カタカタカタ
とはいえ、しばらくは不人気ダンジョンを中心に活動する予定だ。いつかは普通のダンジョンにも挑戦するつもりだが、それまでに何か対策を立てておけばいい。
今はとにかく、ダンジョンを攻略することに専念しよう。
というわけで今日もいつものダンジョンを攻略中。ちなみに入学式が終わった後、すぐにダンジョンに直行しました。
冒険者として活動してればなんか良い案が浮かぶかもしれないし。
ただヤケになっているだけとも言える。
それにそろそろ、このダンジョンは攻略してしまうべきだとも思っていた。Fランクダンジョンの攻略にかかる平均時間は、だいたい数日。長くとも一週間ほどらしい。
いくらスキルの検証がメインとはいえ、もう4日。ほとんど攻略が進んでないのはちょっとまずいかもしれない。まあ、初めてのダンジョン攻略なんてこんなものかもしれないが。
この『マリオネットダンジョン』は、定期的な間引き以外ではほとんど人がこない。その理由の1つである、モンスターの頑丈さ。普通の新人ならてこずったことだろう。だが俺には関係ない。
コピー人形を創造。巨大化。握り潰す。これでリビングドールは消える。ちなみにマリオネットダンジョンの第一層には、リビングドールしか出現しない。
そうやってリビングドールを倒しながら移動していると、階段に到着。昨日見つけていた、第二層への入り口だ。
今まではずっと第一層にいた。昨日も階段を見つけただけで、そのまま引き返した。
だから降りるのは今日が初めてだ。
第二層は、第一層とは比べ物にならないほど多数のモンスターが出現するらしい。まあ、全部リビングドールなのは一層と変わらないらしいが。
出会う確率はぐんと上昇し、頻度としては平均数分に1度ぐらい。しかも必ず二体以上で行動している。
冒険者ギルドが公開している情報にはおおよその目安が書かれているが、過信しない方がいいだろう。
何せ、一層の情報には『数十分に一体遭遇するかどうか。二体以上同時に遭遇することはまず無い。』と書いてあるのにだ。俺は初戦闘の時、一度に三体相手にすることになった。その後も5分も移動すれば必ず一体以上と出会い、複数同時に相手することも少なくなかった。
そんなわけで、覚悟していった方がいいだろう。
俺はゆっくりと階段を下っていった。
ちなみに、俺はずっとコピー人形にお姫様だっこされているため正確には降りているのはコピー人形だ。
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(は?)
第二層の状況を目にし、俺が初めに思ったのがそれだった。生身だったら、間違いなく声に出ていただろう。それくらい、第二層の“惨状”は驚きだった。
まず周囲の環境。石作りの通路になっている。幅は、大型自動車が一台通れるくらい。
開けた岩場になっていた第一層と比べると、かなり狭い。コピー人形を、一層でリビングドールを握り潰していた大きさにするのは、不可能ではないがかなり手狭だ。まず間違いなくつっかえる。
まあこれに関しては、用意していた秘策があるのでどうにでもなる。幸い、迷路のような複雑な地形はしていなく、碁盤の目のような単純な構造をしているらしい。
それにダンジョンの環境が、階層ごとにガラリと変わるのはよくあることだ。というかこういう環境なのは、ギルドの情報で知っていた。驚くようなことじゃない。
けれどこれは無いだろう。
カタカタカタカタカカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカタカ
リビングドールが、大量発生している。見えるだけでも、20体はいる。
いや、そりゃね?一層のこともあったし、情報に多少誤差があるのも仕方ないとは思ってたよ?
でも、これはないんじゃない?
ギルドの職員さん、ちゃんとチェックしてる?
…うだうだ言っても仕方ない。とりあえず進んでみよう。
それに、むしろ秘策をためすには絶好のコンディションだ。
二層に降り、コピー人形に下ろしてもらい、倒れないよう座らしてもらう。
コピー人形は俺の前に立たせる。
リビングドールは、俺たちに気がついたようでこっちに向かってくる。
それを尻目に、俺は準備を整えていく。
まず、もう一体コピー人形を出す。そして新しく出した方を手のひらに乗るくらいの大きさまで小さくする。
そしたら小さくなったミニコピー人形をもう片方の人形につかませ、リビングドールの群れめがけて投げつける。
最後に、ミニコピー人形がリビングドールのところにまで到達したら、一気に巨大化させる。
狭い通路でそんなことしたら、後はわかるな?
巨大化人形とダンジョンの壁に挟まれてリビングドール達が潰されている。成功だ。
ただ、思ったより討ち漏らしが多い。特に先頭にいたリビングドールはこっちに吹っ飛んで来てはいるが、見たところ傷らしい傷はない。仕方ないのでいつものように巨大化させたコピー人形に握り潰させる。
ただし立ったままだと天井の高さが足りないので、ハイハイの状態で。
…こっちの方が良かったか?




