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第96話 デート準備

レビューを一件いただきました、本当にありがとうございます!


それと、短いですが4章最後に愛梨視点を追加しています。

「湊さん、デートに行きませんか?」


 文化祭から一週間経ち、湊の周囲が落ち着いてきた週末。いつかのように愛梨がお願いをしてきた。


「行くのは構わないし、むしろ望むところなんだが、何か必要な物ってあったっけ?」


 いくら恋人になったからといって、愛梨をあちこち連れ回したくは無い。視線が多かったり人が大勢居る場所は二人共好きではないのだから。

 それなのに一緒に出掛けたいという事は、何か買いたい物があるのだろうか。もしくは、単に遊びに行きたいのかもしれない。

 今まではそんな素振りを見せなかったが、内心ではそう思っていた可能性がある。

 とりあえず生活必需品かと尋ねてみると(うなず)かれたので、合っていたらしい。


「服ですね。もう秋ですし、肌寒くなってきましたから新しい物を買おうかと」

「なるほど、じゃあ行くか」

「はい」


 愛梨の服は前まで持っていた最低限のものと、ここに住むようになってから買った夏用の服だけだ。

 であれば秋や冬用の服を欲しがるのも納得だし、断る理由も無い。

 承諾(しょうだく)すると愛梨は早速準備をし始めたので、湊もそれに(なら)う。

 あまり外に出るつもりが無いとはいえ、初めてのデートだと思うと胸が弾んだ。


「では湊さん、着けてください」

「もちろんだ。けど――ああそうか、それも着けて良いんだっけ」


 互いに黙々と準備をしていたが、前の時と同じく愛梨がアクセサリーを着けさせてくれとお願いしてきた。

 その手にはヘアピンだけでなく、リングネックレスもある。

 一瞬これは着けられないのではと考えたものの、もはや何の問題も無いと思いなおした。

 湊の呟きに愛梨が嬉しそうにはにかむ。


「そうですよ。もうこれを着けても誰も文句は言えません。だって私は貴方の彼女なんですから」

「だな、じゃあ失礼するぞ」

「はい、お願いしますね」


 まずは最近湊が手入れしている美しい銀髪にヘアピンを着ける。

 それが終わると彼女がくるんと湊に背を向け、髪をかき上げて真っ白なうなじを差し出してきた。

 あまり見る事の無いその場所に目が釘付けになる。もう恋人という事で遠慮なく触れて良いはずだ。

 何かを忘れているような気がしたが手は止められず、細い首筋に指を()わせる。


「ひゃ!? み、湊さん、何するんですか!?」

「……いや、綺麗だなと思って。愛梨の肌がすべすべなのは知ってるけど、触り心地良いなぁ」


 可愛らしい悲鳴が聞こえたが、もはや目の前の誘惑には逆らえない。うわの空で返事をしつつ感触を楽しむ。

 湊が愛梨の髪の手入れをしている最中、彼女は肌の手入れを行っている。なので毎日の努力を知ってはいるが、やはりこれはその成果だろう。

 滑らかな肌をなぞると、びくびくと愛梨の体が震える。


「みなと、さ、くすぐった……。ふふ、やめ、やめて、くださ……」

「無理、もうちょっと触らせてくれ」

「え、ちょ!? だ、だめですって。あはは! も、むり、です!」


 完全に夢中になっていると、いつの間にか愛梨が息も絶え絶えになっているのに気が付いた。

 彼女の体がへなっとふらつき、湊にもたれ掛かった事でようやく我に返る。


「はぁ……。はぁ……」

「……大丈夫か?」

「あなたが、それを、いいますか……?」


 完全にやり過ぎてしまったのでおそるおそる愛梨の顔色を(うかが)うと、頬を上気させ涙目で睨んできた。

 彼女はくすぐられただけなのだが、力が抜けきっている体と合わせて非常に色っぽく、なんだかいけない事をしている気分になる。

 

「いじわる」

「ごめん、やりすぎた」

「もう、力抜けちゃいましたよ。どうしてあんな事したんですか?」


 湊が謝ってもその表情は変わらない。

 艶やかな姿に反応してしまいそうになる体を必死に抑え、愛梨の質問に応える。


「あんまりにも愛梨のうなじが魅力的すぎて抑えられなかった。本当にごめんな」

「……匂いに、髪に、うなじですか。なかなかいい趣味してますね、他に何があるんですか?」

「俺にも分からん」


 湊もこうなるとは本当に思っていなかったのだ。これ以上の趣味は自分ですら理解していない。

 今の時点でもだいぶ業が深いとは思うが、まだあるとなればどれだけマニアックなのだろうか。

 首を振って応えると、愛梨がにんまりとした笑みを浮かべた。


「ねえ湊さん。首筋って一番匂いが濃ゆい場所なんですよ? 貴方にはたまらないのでは?」

「……魅力的だとは思うがやめとく。既に後が怖いからな」


 欲望に従って行動出来れば良かったが、意地悪な顔を見て冷静になる。

 今の時点でも仕返しが怖いのだ。これで行動に移せばどういうものが返ってくるのか分からない。

 愛梨が残念そうに顔を(しか)めたので、この判断は間違っていなかったと安堵(あんど)した。


「あら、バレましたか。とりあえずお仕置きは後にして、ネックレスを着けてください。……次は悪戯しないでくださいよ?」

「もうしないから、ちゃんと着けるって」


 凄みのある笑みを浮かべた愛梨に脅されたが余計な事をする気は少しも無く、次はしっかりとネックレスを着ける。


「似合ってるぞ、綺麗だ」

「ふふ、ありがとうございます。じゃあ次は湊さんですね」

「……ああ」


 愛梨がふわりと笑って後ろを向けと指示したので、恐怖がありつつも大人しく従った。

 どんな事をされるのかと警戒していたのだが、彼女はあっさりと湊のネックレスを着ける。


「はい、湊さんも似合ってますよ。ばっちりです」

「ありがとな。それで、何もしないのか?」


 ここでお仕置きをするのではないかと(いぶか)しむと、爽やかな笑みが返ってきた。


「今回は後でお仕置きです。……覚悟、してくださいね?」

「分かったよ」


 そこまで言うのだから、愛梨のお仕置きは今までとは段違いのものになるだろう。

 これは後で理性が試されるなと肩を落とした。



「よし。戸締りもしたし、行くか」


 その後特に問題も無く準備を終え、戸締りをしてから愛梨に手を差し出す。

 彼女は一瞬だけ驚きに目を見開いたが、その後嬉しそうな笑みで湊の手を握った。


「ふふ、今回はやってくれるんですね」

「リードされっぱなしは男が(すた)るからな。偶には良いとこ見せたい」


 この前のスーパーの時は買い物袋があったとはいえ、鈍すぎて責められたのだ。

 少しくらいは良い所を見せるべきだろうと思って言うと、くすくすと軽やかに笑われた。


「湊さんはいつも格好良いですよ」

「はいはい。嬉しいけど、そんなに格好良い所なんて見せてないだろ?」


 褒められる事自体は嬉しいが、いつもという訳では無い。

 というより湊は(ほとん)ど愛梨に手玉に取られているので、あまり格好良くは無いはずだ。

 呆れ気味にそう言うと、彼女は手招きをして(かが)めと指示してくる。

 何をするのかは分からないが、そこまで変な事はしないだろうと指示に従う。すると愛梨が繋いだ手とは反対の方を首に絡ませてきた。


「ではこう言いましょうか? ……可愛い湊さん?」


 湊をからかう妖艶な囁き声が聞こえ、吐息が耳に掛かってぞくりと背筋が震える。

 すぐに体を離そうとしたのだが、強く締め付けられて離せない。

 

「すき」


 愛情が詰まった熱い呟きに固まっていると、満足したのか愛梨が身を離す。

 してやったりという笑顔を浮かべる彼女を見つつ、やはり湊は格好良くは無いなと溜息を吐いた。

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[良い点] ブラックコーヒーどこですかー?
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