宇宙破壊RTA
遂に総合評価が3000になりました。
雑魚みたいな文章力かつ異世界に行かないで3000を越えたのはなかなかできることじゃありません。
盛大に祝ってください。
「というわけで、宇宙破壊RTAをやります!」
「……なにがどういうわけか?」
俺はシュウと早苗と真百合を誘い、とある星の上にいる。
「最近気が滅入ることが多い。ストレスを感じる」
思えばクラスメイトが突然消え去り、やりたくもない人殺しをさせられ、えん罪で捕まり、何万人が死ぬ事件に巻き込まれ、神々の闘争に触れ、月夜さんの肉体が無くなってしまった。
なろう小説なんだからもう少し俺達に優しくしていいと思う。
「ストレスは良くない。発散しないといけない」
「それがなぜ宇宙破壊になる」
早苗の指摘はもっともだが。
「ストレスの解消法は、エネルギーの発散に限る」
カラオケに行く。コントローラーを投げつける。ムカつくやつを〆る。やり方はいろいろある。
だが結局は力を使うことに特化している。
「だが俺達は力をうまく使えない」
「確かに」
うまくとは制御が下手という意味ではなく、全力でという意味。
「これまで個を相手取った戦いだった。だから対策がどうこう耐性がどうこう相性がどうこうなんていう考えがどうしても先に入って、力の放出という行為をしていない」
脳死ぶっぱは敗北フラグだが、脳死ぶっぱは気持ちがいい。
「だからやろう。何も考えず、全力で宇宙を滅ぼしてストレスを解消しよう」
「いいたいことはわかったけどよぉ、出来ねえだろ」
勿論シュウが言っている出来ないとは、宇宙破壊が出来ないという意味ではなく
「安心してほしい。俺が宇宙を複製して、人がいない宇宙を何個も作ってるから」
倫理的な観点での話。
だがそこは月夜さんのアドバイスのおかげで、クリアしている。
「みろ、この壮大な宇宙。これを好き勝手破壊することでストレスの解消を図ろうじゃないか」
「いつき……」
シュウが何かを言いかけたが
「そうだな。体動かすことも大切だからな」
最後には俺に賛同してくれた。
「早苗と真百合はどうする? 参加してもしなくても」
早苗は参加するほどストレスをためていなさそうだし、真百合は溜まってそうだけどシンボルを使わせたくない。
というか真百合は誘っていなくて勝手についてきた。
「せっかくの機会だ。一度試してみたい技がある」
「そうね。私が出来ることちょと色々見てもらいたいわ」
そういうことで、外道四天王による宇宙破壊RTAが始まる。
「ちなみにRTAとはなんだ?」
早苗がいつものように無知をさらす。
「ゲームとかでよく使われる、リアルタイムアタックのことだ。できるだけ早くクリアを目指す行為のことだ」
「それだと時間や世界を止められる一樹や真百合が圧倒的に有利ではないのか?」
確かに早苗にしては賢い指摘だ。
「リアルタイムだから、俺が行動した時間だから」
時間が止まろうが、俺が行動した時間を基準とする。
「トップバッターは……」
「おれがやる」
シュウが先頭を切って口火を切る。
「いくぜ、雷電の宇宙球」
単純な電撃、ただ単に電力だけ。
小難しい理屈なんて用意していない。
その電撃で、宇宙の尽くをイオンに変えた。
「そこまで、15秒15」
「そんなものか」
邪魔する人がいなければ、この程度簡単にできる。
「じゃあ次、早苗」
「……わかったぞ」
そういうと早苗は正拳突きの構えをとり
音を置き去りにした。
宇宙だから音なんて出ないけど。
とはいえ、純粋なパンチ力だけで宇宙を崩壊させることはできた。
「20秒20.すごいな早苗どうやったんだ」
一応早苗も超悦者だから宇宙破壊をできてもおかしくはないのだが、こいつ下手糞だから優先度が低い攻撃の超悦者をここまでうまく使えるとは思っていなかった。
「幸の遺言だ。最後の最後で力の使い方を教えてくれたのだ」
「どうやって?」
「私の意思を力にすればいいとのことだ」
なるほど。
裏技に近い。
早苗の精神は常人のものではないので、それを理由に力を使えばどんなことだってできるだろう。
超悦者の次のステージの理屈で、超悦者を使っているわけだ。
「じゃあ、次は私ね」
「……真百合。頼むから」
真百合のシンボルは凶悪すぎる。
ロードする能力。
何にでもして何にでもなれる能力。
その分彼女にかかる精神的な負荷は計り知れない。
「ええ。でも最近はシンボルを使っていないからいいでしょ」
「まあ、一回だけなら」
逆に使わさなすぎるともまずいとも聞くし。
「私と彼の恋。」
周りに変化がない以上、彼女は自分に能力を使った。
「折角、群青の魔女って名前があるのだから、魔法くらい使いたいわね」
魔法という概念をロードした。
「ブリザード」
氷
一瞬だけそれが見えた。
宇宙空間のすべてが凍り、そして雪のように砕け散った。
「能力インストールから合わせると、18秒くらいね」
実働10秒もない。
「次は嘉神君ね。頑張って」
「ああ」
とりあえず、これでいいか。
どうせこの宇宙は俺が異能力で作ったもの。
だから柳動体で吸収回復可能
速すぎず遅すぎず。
ぼちぼちのスコアで宇宙を取り込んだ。
「正直ここまでは準備運動だな」
超悦者を使えばだれでもできる。
ラジオ体操のようなものだ。
「次は多元宇宙な」
「多元宇宙? なんだそれは」
「たくさん宇宙があると考えればいい」
俺は複写した宇宙をさらに複写しまくって多元宇宙にしたけれど、実際どうなんだろうね。
これからそれが存在しないと証明されたら、こんなこと主張している人馬鹿じゃないか。
まあ、いいけど。
「ここからは超悦者だけでは攻略できないから」
実際は違うが、超悦者は宇宙クラスの戦いができるまでと考えるのが初心者相手にはわかりやすい。
「誰から行く?」
「今回は一樹からいってみたらどうだ?」
じゃあ、折角だし。
「獄落常奴業火滅却」
炎が炎を呼ぶ。
連鎖した怨嗟。
ねずみ講のように炎は宇宙を燃え移り、そして
「4分、こんなものか」
4分で無数にある宇宙を炭にした。
これはラジオ体操からジョギング程度。
体感的に、本気でやれば1秒足らずで同じ結果を出せる。
「じゃあ、次は」
「おれはパス。混沌回路を使うのはもっと広い場所で使いたい」
珍しい。
シュウってこういうのに率先して参加しているイメージだったのに。
「……そうか。なら早苗は無理そうだし――――」
「いや、私もやる」
早苗の番もスキップしようと思ったが、本人が止める。
「いや、早苗の能力では絶対にできないだろ」
必中でどうやって戦えばいいんだ。
「任せるのだ。私に考えがある」
そういうのなら、もう俺は制止しない。
好きなようにやらせよう。
「速攻悪鬼正宗壱天」
早苗の攻撃は、攻撃というにはあまりにも矮小な正拳突き。
拳を奮う、というよりエレベーターのボタンを押すかのような、そっとした動き。
それ以外で特徴を上げるとするなら、握りしめる手の指のうち、中指だけが勃起している。
そんな拳でいったい何ができるのか、そんな感想は一瞬で砕け散った。
一撃で、延々と広がる世界が消滅した。
勿論、俺も真百合もシュウも手を貸していない。
純粋な早苗の能力。
「……どうやった」
分からない。
必中の拳でどうやって世界を破壊する。
「それはだな……」
「簡単な話。必中の対象を『世界』すべてにすればいいだけの話」
早苗が解説しようとしたところに真百合がねじ込む。
「必中の拳、何も対象が1つとも、大きさが殴れる範囲とも指定していない」
1つではない。これは理解できる。
一度に複数を対象にしてもいい。
今現在俺の最大の防御力であるダメージを他の人形に移す能力は、早苗には無意味だ。
「複数の指定があった時、どうなるかしら?」
一度に複数を殴るには束ねる必要がある。
正確には必中なのだから勝手に束ねられる。
それを理解して
「じゃあ、殴りたいものがとてつもなく巨大で、殴る時の表面積が点のように小さかったら?」
そうだ。
ようやくわかった。
「圧縮、されるのか」
「ええ。その通り」
早苗の奇妙な拳にはそういう意味があったのか。
世界全てを対象として殴ったんだ。
拳大の一撃、それで世界を殴り飛ばすために必要なこと。
それが強引な圧縮。
恒星が縮むことで出来上がるブラックホールなぞ、ゆるゆる。
宇宙を線に、世界を点に。
必中の『法則』なのだから、この世の理は『法則』の後。
まず世界全てが命中すると定義され、そのために矛盾してしまう世界の体積が『法則』によって否定される。
「なんつう業だ」
大きければ大きいほど、その一撃が威力を増す。
「逆に一部だけを対象にするのなら、分解も可能」
例えばそう、脳と心臓だけを指定して殴れば、その2つが強引に抜き取られる。
拳の取●寄せバックとはよく言ったものだ。
今にしてようやく、早苗も俺達と同じ真の超者だということが理解できる。
攻撃力は俺より上かもしれない。
これなら十分に戦力になる。
「気に食わないわ。本当に、気に食わない」
「真百合。これは幸から教わった絆だ。固有の趣味嗜好を持つのは自由だが、それは公序良俗の範囲内で行うべきだ」
「うっさいわね。黙っていなさい。あなたのそれは気づかなかっただけで、やろうと思えば初めから出来ていた業でしょ。自分の無知を絆扱いにされても滑稽よ」
そりゃいつも仲がいいとは言えなかったが、これは違う。
真百合は早苗に明確な敵意を持っている。
「何より、その程度私の前には何の武器にはならない」
「碧き魔女の血」
真百合の指先から出てきたのは一滴の血。
いや、本当に血なのかはわからない。
赤い血が、彼女には流れない。
水のように透明な青。
それが今の真百合の血。
魔女の生き血。
それを血と表現するかは、俺の立場ではできないからだ。
その雫が一滴重力に従って落ちていく。
落ちて、墜ちて、堕ちて。
真百合の足先にまでそれがオチた時
世界は完全になくなっていた。
「……」
早苗と同じ。結末は分かる。
世界が一点に凝縮され、潰された。
だが真百合がどんな方法をとったかは分からない。
早苗がシンボルを使っている都合上、コピーをして同じ能力を使うこと等出来ないはず。
「何をした?」
早苗が尋ねるが、魔女は答えない。
「何をした」
「溶かしたわ。私の血で。この世界を」
言っている理屈は早苗のものより簡単だ。
塩が水に溶けるように、世界が血で溶けた。
多次元にわたる宇宙を、真百合の血が内包した。
早苗が拳を振る速度と同等の速度で、世界を溶かし切った。
「……バケモン」
真百合はもう違う。
俺達のように自分の理不尽を相手に押し付ける存在ではない。
理不尽が彼女なのだ。
脳が自分の体を支配しているように、理不尽を支配している。
「私がいれば、もう何もいらないわ。必要なら帝王だって殺してあげる」
できるだろう。
with月夜さんの俺で帝王と同等といわれている。
そんな俺だから分かる。
真百合は俺より強い。
だから、帝王よりも強い。
そして、そのことに帝国側は気づいていない。
神薙も柱神も、ここまで強くなるとは想定していなかった。
必然、帝王側がこのことを知る理由はない。
せいぜい髪の色が変わったところを見て、シンボルを手に入れたという認識でしかないはず。
神薙に傷をつけるまでの存在になるなんて、思えない。
こんなことがありながらも、俺達はたくさん宇宙を破壊した。
多次元宇宙、高位次元宇宙、紐宇宙、etc
いっぱい作っていっぱい壊した。
「すっきりした」
「たまには、こういうのも悪くないかもしれないわね」
俺と真百合は、やるだけやってすっきりした。
「そうか。私はあまり精神的に変わりはないが」
「あなたみたいな存在が不感症な人間に、感情的な意見は求めていないわ」
早苗は常に正常なのでいつも通り。
「シュウは、どうだった?」
「まあ、ぼちぼちといったところだ」
正直、俺は新たに不安に思っていることがある。
シュウ、シンボルの使い方が下手になっている。
混沌回路の制御限界が下がってきている気がする。
まあでもシンボルだし、本人が大丈夫なら大丈夫だろ。
本当にやばそうだったら、俺が必ず何とかして見せる。
今はまだ、本人がそういうのならそれでいい。




