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チート戦線、異常あり。  作者: いちてる
7章 前編 サマーバケーション
119/353

清算 3

今ストックが2つあるといって信じる人何人いるんでしょうか。

多分書く前の私なら絶対に信じていません。

 10分後。


 何があったのか知らない。


 雲一つない青空を無心で眺めていた。


「お前がここに来た理由は分かっている。俺が穿いている褌なら残念ながらやらないぜ。どうしても欲しければ俺を倒してでも奪い取るんだな」

「まだ呆ける気か」

「あたぼうよ。俺が真面目に話をすると思うか」


 いやしろよと心の中でツッコミを入れるが神薙さんが真面目になったらどうなるのか考える。


『急げ、15秒だけ時間を稼いでやる』

『馬鹿な。早すぎるぜ!?』

『よくぞここまで這い上がってきた。我こそは第六天魔王』


「……ギャグかな?」

「だろう?」


 結局こいつはまじめにやろうがやるまいがギャグになってしまうのか。


「まあいいや、神薙さん。今日はあなたにお願いがあってきました」

「いいぜ」

「早っ?」


 まだ何も言っていない……というツッコミはもはや無粋だろう。


「ただし、俺にも条件がある」

「なんですか? お金ならありませんよ」

「金なんて要らん。自給自足ですべて賄える」


 だったら何を条件として出すつもりだ。


「草でも糞でも何でもいいぜ。お前が衣川早苗の腕の治療、並びその意識の回復させるため俺に一体何をくれる? お前にとって衣川早苗の価値はなんだ。それに見合うものを寄越せ」

「…………」

「十秒だけ考える時間をやる」

「そんなにいらん。俺の全てだ。俺だけで終わるすべて。意思も腕も命も全てあんたにくれてやる。だから、早苗を助け……助けてください」


 90°頭を下げる。


 早苗だけは絶対に助けなければ。


「顔を上げろ」

「嫌です。貴方が承諾したというまで俺はここから動きません」

「承諾はしない。お前の命なんていらん」

「これ以上は無理です。他所様に迷惑をかけないギリギリは、ここまでしかありません」

「ではこの取引は、ご破算だ」


 …………!!


「待って――――」

「取引はご破算だが――――腕は治してやったぜ」

「は?」


 顔を上げる。


 神薙さんは高圧的に笑っていた。


「腕だけ治した。1か月すれば意識も回復するだろう」

「でも……」

「すぐに意識を回復しないことに不満があるか?」

「いや……そうじゃなくてさっき交渉は失敗だって」

「交渉は失敗だが、別に治してあげないとは言ってないだろ」

「何のために……?」

「善意だよ。善意」


 この男から善意と言う言葉を聞くとは。


 明日は宇宙人でも降ってくるのか?


「お望みなら両腕壊死させてもいいんだぜ」

「ごめんなさい」

「分かればいい。ネタ晴らしをするが、あれはお前の覚悟を見るための一種の脅しだ。よほどひどい回答ではない限り、治療してやるつもりだったぜ」


 もしかして本当に善意?


「お前は俺を何だと思っているんだ」

「血の通った災厄」


 デコピンされた。


 空中で4回転して着水。


「俺は災厄でもないし、血液ではなく精液が流れている」

「え?」

「見るか」


 そう言って自分の手首を引き千切る。


 すると確かに赤い液体ではなく白のヌメプリッとした液体が大量に流れだした。


 映像化なんてできっこない。


「つまり俺にビンタされるという事は、おち○ち○でビンタされるのと同義だと思え」

「ギャッァー」


 今度は自分から池に飛び込んだ。


「I am the bone of my penis.

Sperm is my body, and――――」

「おい馬鹿止めろ。前パロが原因でとらぶったの忘れたか!?」

「別に俺が怒られたわけじゃないし」


 やっぱこいつ最低だ。


「現在衣川早苗は病院のベッドの上で健やかに睡眠をしているわけだが、叩き起こしたくはないか?」

「そんなことして大丈夫なんですか?」

「安心していいぜ。何があっても起きないし死なない。なぜなら俺が腕を治した時点で本当は意識も回復させたが、その後、再び俺が異能の力を使って眠らせたからだ」


 やっぱこいつ糞。


「きっちり一か月すれば目が覚めるよう調整したから、安心していいぜ。それが嫌なら俺が出す条件を呑め」


 逆に考えろ。最初から俺はある程度の条件なら呑むつもりでここに来た。

 それが前払いから後払いに変わっただけ。そう考えればこの状況は数段マシだ。


「とある男と戦え。そしてその男から『まいった』と言わせろ」

「それだけ?」

「お前今まで相手を生かす目的で戦ったことないだろ」


 確かにそう言われれば、大体オレは相手を殺して戦ってきた。


 言わせるってことは殺すことは勿論気絶させてもいけないわけか。


「だがそれでも十分。その条件のもう。俺が戦うのは誰だ?」

「答える必要はない。3秒待て」


 神薙さんが言った通りぴったし3秒後、人影が現れた。


「ん? 嘉神じゃねえか」

「時雨!?」


 時雨驟雨?


 何でここに……!?


 まさか!!


「おい神薙ッ!! お前時雨に何をした!!」

「調教もとい超強化。今のこいつをお前が思っている時雨驟雨だと同一視すると痛い目に合うぜ。そしてもう一つ。お前が思っていることを俺はしてないぜ。愚妹と違って俺は双方の合意の上でやっている」


 信じられるか。


 こいつはどうやったか知らないが時雨を誑かし自分の思う通りの操り人形にしたに決まってる。


「師匠。おれ状況把握できねえっすけど何かあったんすか?」

「これからお前が嘉神一樹と戦い、お前が『まいった』と言わない限り衣川早苗は目覚めないっていう取引をした」


 それを聞いて時雨は苦笑い。


「嘉神、戦おう」

「そうだな。そうだ。簡単なことだ。戦おう、ただし時雨、すぐにまいったと言え」

「……それは出来ない」


!?!?!?


「時雨!? 今早苗がどういう状況か分かっているだろ!?」

「分かってる。この一か月衣川は一度も目覚めていない」


 分かっているならこの後どうするべきか、その解は一択のはずなのに……


「嘉神、お前の言う通りおれは今すぐにでも『まいっ……』降参するのが正しい選択だろうよ。そうすればおれたちの関係も崩さず誰も傷つかない」

「そう、その通りだ。分かってるなら」

「そうわかったうえでおれはお前に言いたい。お前と戦いたいと」

「……………」


「この機会だからおれが嘉神に思っていること、全部言ってやる。お前が羨ましい。お前が妬ましい。そして何よりお前に勝ちたい」


 昔から時雨は戦闘狂らしき素質があった。


 強い奴と戦いたいと思うのはこいつらしいというしかあるまい。


「分かった。だがそれはお前が『まいった』と言った後だ」


 物事には優先順位というモノがある。


 それに先延ばしすれば戦わずに済む。


「断る。師匠が用意してくれたこの機会を逃せばおれはいつお前と戦える? 敵に容赦がない分仲間には滅法甘い。甘ったるいと言った方がいい。そんなお前はおれがいくら頼んだところで戦ってすらくれないだろう?」

「…………」


 ばれてるし。


「別にそれが悪いなんて言ってない。むしろそれの方が正しいんだろう。間違えているのは戦いたいなんて言っているおれの方だ」

「そうだ。戦いなんて野蛮だ。前時代的すぎる」


 なんの為の言葉だと思っている。


「それでも、間違いでもいい。馬鹿でも阿呆でもなんでもいい。ここで戦う事すら逃げたらおれはそれ以下の存在になってしまう。たとえ仕組まれたものだとしても逃げるわけにはいかない。これはおれがおれであるために絶対にやらないといけないことなんだ!!」


 意志は固いか。


 ならば使いたくはなかったがこの手を使うしかない。


 力の差を見せつけて戦意をそごう。


「時雨、お前は知らないと思うが俺のギフトは――――」

「口映し(マウストゥマウス)、『物語』のギフト……だろ?」

「――――!?」


 何で知ってる!? そう問いたかったが問う前に答えを見つけた。


 さっき時雨は神薙のことを師匠と呼んでいた。


 かなり親しい間柄になったと推測できる。

 ならばあいつから聞いた可能性が高い。


「だったら柳動体フローイングも知っているのか?」

「なんだっけかそれ」


 知らないのか?


「異能の力を吸収する、お前の雷電の球ライジングボールの天敵だ」


 これがある限り時雨は俺に傷一つ負わせることはできない。


「それか。思い出した。聞いたことある」

「知ってたのか。だったら――」

「でもそれは『論外』だろ? 格すら与えられなかった有象無象のギフトじゃないか」

「!?!?」


 ハッタリか? だが時雨にそんな芸当出来るとは思えない。

 そして嘘をついているようにも見えない。


 これは本気でそう言っている目だ。


「嘉神は強くなったつもりだろ? だがそれはお前だけじゃないんだ」

「……おっけ。これ以上議論するのも時間の無駄だ。戦おう」


 早くこいつに『まいった』と言わせる。


 それが早苗のそして時雨の目を覚ますための最善の行動だ。


「ごめんな、そしてありがとう。おれの我が儘を聞いてくれて。お前と戦いたいが敵対したいわけじゃないんだ。もしこれが終わったらさ、友だちとして一緒に飯食いに行こうぜ」

「早苗の見舞いが先だ。それが終わったらな。あと俺金無いから高いところ勘弁な」


 覚悟を決めよう。


 俺は今から時雨と戦う。


 その事実で胸が締め付けられそうになる。


「了解。それでもしもまだお互いが笑いあえる関係だったなら、そん時お前のこと『いつき』って呼んでいいか?」

「構わない。俺は驟雨って言いにくいから、シュウって呼ぶからな」

「ああ。それで頼む」


 お互いに距離をとる。


「戦う前にそんなこと言って大丈夫か」

「いいんだよ。だってさ、これはおれが嘉神に挑んだ最初の戦いなんだ。後悔しない様に想いも能力も全部出しきるつもりでいるから」


 時雨は本気だ。


 全力で俺と戦いに来ている。


 だから俺も全力で――――


「行くぞ嘉神!! その背中、追い抜かせてもらう!!」

「かかっておいで。俺も全力で撫でるから」




どっちが主人公なんでしょうねえ。


あと神薙さんの弱点に『全身が性感帯』が追加されました。

この調子でどんどん弱点が増えていきます。やったね(遠い目


 そう言えばエルフ娘が「いやん、耳は敏感なの~」という展開がありますがあれってつまり人間で例えるなら乳首露出しながら外歩いているってことですよね。

 馬鹿じゃないんでしょうか。

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