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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
10章 最強の終極
297/353

終極オリジン 弌


 最古の記憶は、産まれる前のもの。


 何一つ自分で動くことが出来ないという不快が、最古の感情。


 だから俺はただ少しでも自由になれるよう穴の先に向かった。


 自力で這い下るには早すぎた。本来は成熟しているのに未成熟児という扱いを受けた。


 産まれた時から呼吸が出来た。

 産まれた時から這いずりまわれた。


 だがやらなかった。


 それをやってしまうことが自分のためにならないと察していたから。


 自分はもっとも特別であり、もっともすぐれている。


 だが現時点で頂点ではない。


 少しでも気を抜けば殺される。


 そう思い、不快の後に感じたのは恐怖と憤怒。


 なぜ自分がこんな目に合わないといけないのか。

 1秒でも早く、その抱擁から抜け出してやる。


 母親の抱負の中で、そう誓った。




 そこから数か月、苦痛の日々だった。


 自分一人で糞尿を処理できない。

 自分では言葉が理解できない。

 自分では好きなように動くことが出来ない。


 できないことが苦痛で、仕方なかった。


 しかしそれをしようとするには、何もかも足りなかった。


 だからできないことをどうすればできるか考えた。


 動くことになるには、長い年月がいる。

 どう頑張っても数日で父の背丈になれるとは思えなかった。


 肉体は後。必要なのは知識。


 ならば、そう思い目をつけたのは本。


 なぜ同じ本を繰り返し読むのか理解できなかったが、幸いなことに異なる部屋に本がある。


 そこに知識があり、この不快を解消できる。


 非力な体で這いずり、本を見た。


 自分の不知に感動した。


 読んで全く理解できなかった。


 当時はひらがななら読めるようになっていたが、漢字という概念を知らずにいた。


 だから1枚1枚に書かれている文章を、1枚の写真として暗記し、記憶した。


 そうして自分のベッドに戻る時は、記憶したものを振り返る。


 父母従者秘書の会話から、日本語というものを考察。


 暗記した本と本の中から同じ文字や文字列、相似がある表現を抽出。


 読むだけなら1年を満たず、成人男性と同じような能力になった。


 問題なのは発声。本だと音が分からなかったので、仕方なく単語と単語のつなぎ合わせで話した。


 その代わり音はテレビなるものと、自分の文書の知識を見て覚えた。


 失敗したのは、一般的な赤子は数か月で言葉を発することができないと知らなかったこと。


 結果として父が俺を目にかけるようになったので良かったが、自分のミスを反省した。


 この時から、母を全く見なかった。


 もう必要なくなったから。


 字も音も覚えた後は、算数について考えるようになった。


 0、1、2と続いていき、9の次に10と字を循環させることで、膨大な数を表現する表記法。


 16で循環したかったが、昔の人間が指の数で数えたからだろうと勝手に理解した。


 そして行っていたのは計算結果の暗記。


 足し算、引き算、掛け算、割り算。


 これらの計算を日々行い、暗記した。


 そうすることで、後の数学に対して最速で行うことを理解していたから。


 初日は500までの数字しかできなかったが、2日目で2000、3日目で1万とやり方を覚え1か月たった後は、64桁の四則計算をすべて暗記した。


 その後微分積分三角関数の数値を、方程式をもとに割り出し暗記した。


 素数は求める公式を思いついたので、途中で考えるのをやめた。


 およそ一年たつと、大体の知識は手に入った。


 しかし最新の知識を得ることが出来なかったので、父親に頼み仕事場を見たいといった。


 父親は見ても分からないと思っていたらしく、見せてはいけないものを含めて見せてもらった。


 得た知識を咀嚼し、今ある知識と組み合わせ、知識の整合性を調整した。


 1年半で神様が用意したであろう知識はすでに手に入れた。


 ならば次は人間が用意した悪意。


 人の掌握方、金の動き、人の癖、人のミス。


 自分がするよう、自分がしないよう、自分がさせるよう、自分がされないよう


 悪意を覚えた。


 その後タイミングが良いか悪いか判断できないが、母が俺を連れ去った。


 そこで一か月、無力な人間の行動パターンをその身をもって観察し、そして、覚えた悪意を実践した。


 母は簡単に追い詰められ、たった1か月で無理心中を図った。


 まだ死ぬ気はなかったので、返り討ちにして自殺に見えるよう偽装した。


 この時、母が死んだときも2月22日の22時22分だった。


 俺を怪しんだ警察官は鬱陶しかったので、石ころが弾む角度を計算し、殺した。


 その後父親に引き取られ、施設と呼ばれる天才養育所に預けられ




 絶望した。




 彼らは各国から集められた選りすぐりの天才。


 3歳で3×3のルービックキューブを30秒でそろえることが出来る。

 6歳で6か国語を話せる。

 9歳で微積をマスターしている。


 それをさも有能そうに話された。


 俺にとってそんなものは、既に通過している。


 100万人に1人の奇跡。

 100年に1度の天才


 それなのに、こんなにつまらない連中だとは思わなかった。


 この日初めて、自分は天才ですら・・・・・・ないと知った。


 しかしそれで癇癪を起すほど、愚かにもなれなかった。


 天才じゃない人の教え方が悪いと思い、個人個人にあった指導法を編み出し、教えた。


 きっと誰かが自分に追いついてくれると信じたかった。


 そして裏切られた。


 誰一人、追いつくことどころか、届くこともできなかった。


 この日から、俺は他人を信じることをやめた。


 自分の目を見て、人の価値を設定し、出来ることを決めつけ、それをさせた。


 それが外れたことは200年以上生きて、数回しかなかった。


 施設に入って数年は、職員に気づかれないよう天才を掌握することと肉体改造に努めた。



 父が俺を海外の教育機関に連れて行くと聞いたとき、もう父の知識は必要ないと決めつけた。


 6歳までの詰め込み教育は終わり、今度は自分の力をもって世界を手に入れる。


 そうしたい理由はなかったが、そうしない理由もなかったので、そうしてみた。


 毒が盛られるかもしれない、そうじゃないにしても、自由に監視し命令通りに動くモルモットがほしかったので、日本人の玩具を欲した。


 後はもう簡単だ。


 統計を暗算で計算し、最適のタイミングで売買を行う。

 不動産の価値を下げ、物価を下げ、デフレを起こし持っていた資金を起こし、世紀の発明を定期的に他人名義で売り付け、得た資金で不動産や株を買い、物価を上げる。


 これを何度も繰り返して、自分の家を世界一にしておいた。


 それと同時に身体を鍛える。


 鍛えるといっても痛めつけることはしない。


 必要最小限の運動で、必要最大限の強化が得られるよう呼吸を行う。


 武術は常識の範囲。


 余分な動きはフェイントとして、それ以外は最速で。


 派手に動いても力を浪費するだけだとわかっていたから。


 これだけで、体重差が50kg離れている格闘技のチャンピョンを殴り倒してしまった。




 知も力も極めてしまって、死ぬ以外にやることはなくなった。




 だから、死んでもいいやって思い始めた。


 たまたま来た殺し屋から拳銃で数発撃たれた。


 撃たれる前に倒すこと、撃たれてからかわすこと、どちらもできたが何となくやる気が起きなかったのでしなかった。


 痛かった、生まれて初めて血を流した。


 でもまあ、それだけで、死ぬ時の感覚も知れたので、この瞬間俺の人生は完成した。



 つもりだったんだが、ペット代わりの妹が俺を助けようとするもんだから、仕方なく生きることにした。



「さいこうをきわめたのなら、さいていをきわめてみたらいいとおもう」



 妹の遺言はそれだった。


 火事場のなんちゃらで、ヒットマンを蹴り上げ、首を物理的に吹き飛ばした。


 その時、脳天に数発拳銃が当たっての出、生死の境をさまよった。


 さまよって、黄泉を旅して、病院のベッドの上で








「あ、見えるんですか?」


 幽霊に出会った。





1と銘打ってますが、次はかなり先

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― 新着の感想 ―
[一言] 9歳で微積をマスターは現実にも8歳で微積をマスターした人(ノ○マン)がいるからまだありえる 神薙さんみたいな人はいないな…
[一言] まだ2歳にもなってないのに素数列の一般項求められるのはイカれた変態です(褒め言葉) めっちゃ複雑な式だった気がする…
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