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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
9章 永劫に沈まぬ太陽
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倖せの唄



 倖せの唄ソングオブサチの能力は――――誰かを幸せにする能力です。


 元の能力が能力なので、戦闘に活かせるなんてことはありません。


 相も変わらずわたしは強くなく弱いまま。


「……どうした。何もしてこないのか」

「いえ、やります。やりますよ」


 こんな能力でどうやってこの場を切り抜けるか。


 いえ、切り抜け方は分かっているんです。


 誰かをわたしにしてしまえばいい。


 わたしが幸せになるにはここから切り抜けないといけないので、必然的に切り抜けられるって寸法です。


 ですが普通にやっても勝てません。


 そのうえで普通じゃない手段をとる必要があります。


「やるしかありませんか」


 これは禁じ手です。


 できれば本当にやりたくなかった。


「ファイティングポーズをとったか。まさか戦うという選択肢をとるとは……」


 ゆっくりとこぶしを握り顔の高さまであげたことによるコメントです。


 まさかそんなことしません。


 そんなまっとうなことしません。


 わたしがやることは



挿絵(By みてみん)



「萌え萌えきゅゅ~ん☆」


 全力で媚びることです。


「はっ?」


 呆気に取られていますが、ここで恥ずかしがってはいけません。


「お坊ちゃま。耳かきの時間です。さあさあこちらへどうぞ」

「……何をやっている」

「耳かきのサービスです。とっても気持ちいですよ♡」

「正座しながら言われても」

「それとも わたしの耳かきは嫌ですか……///」


 近くに誰もいなくてよかったです。

 こんな顔誰にも見せたくありません。


 ですのでこれ以上の挿絵はないのであしからず。


「そんな涙をためて乞われても困るのだが」

「お願いですぅ///」

「うぅぅ」


 女の涙が武器になる理由がわかりました。


 勃起して力が出ないからだ。


「ああもうわかった。1回1回だけだ!」


 くっそちょろ。


 絶対この神様童貞だ。


 わたしも処女なんであんまり神のこと笑えないんですが。


「さあお顔を拝借します」

「先に言っておくが、針で脳みそを指しても朕は死なんぞ」

「そんなお坊ちゃま。わたしがそんなことするわけないですよ」


 そんな暗殺者まがいのことは多幸福感ユーフォリアしかしません。


 倖せの唄ソングオブサチはそんなんじゃない。


「針が怖いようなので、先端が長いものは使いません。安心してください♡」

「棒を使わなければ耳かきなどできぬ」

「へーきですよ。見ててください」


 わたしは耳まで口を近づけ


「ふぅ~~///」

「――――っっっ♡///!!」

「あ、いまびくぅってしましたね。可愛いです♡」

「おい、まさかお前!」


 やっと気づきましたか。


「お耳フーフーしてあげますっ☆」


 死ぬほど気持ちいですよ。


 文字通り。


「や、やめろ?!」

「そんなこといっちゃって、身体は正直ですよ」

「おっ ぉぉぉお んほぉ」


 わたしが幸せになるため+ギフトで絶頂ものの幸福 を与えています。


 ヘロインとかカス扱いにできるほどの脳内物質が分泌されているでしょうね。


「ほら、おっきぃのでてきましたよ。ふきふきしましょうね」

「っっぬぅふう!!!!」


 これのいいことは、あまりにもしょうもないことです。


 こんな禄でもない行為に、防御や回避なんてするわけがない。


 普通に攻撃しようものなら、この神様に届くわけがありません。


 あほらしいからこそ、防がず交わさず攻撃できない。


「や、やめろ゛ぉお」

「快楽堕ちさせてあげますよ。ノクターンノベルズのように」


 舌で舐めながらささやいてあげます。


 ちなみに下半身を描写してしまうと本当にそっちに行かないといけなくなりますので、絶対に見ないようにしています。


 ふざけんなって意見もあるでしょう。


 じゃあ聞きます。


 萌え萌えお願いに断れて、お耳ふふぅ~に耐えられるって絶対に言えるキャラクターを知っていますか。


 いないでしょ?

 いたとしても即答で答えることはできなかったはずです。


 それが答えです。


 女の子が出て萌えを出している作品では、これに耐えることはできない。


 無論ここでも同じこと。


 何しろ一番強い神様が女の子なんです。

 一番えげつない神様が女なんです。


「くっ 」


 なんとか神様はわたしから離れることができます。


「あ、危なかった。本当にどうしようもない所まで堕ちるところだった」

「いえ、結構アウトでしたよ」


 男性がしていい声じゃなかった。

 女性としてもアウトですがね。


「だ、だが、もういい。油断したが定義しなおせばもうそれで……」

「できるものならやってみてください」


 上から潰すのは無理だって話はしっかりしたはずですよ。


「獄景ッ――!!】


 それがありましたね。

 純粋なデバフとバフ。


 神様が最後に頼る脳筋技です。


「これならば上から潰そうが、父上が介入することはない】


 でも問題ありません。


「何て定義しますか?」

「それは耳かきが効果がない……いや」


 その通り。

 別に耳かきじゃなくてもいい。


 足つぼマッサージでもいいですし、なんならどこからか用意したオムライスでラブ注入なんてやってもいいんです。


「こんなあほなことをいちいち定義しなおしますか?」

「だったらギフトそのものを……】

「あなたのシンボルごときで、ギフトが利かないなんてできるわけないでしょ」


 だってこれは、神薙信一の能力ですよ。

 強弱があり、中にはできるものもあるでしょうが、ギフト全部を無効にするなんてそれこそギフトにしかできないでしょ。


 神薙信一に勝つ。


 人間や神様は定義できない、絶対矛盾の論理。


 無論定義できない以上、シンボルで実現することはできません。


「ならば貴様のギフトだけを効かぬと……】

「それは……お互いに困るでしょ」


 発言の途中で気づいたようですが、補足として説明してあげます。


「わたしのギフトは幸せにすること。これを効かないって定義する意味を少し考えればわかるはずです」


 このギフトはデバフ技ではありません。

 敵にも味方にもバフをかけます。


 良くならないと定義するわけです。


「自分が幸せにならないって定義すればいい。そうすればわたしには勝てるでしょうが……そのあとどうなるんでしょうね」


 当たり前ですが、この神様のシンボルは実質無敵。

 だからこそ、自分に使う場合は細心の注意が必要となる。


「自分が幸せにならないって定義するなんて、わたし以上の自殺志願者ですね」


 とはいえ生き残るが最大の目的のわたしからすれば、それが最悪の選択肢です。


 ですので、全力にそうならないよう説得します。


「あなたわたしごときと心中するって分かってます?」

「おのれ……】

「くそ雑魚ですよ。わたし本当に弱いんですよ。そんなのと心中するって、心中察します」


 しまった。

 うっかり煽ってしまいました。


 わざとじゃないんで許してください。


「おーー】


 だめですって。そんな煽られた状態で攻撃なんかしちゃ。


 それでわたしを殺してしまったら一生敗北者の烙印を押されてしまいます。


 そんなのは不幸です。


 だから時間が100億回止めることが出来るような無限速度で攻撃してきても、わたしがなんとかしないといけません。





 わたしがもっと幸せにしてあげる。





「もう一回、すりゅ?」


「すりゅううううううううううううう!!】




すんげえ疲れた

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