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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
8章 人という名の
225/353

絶対防御を貫いて sideAB

クソみたいに忙しいです(現在進行形)

スコ速さんありがとう






「まずいなこれ」


 シュウがピンチだ。


 シュウが傷つくのも見たくはないが、同時に俺以外の奴に負けるのも見たくない。


 どうしようか。


 いや、やることは決まっている。


 シュウに勝たせるために何をするか。


 俺にできることは考えること。


「困った。月夜さん真百合、ヘルプ」


 しかし思いつかなかった。

 今は質と速度の両方が優先されるため、恥を忍んで我らの頭脳集に頼る。


「パスです。正直に言わせてもらえば今回の一件はわたしたち負けた方がいいでしょ」


 多幸福感ユーフォリアは最大多数の幸福を目的としたギフト。


 こうしたアウェーでは役に立たない。


 セルフ戦力外通告。


「真百合。どうすればいい?」


 いい加減マユえもんというあだ名がつきそうで申し訳ない。


「……正攻法で時雨君がとるべき行動は、リングアウトを狙うのがベスト」

「いやこっちが場外になりそうで困っているのだぞ」

「だったらフィールドに干渉すればいいじゃない」


 理解に少し時間がかかったが何を言いたいのか分かった。


「フィールドそのものを攻撃してずらせばいいのか」


 相手の歩みは遅い。

 だからフィールドを移動すれば、追いつけず勝手に場外になる。


 なるほど。


「ただこれにはいくつか問題があって」

「問題?」

「まずそれを審判が許すかどうかというと微妙なところ。本来のルールならばセーフなのだけれど、審判が帝国サイドに有利な判定を下して反則負けにする可能性があるわ」


 ルールはあくまで人が決めるもの。

 本に載っている通りに動いても、意味がないわけか。


「それに彼らの妨害だってあり得るわ」


 真百合の視線の先には、九曜白夜を始めた参加者たちが。


「いや妨害は反則だろ」


 いくら何でもそこまで露骨に有利な判定はしないだろう。


「そうね。でもフィールドを変えるってことは地盤を破壊するということ。それはここにいる人間そのものの攻撃になるとは思わないかしら」


 いやあ。

 超悦者スタイリストの場合モブキャラが慌てふためくことはあっても、死ぬことはないんじゃないかなって。


 それも判断するのは一般の審判か。


「結果的に妨害に繋がるけれど、それが反則になるとは思えないわ。だって自分の身を守る権利は実力主義の帝国であろうと保障されているもの」


 当たり前だが、こんなお遊びより法の方が絶対的に上。


 我が社では残業代を払わないという規約があっても、画像投稿サイトで引用が禁止と明示しても、法が認めている権利をはく奪することは出来ない。


 残業代は払わなくてはいけないし、勉学の使用なら引用先を明記した上なら使ってもよい。


「だから例外的に妨害は許されると思うわ。そうするとこの作戦はうまくいくかどうかは……難しいでしょうね」

「だったら俺達が援護すれば」

「それは援護行為として明確に禁止されているわね」


 なんということだ。

 くそったれめ。


「ファアアアアアアアアアアアク」

「come on」


 真百合って実は英語が出来なかったりするのか。


 フ●ックの後でその挑発はいろいろまずいんじゃなかろうか。


「何か他にないのか?」

「あるにはあるのだけれど、これも確実にうまくいくとは限らないわ」

「それってどんな方法なんだ?」

「結城海を倒す」


 ……?


「いやムリだろ。あの絶対防御は本物の『法則』でどんな攻撃だって防がれてしまう」

「そうね。攻撃ならね」

「?」

「嘉神君。よく見てよく考えればあなたもきっと気づくはず」


 言われた通り結城海を観察する。


 黒光りするバリアで覆われているが、別段特に特筆することはないような。

 普通にいるのと同じだ。


 ん? 同じ?


「そっか。だからあいつは動けないんだ」


 絶対防御の弱点に気づいてしまった。


「しかもこれシュウだから取れる戦術か」


 俺だったら無理だ。

 シュウにしかできない勝ち筋。


「そうと分かれば善は急げだけど、このことをどうやってシュウに伝えようか」


 答えをそのまま教えると対策されてしまう可能性があるしな。


「応援する時にいくつかのフレーズを込めるのはどうかしら?」

「いいなそれ。じゃあ早苗。俺が今から教えるフレーズで一字一句違わずシュウを応援しろよな」


 早苗に教えること30秒


 先頭は俺から。


「栄光はお前にあるぞ!」


 次に真百合


「外道五輪の重みを教えてあげなさい」


 続いて早苗。


「時雨の前にいる意味を教育してやるのだ!」


 最後に月夜さんが


「あなたは一人じゃないんです」


 締めに全員で


「「時雨なら勝てる!!」」





**************



「栄光はお前にあるぞ!」

「外道五輪の重みを教えてあげなさい」

「時雨の前にいる意味を教育してやるのだ!」

「あなたは一人じゃないんです」


 いつき達が応援している。


 そしてそれが何か意味を含んでいることも分かる。


 きっとこの手づまりな状況を打破してくれる案が思いついた。


 それを何とかして伝えようとしている。


 だがその意味が全く分からねえ。


「「時雨なら勝てる!!」」


 おれならできるってことはシンボルをうまく使えってこと。


 ……いや分かんねえし。


 多分これあれだろ? 過去の姿に変身した支倉ゲノムと戦った時みたいに、奇麗な一手があるんだろ?


 頭脳戦闘はいつきや宝瀬さんがやるんであって、おれや衣川みたいなのは何も考えず突っ込むのが性に合っている。


 でもそうはいっていられねえのも目の前の状況を見れば分かる。


 苦手分野に全力で取り組まないけねえ。


 これまで通りにバリアが大きくなっていくとなると、フィールド全てを覆うのに30秒、猶予の30秒を足しておれに残された時間は1分。


 それまでに何かいい方法を

 とりあえず身体を動かして考えようか。


 ひとまずいつも通りに雷を槍にして……


 いつきは首を横に振った。


 これじゃない?


 だったら球?


 手をクロスさせばってんのポーズ。


 これでもない。


 だいたいおれの攻撃方法はこの2つ。

 たまに鎌を使うのだが、それでもないらしい。


 本当になんだ?


「こうなったらモールス信号で伝えるしか。頼んだ真百合」

「えっと……時雨君理解できるの?」


 できません。無学ですみません。


 つうかいつきだって知らねえだろうよ。


 そもそも高校生でモールス信号を把握する人間なんてごく少数のはずだ。


「ツーツーツーカー、ツーツーツーカー」

「嘉神さんそれモールス信号でもなんでもなくただの伴奏です」

「…………ツーツーツーカー↑↑ツーツーツーカー↑↑」


 え?


「意外と音痴なのだな。真百合」


 完璧超人だと思っていたので意外な一面だった。


「ワザとに決まっているでしょ。気づきなさいよ」

「ああ、そういうことですか。わざと2オクターブ外してうたったんですね」

「そうよ。気づきなさいよ早苗」

「また私だけ分からない奴か。一樹真百合はいったい何を言いたいんだ」


 そしておれも気づかないので結局聞く羽目になる。


「あーね。うん、それね。分かるよ。分かってる。だからちょっと説明するのに時間をだな。ね」


 あ、こいつ分かってねえ。


「簡単なことですよ。ツーツーツーカーは何の演奏ですか」

「そりゃベートーヴェンの『運命』……ああ」


 おれも同時に理解する。


「天才かよ真百合」

 天才かよ宝瀬先輩。


 これはいつでも応用が利く。

 一つ音程を下げれば『時間』3つ音程を上げれば『物語』、そして今回は2つ挙げたので『法則』、つまり『法則』に関わる何かをやれということ。


 新しい伝授法を今この瞬間に見出した。


 普通に話した方が早い時もあるだろうが、こういった相手がいて情報を渡したくない時はとても有効ってわけだ。


 見てみろ。帝国の奴らこっちが何をやっているのか全くわかっちゃいねえ。


「それでその続きはどうするんですか?」

「さあ真百合、いざ頼む」

「いやよ。恥ずかしい」


 意図が分からなかったこっちが悪かったんだが……傍から聞くとただいきなり音程を外し歌い始めた風にしか見えなかったし気持ちは分かる。


「仕方ありません。みんなでやりましょう。赤信号みんなで渡れば怖くないってやつです」

「それで何を歌うわけか?」


 なんか話が大分ずれてきてねえか?


「ラララーラララーララララーラーラララーラーラー」


 えっと……聞いたことある。

 なんだっけ。


 ジュピターだったか?


「字面にしたらさっぱり分かんないですね」

「そもそも音程これであってたっけ?」


 ……そろそろバリアの体積がフィールド全体を覆いかけているので、早くしてほしい。


「今更だけど念話を誰か使えないのか?」

超悦者スタイリストで傍受されるだろ」

「そうか。一樹なら何か『時間』の能力で念話か何かを出来ると思ったのだが」

「……できらぁ!」


 え? できるのならさっきまでの会話は何だよ。


「ちょっと待ってて。1分かかる。シュウ頑張って耐えてくれ」


 そういうといつきはどこかに消えていった。


「話は終わった? もういいよね。僕頑張ったよね。じゃあ我慢しなくて開放してもいいよね」


 少しバリアが広がる速度が上がった。


 なんとか土俵のぎりぎりに立つ。

 土俵すらバリアで包まれたら、電磁波を利用し空中に浮く。


 ルール上は土俵から5mまでは、フィールドだとあったためこれでもまだ場外判定を受けない。


 しかし状況はぎりぎり。

 もう猶予の距離はない。


 もはや一手で逆転するしか方法はないが。


「あー」


 いつきから言伝を受け取った瞬間状況は一転した。


 言われたら納得する。

 絶対防御の破り方。


 どんな攻撃でも封じ込める絶対的バリア。

 穴一つないとすら思っていたが、なんと無数に穴があった。


 確かにこれは俺が適任。

 おれ以外には厳しい。


混沌回路カオスチャンネル


 決着は


「あああ  ぁぁぁ?」


 あっけなくついた。


 そして今度こそ


「っしゃああああ」


 天高く拳を掲げ、カチドキをあげてやった。




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