサッカーをする気でいるのか?」

「もちろんそのつもりで言った。なぜ言い返す?」


 はっきり言って選手として参加するなら、選手は邪魔なのだ。

 ゲームプレイヤーなら分かると思うが、デフォルトの選手は弱い。


「まあ、理解が及ばないのも想定の内だ。だから今日の試合ゲームをしよう。前半と後半で得失点の桁数の差で勝負をしよう」

「桁数?」

「そう。桁数が同じならそっちが好きなようにしていい。ただ桁数でこっちが上回った場合は、全試合一人でやらせてくれ」

「正気か?」

「正気だよ。強いて不安を上げるとするなら、桁数が違う場合の大小関係を、ちゃんとお前たちが把握できるかどうかってことだ」


 俺を含んだ選手全員がこのルールで納得した。





 スポーツ選手におけるギフトホルダーは、ガチャでいうところのR程度の能力だ。

 ある程度強くないと選手にはなれないが、同時にSR以上になると国や大企業が個人契約を行う。普通に考えて数年で億稼ぐより、数十年コンスタントに数十億稼いだ方がいいに決まっている。


 とはいえここは日本、レベルの低いSRなら選手になりえる。


「うっぉおぉぉぉお、ヴァーニぃングうシュートぉおお」


 エースストライカーの炎を纏わす能力を始め


「ジャイアントウォール」


 巨人になる能力でシュートやブロックを行う選手。


 そんな連中が活躍し、前半だけで34対0


 虐殺といって違いない。


「訂正するなら今の内だぞ」

「いや、所詮二桁だろ」


 本来なら途中で忖度をするべき点差だった。


 キックオフ。相手ボール。


「ゴルフのティーを知ってるか」


 相手の10番が11番にボールを渡した瞬間の話。


「ボールをタッチするとき、一瞬そういう風に見えるよな。インパクトの合図だって思えるよな?」


 そのままシュートを入れ、ゴール。

 1点。


「はあ?」

「ありえん?」

「化物か? 日本人は……いや、1桁は」


 所要時間1秒。


「早くボールを」

「あ、ああ……」


 そうはいいつつも選手の足取りが遅い。

 既に逆転は不可能な点数。急ぐ理由はあちらにはない。


 だから時間を狂わそう。


無限淵アンタッチャブル


 体感時間を狂わすアキレスと亀。

 1/2+1/4+1/8……を1+1+1……として永遠と繰り返す。


 それが逆ならば逆だってできるはず。

 一つの行動に対して、実際の行動時間を指定する。


 ボールをもってセンターラインに運ぶまで、1秒。

 その間どれだけすっとろい動きをしても関係ない。


 ボールを運んだ9番は、普通に動いているつもりだが、一般から見ると二次関数の加速で動いている。


 故に、往復2秒。2秒で1点

 45分、2700秒。

 単純計算で1350点。


 最初の10点は本体がやり、20点は複製体がやり、30点は複製の複製がやり40点は複製の複製の複製が……とやっていっていた。


 結果1384対0

 歴史上類を見ない大虐殺になった。


 あまりのひどさに、敵味方審判サポーター監督応援団観客、全員が沈黙している。


「これがサッカーだ。必殺技なんてくどいんだよ」


 本当にうまいプレイヤーなら、必殺技なんてモーションが長く邪魔なんだから使わない。

 技術だけで10点取る。


「じゃあ、文句ないな。邪魔するなよ」


 味方とされている選手全員にそういった。


「………」


 誰も文句を言わなかった。


「つまらん。つまらんぞ!」


 そう思っていた矢先、一つの迫力のある罵声によって、状況を変えられる。


「誰……? いや知ってた」


 ユニフォームの上に、腕を通さずジャージを羽織るだけ、それでどうやって動けているのか。

 男としては全盛期、年齢は30を越えるかといったところ。


 そいつは以前に会ったことがある。

 帝国四天王の1人。


「叢雲さん。叢雲天狗さん」


 そしてもう一人の四天王。


「まったく、勝手に動きよって」


 最古の四天王


 今はジャージを着ているが、戦闘時には迷彩服を着る人だったか。


「氷室さん」


 確か9位の人。

 正直この人のことを侮っている。


 恐らく『世界』の能力者であり、どう頑張っても俺には勝てないからだ。


「ここ日本代表の控室ですよ。帝国の人が勝手に入ってきちゃダメでしょ。それとも属国だからOK理論でも持ってるんですか?」

「まさか あり得んぞ」

「そう。それで何の用」

「あの試合はなんだっ。サッカーを、スポーツを舐めてるのかっ」


 どうやら1000点取ったことが気に食わなかったらしい。


「サッカーが人間を舐めてるし、スポーツと選手の上下関係は人間の方が上だな」


 サッカーを汚すな。サッカーは大人の玩具じゃない。

 子供ならそれでいい。


 子供は純粋に楽しんでほしい。それが商品になるから。


「スポーツは商品であり興行。それ以上に政治の道具。理解は必要であっても尊敬はいらない。心は無い」


 今ここで俺が無双することにより、日本の強さを世界に明示することが出来る。

 つまり、「俺が本気を出せばフィールドではなく、お前の国でこれを再現できるぞ」ってことだ。

 トップの人間ならこんなことしなくても分かるはずだが、市民だと知らない人間が多くいる。


 政治的アピールを含んでいたのだ。


「そうか。ならばこっちから言えるのは少ない。帝国エースストライカーはおれだっ。必ずそのゴールに正義の一発を入れてやる」

「ふうん」

「必ず勝つ。それだけを言いに来たっ」

「そう」


 サッカーの勝敗なんて、給食で余ったプリンの得るためのじゃんけんよりもどうでもいい。

 しかし今ここで俺が勝利を帝国に譲るのも寝覚めが悪い。

 それにこいつは四天王。能力の詳細を得るには絶好のチャンス。


「いいだろう。枝を折るように、お前のその足と自信を粉々にしてやる」


 とはいっても、決勝戦は1週間後なので、これからすぐに戦うわけではないんだが。




以前にも言いましたが、嘉神君は語り部としての主人公です

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