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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
8章 人という名の
243/353

悪魔と神とやべーやつ sideA




「え? つまり早苗がモンスターを3キルしたってこと」

「最初からそう言っておるぞ」


 しかも話を聞く感じギフトを当てれば勝ちらしい。

 確かに今振り返ってみるとギフトに警戒していたし、遍在されていたので即死とはいかなかったが、効果そのものは覿面だった。


「私ですら3体倒したのだ。一樹は幾つ倒したのだ?」


 い、いえねえ。

 限りなく負けに近い戦いをしていたなんて……


「まあね。正直数は数えていないな」

「流石は一樹といったところか」


 むしろさすがは早苗と言いたい。

 こんな簡単に騙されてくれるなんて何て騙し甲斐のない女なんだ。


 逆に騙されることがなさそうな女である真百合はというと


「一度ドツボにはまるとなかなか抜け出せないものね。仕方ないと思うわ」


 めっちゃフォローしてくれました。


「ところで常葉さんだっけ? 仲良くなったんですか」

「はい。よろしくお願いいたします」(ちゅーしたい 煮込んで出汁の見たい)


 なんだろう。

 絶対に近づいてはいけない気がする。


【な、なんだ……これは…… あ、あり得ぬ………いったい何がどうしたというのだ……?】


 しまった。

 この神様は空間跳躍が得意であるといっていた。


 当然簡単にこの世界に戻ってくることも可能。


「一樹、あの羽虫は一樹が相手をしていたモンスターではないのか?」


 し、しまった。

 早苗は俺があれを退治したと思い、俺もそのつもりで話をした。


 考えろ。何かいい言い訳はないか。


「そうなんだけどさ。羽虫ってことは百匹千匹といるだろ。それらをすべて相手していよいよ最後の一匹になった時、早苗が呼び戻してしまったから、とどめを刺すことは出来なかったんだよな」

「そ、そうなのか。それは申し訳ないことをしてしまった」


 完璧だぁ。


「だが一樹。私は何匹も一度に相手できるのだぞ」


 さっき自分の能力の使い方を知ったくせに偉そうにしてむかつく。


「なんなら私が倒してやってもいいぞ」


 う、うぜえ。


「いや。いいって。ギフトが効くって知っていたら、俺もやりようはあるし」


 禁じ手を使えば間違いなくこの神を倒せる。

 あとはどう使うかだ。


【そこの女ぁ!! 何があったか言えぇえええ!!】


 視線の先にはアイドルの常葉さんが。


 まずいな。


 全能よりもギフトの方が上と言っても、それは能力としての話。


 何でもできるということに変わりはない。


 対抗手段がなければやられてしまう。


「ふ、ふふふ」


 しかし狙われた女は笑いをこらえるのに必死で


「あっはははっああ」


 終ぞこらえきれなくなる。


「なるほど、あのお方の気持ちがほんの少しですが感じ取ることが出来ました。何の価値も持たない羽虫のような神と思っていましたが、こんな使い方があるんですね」


 な、なんだこいつ。


 嫌な予感がする。


 自分ではどうすることもできない化け物が、いよいよ檻を食い破ろうとする、そんな予感。


「おい、カス。わたしに名乗る名誉を与えてやる。さっさと名乗れ」


 アイドルをやっていたころのもの静かだった雰囲気は最早感じられない。


【貴様ぁあああ! われが誰か知った上での態度かぁあああ………あぽ?】


 俺はその神がどんな間抜けな表情をしているのか、見るべきだったんだろう。


 だがそれは叶わなかった。


 常葉に視線を外すこと、そんな愚かなことをこの場で出来る勇気がなかったからだ。


「……」


 常葉は何も言わない。


 それだけなのにこの場をすでに支配していた。


【わ、われは神――無限にある宇宙を、そして無限に分岐する並行世界を統べるもの】


 この神に威厳というものはない。

 そしてそれを気にする人はいない。


「おかしいですよね」

「な、何がだ」

「少ないと思いませんか。世界がそんなに小さいわけがないんですよ」


 それくらい。

 無限の宇宙、無限の可能性。


 それを少ないといった。


「この世界の大きさについてわたしが今語るべきではないでしょう。だから旧世界の大きさをあなたたちに教えてあげましょう」


 旧世界?

 それにこの世界とはなんだ。


「無限の宇宙と並行世界、それが最下位の神が統べることのできる平均です」


 他にも同じようにいる。

 それはいい。


 早苗に退治されたが、同じように、いやそれ以上にモンスターだって世界を持っていたはずだ。


「ですが世界の大きさは神を管理する存在が必要になりました。所謂大神とか至高神とかそんな連中です」


 神の上の神。

 そんな存在がいるとでもいうのか。


「もちろんその神の強さは彼らから見て絶大です。支配下の生物がいくら集まっても神に届かないように、神々が集まっても主神には届きません」


 広義的な人と神の差が、同じ比率として神と主神の差になっているとでもいいたいらしい。


「それで終わり……なわけないですよね。いくらその主神が無限をこえる神を支配しようが、旧世界の基盤が大きすぎて、その主神の数ですら、無限を超えてしまう。だから再び同じように、主神達の神が存在し、それを一応、三段神と呼んでいます。賢いあなたたちならこの意味が分かりますよね」


 それは多分俺ではなく真百合に言ったんだろう。


「ちなみに今あのお方がお戯れになっている神が三段神のつもりです」

【まさかあなたさまはそれ以上とでもいうつもりなのか!!】


 三という数字が出た以上四や五もある。

 神の考えは尤もなものだが、常葉さんは完全に無視している。


 下位の存在など、一切気にしてはいない。


 だがその問いかけは俺も気になっている。


「あれが聞いたことと同じ事聞いてもいいですか」

「ええ。もちろんです」


 快く答えてくれた。


「それ以上ということに間違いはありません。ですがそれで終わりということもありません」


 神の上の神の上の神


 さらにその先。


「無論基盤世界はその程度で収まる器ではありません。更にその上の神様がいて、更に更にその上の神様がいます」


 最早人の身では想像すらできない領域。


 そのはるか先に


「神の上の神、この言葉を――――1058回繰り返した神様が、わたし」


 この女神がいるという。


「「「【……】」」」


 誰も何も言えなかった。


「申し遅れました。今更ですが名乗らせていただきます。わたしの名はトコハ。旧世界 10(ト) 5(コ) 8(ハ)段に住み着いている、それなりに強い神をやってます。どうかよろしくお願いします」


 スカートの裾をつかみ、上品にお辞儀をする女神は、それだけで遥か高みに君臨するという発言を真実だと認識させた。


 それが理解できなかった無能は一人。


 否


【あ、あり得ぬ。そんなこと……われは知らぬ! 認めぬ……認めぬぞぉぉぉぉおぉおお!!!!】


 たった一匹。


「神なんて自分たちが一番上だと思い込まないとやっていけないブラックですよ。上が一つか二つならともかく、千もあるなんて知ったらやってられないでしょ。意図的に疑わないように洗脳しています」


 全知だからこそ、全てを知っていると定義づけられているからこそ


「手前らカスは、なにも出来ねえし何も知らねえ。大人しく消耗されて逝ね」


 自分が無知であることに気づくことが出来ない。


 無知の知とは人にではない。神に向けて作られた言葉なんだ。


「信じては、くれませんか」


 神に言った言葉ではない。

 俺達に送った言葉だ。


 半分半分といったところ。


 この方が遥か高みに君臨する、それは間違いない。

 だが =その発言が真実 であるとは限らない。


 俺達の常識が否と言っている。


「仕方ありませんね。でしたらわたしの真の姿を見せる許可をいただけませんか」


 ここでNOと言えれば大人しく引き下がってくれただろう。

 だが、誰もその言葉が言えず


 俺達は黙って頷くしかない。


「失礼します」


 女神は自分が身に着けていた服を脱ぎ始め、この寒い中上半身裸になる。


「ああ、いま……生まれます……」


 背中をまるめ、そこから『羽』が生まれだす。


「あっ ああ ぁ あ あ」


 鳥の羽が生まれ 蝙蝠の羽が生まれ

 虫の羽が生まれ 胡蝶の羽が生まれ

 光の羽が生まれ 暗黒の羽が生まれ

 眼の羽が生まれ 臓物の羽が生まれ

 骨の羽が生まれ 触手の羽が生まれ

 古の羽が生まれ 未来の羽が生まれ

 草の羽が生まれ 機械の羽が生まれ

 針の羽が生まれ 歯車の羽が生まれ

 血の羽が生まれ 脳髄の羽が生まれ

 手の羽が生まれ 性器の羽が生まれ


 鳥の羽が生まれ 蝙蝠の羽が生まれ

 虫の羽が生まれ 胡蝶の羽が生まれ

 光の羽が生まれ 暗黒の羽が生まれ

 眼の羽が生まれ 臓物の羽が生まれ

 骨の羽が生まれ 触手の羽が生まれ

 古の羽が生まれ 未来の羽が生まれ

 草の羽が生まれ 機械の羽が生まれ

 針の羽が生まれ 歯車の羽が生まれ

 血の羽が生まれ 脳髄の羽が生まれ

 手の羽が生まれ 性器の羽が生まれ


 鳥の羽が生まれ 蝙蝠の羽が生まれ

 虫の羽が生まれ 胡蝶の羽が生まれ

 光の羽が生まれ 暗黒の羽が生まれ

 眼の羽が生まれ 臓物の羽が生まれ

 骨の羽が生まれ 触手の羽が生まれ

 古の羽が生まれ 未来の羽が生まれ

 草の羽が生まれ 機械の羽が生まれ

 針の羽が生まれ 歯車の羽が生まれ

 血の羽が生まれ 脳髄の羽が生まれ

 手の羽が生まれ 性器の羽が生まれ




 全の羽が生まれ 虚無の羽が生まれ




 その方は真の姿にお生まれなさった。




「随分長くお待たせいたしました」


 閉経したときにはもう何も言葉を持つことが出来なかった。


 それを言葉にすれば何になるだろう。

 多分一言で表すことは出来ないが、それでも無理やり表すのなら



 混沌の神秘


 究極のアンシンメトリー


 一枚一枚が世界を容易く崩壊させるであると確信させる、美しく気高くそして死を孕んだ翼。


 筋力があり、重力があり、霊力があり、神通力があり、精神力があり、魔力があり、超能力があり、創造力がある。


 だが、密度が異質。


 なぜこれで存在できるのかが分からない。


 俺達とこの女神では、存在の在り方が異なっていた。


 勝てる勝てない、そんな愚かな考えは持てなくなった。

 いかに敬うか、それほどまで俺達の目はこの女神にくぎ付けになる。


【あ……うぅあ ぐず っ あ ぎぃぃ ひぃ】


 次いで、神は発狂した。

 だがその神に対して無様何て思うことなかれ。


 これがホンモノ


 まがい物の神の翼が朽ちていく。

 存在の重さに耐えきれない。


 同じ空間に存在することすら罪


 滅びをもってしか償う術はない。


「結構気に入っていいるんです。もっと褒めてもいいんですよ」


 ただただ楽しそうに無邪気に笑う。


「い、一樹……あれは本当に神なのか?」


 早苗がついに神であると認識を始めた。


「3つこの場で言わないといけないことがあります」


 トコハ様は早苗の前に転移する。


「1つ、一般人が神を神と認識できなかった理由ですが、あなたたち二人が強いからこそ、雑魚を見えてしまったことが理由です。間違っても格が違いすぎて認識できないという羽虫の言うことを真に受けないでください」


 俺達が弱いからではなく、神たちが弱いから人間に認識してもらえなかった。


 アリでようやく俺に認識してもらえた。


 真百合は微生物すら認識した。


「2つ、これは自分で言うことは大変心苦しいんです」


 偉大なる女神様は早苗の手を優しくお握りなられる。


 鬼人化してあった爪が、その麗しう左手の甲を引っ掻く。


「う ぐ ぅ」


 その左手がぐちゅぐちゅと音を立て融解を始め、瞬く間に左腕がぽとりと地面に墜ちる。


 それだけであの男の悪意は終わらない。


 肩から顔やお腹に伝染を初め、左半分が喪失。


 いよいよ右目すら失いかける、そこまできてやっと進行が止まった。


「御覧になった通りです……あん 見ての通りこの状態でもギフトは有効。勝ち目がないなんてそんなこと思ってはいけません んぅぅぅぅぅ」


 勝ち負けの先にいる存在が、俺達なんかに殺される可能性がある。

 地面にのたうち回る高貴な方を拝見しながら最後の言葉を待つ。


「3つ、ある意味これが一番重要です」


 這いつくばりながら、泥にまみれながら

 汗をにじませ血を吐き散らしながら



 それでもニタリニタリと粘着的な笑みを浮かべ



新世界カンナギサマはぁ 旧世界程度こんなものでは ありません   」



インフレはまだ終わらない

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