呪い
しかし安いということには、それなりに理由があるものだ。
そこでスキルについて少し説明しようと思う。
先に述べたように、スキルはスキルオーブを使うことで取得することができる。
そしてスキルには、それぞれ分類がある。
これは人間が定めたものではなく、天然の魔道具に魔道具やスキルの情報を読み取るものがある。
それによりオーブを鑑定することで、スキルの名前、というよりは記号と番号を組み合わせたコードがわかる。
それによると、スキルは大きく『α』『β』『γ』『δ』『ω』の5系統に分けられる。
系統ごとにスキルオーブの色も変わる。
まず『αスキル』。
極めて強力なスキルばかりなのだが、大きな代償を伴う。そのため、別名呪いのスキルとも呼ばれる。有名なスキルに、寿命を削る変わりに超人的な身体能力を得るものがある。
それに加え、このスキルを取得すると他の系統のスキルを手に入れることができなくなるというデメリットがある。
不人気スキルの代表格。しかし性能自体は強力であるのに加え、他のスキルに比べ入手確率が低いためかそこまで安価でもない。
さらにⅠ~Ⅲの分類がされている。
スキルオーブの色は濃い紫。
次に『βスキル』。
これを取得すると、その瞬間所有者の肉体を作り変える。腕や足などの体の一部だけ変化するものや、一気に全身が変わってしまうもの。不気味な化け物になるものから、不老の美形になるものまでとピンからキリまで様々。しかしその性能自体は優秀なものばかり。その性質からモンスター化スキルとも呼ばれる。
α程ではなくとも不人気スキルが多く含まれる。
αと同じくⅠ~Ⅲの分類がされている。
スキルオーブの色は赤
それから『γスキル』。
これも効果は優秀なものばかりだ。しかし使うには、魔石というエネルギー源が必要になるためコストがかかるという欠点が。
上二つと違い、アルファベットでABCのランク分けがされている。Aランクが最も強力で、コストも重い。
スキルオーブの色は黄色
そして『δスキル』。
上3つに比べて使い安く、人気も高い。
使うと体力を消耗するが、それにより死ぬことはまず無い。強力なものほど消耗が大きい。
ABCDにランク分けされており、Dランクのは比較的安価で手に入る。
二番目にスキルの種類が多い。
スキルオーブの色は緑。
そして最後に、『ωスキル』。
これはクールタイムとキャストタイムがあるのが特徴だ。それ以外に使用者がコストを払う必要がないため人気が高く、最も使用者が多い。そして、ダンジョン外では使用が不可能になる。ダンジョンに満ちる謎エネルギー、魔素を吸収して燃料にしているとされる。
最もスキルの種類が多く、ダンジョンからも比較的見つかりやすい。
SABCDにランク分けされている。Dランクは比較的安価。
スキルオーブの色は青。
このように、それぞれの系統で特色が異なる。
俺が買えるのはαβスキルの中でも人気の無いものか、δωのDランクスキルの余りだ。
さて、ここで1つ豆知識を。
スキルオーブは、俗に鑑定の魔道具と呼ばれる他の魔道具の効果を調べる魔道具で、そのスキルオーブからどんなスキルを得られるかわかるようになっている。だが中には、鑑定してもスキルの名前が出ないスキルオーブもある。
それらはランダムオーブと呼ばれ、使うまでどんなスキルを取得するかわからない。しかもランダムオーブには色つき、つまり系統だけは分かっているものと、真っ白でそれすらわからない物がある。
それらに共通しているのは、取得できるスキルの個数すらランダムだということ。
つまり1つのオーブで、何個も手に入る可能性があるのだ。1個も手に入らないこともあるが。
そしてこのランダムオーブ。白と紫と赤の値段は、最低価格の百万円だ。
βの不人気スキルは、はっきり言って論外だ。見た目が醜悪だったり日常生活すら困難になるものがほとんどだからだ。αの不人気も、代償が重すぎるのでできれば遠慮したい。となるとランダムの白か紫か赤か、堅実にDランクで我慢するかだ。
悩んで悩んで…俺は紫のランダムオーブを買った。
オーブはギルドで買ったのだが、担当してくれた職員さんには遠回しに止められた。まあ、俺が折れないと知ると、納得してくれたが。呆れられたとも言う。
オーブを使うには、専用の魔道具が必要なのだが、これは冒険者ギルドが無料で貸してくれる。壊れない限り何度も使えるからな。
直前に緊張で手が震えるなどありはしたが、俺は無事にスキルを手に入れることができた。それも3つも!
それがこちら。
【αⅢ09】『人形の呪い』
【αⅢ81】『不思議の国の呪い』
【αⅡ022】『氷結の呪い』
右の『○○の呪い』っていうのは最初の発見者がつけた名前。αスキルはそのほとんどが『○○の呪い』という名前がつけられてるらしい。
ちなみに上二つは先人に習い俺がつけた。なかなか良いセンスだと思う。
職員の人はめちゃくちゃ驚いてたが。
なんでもこのαスキル、ただでさえ取得したがる冒険者が少ない上、ⅢとⅡはランダムオーブからしか手に入らない。それも出るのはほとんどⅠ。Ⅱですらなかなか出ないのに、Ⅲにいたっては0.1%以下の確率。そのため、極端に情報が少ないんだそう。
そんなスキルが一気に3つだ。さらにうち二つは激レアなⅢ、それも未発見ときた。
取得と同時に頭に流れてきた大まかなスキルの情報を伝えると、情報提供料とかで20万もらえた。正直かなりうれしい。




