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114、誾千代は夢をみる~歴史~
誾千代の夢。
戦国時代を駆け抜けた、おんな城主そして西国無双立花宗次が妻、誾千代は薄れゆく意識の中、懐かしい夢をみていた。
大好きだった父道雪に抱きかかえられた幼き日。
父の思いを受け継ぎ、おんな城主となった日。
城主の座を剥奪され、不承不承ながら、宗茂と結ばれたこと。
夫、宗茂とともに戦場を戦い抜いた日々。
夫が天下人に認められ柳川の大名となったこと。
多くの戦で心を痛めた。
西軍につく夫を止められなかったこと。
心が潰れそるほど悔しい思いをした柳川城の開城。
穏やかで、ちょっとだけ物足りない熊本での生活。
「ふふ」
誾千代は思わず笑った。
そっと目を開け、じーっと天井を見つめる。
(これはよい。幸せな日々じゃった)
多幸感が誾千代を包む。
秋空天高く舞うアオサギが鳴いた。
天高く。




