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<73>

 地面から生えていた宝石の陰や、盛り上がった土の側。


 この部屋の至る所から、合計12機のドローンが一斉に飛び立った。


「これは……」


 周囲を飛び回るドローンを見つめる柳を後目に、結花が手を挙げてその中の1機を捕まえる。


「みなさん今日は。1年2組の水谷 結花(みずたに ゆか)です。政府が秘匿する場所からの生放送、楽しんでくれてますか?」


 普段の放送と同じように、結花が弾けんばかりの笑みを浮かべていた。


(最高! 政府機関に抗議の電話かけまくってるよ! 結花ちゃんマジ天使!)


(防衛省の回線惰弱すぎ。つながらねぇよ)


(上層部の連中、ぬっころしに行こうぜ! で、そいつらどこに居んの?)


 腕に身につけた時計にそんな文字が流れていく。


「マスコミも重たい腰をあげたっぽいぜ?」


 ほれ、と将吾が掲げて見せた画面には、俺たちの生配信を背景に映すアナウンサーの姿があった。


『“力でこの世界を支配する”。“愚民の命を救えたところでなんになる”。などと、不穏な発言が目立ちます』


『ーー速報です。たった今入りました情報によりますと、防衛省の前に調査官を乗せた車が到着した模様です。現場と中継がつながっております。現場の鳥山さん?』


 段ボールをもった男たちが一斉に建物の中に入っていく。


 チャンネルを次々切り替えるものの、どの局も、俺たちの姿を映していた。


「まぁ、この状況で化物を止めれるヤツが居るなら、止めるわな」


「…………」


 呆然とした様子で画面を見つめていた柳のポケットから、呼び出しを告げる音が鳴る。


「……はい、柳です」


 小さな声を絞り出した柳の顔が、より一層青白さを増していった。


 一言、二言つぶやいて、柳が右手を掲げる。


 周囲で動きを止めていた化物たちが、その身を光らせて、ビー玉へと戻っていった。


 スマホを額に押し当てながら、柳が高級スーツに身を包んだ膝を地面に付ける。


 力の抜け落ちた瞳で、ぽんやりと地面を見続けていた。


「それで、どうするのかしら? あなたが撃たないのなら、私が殺すのだけど?」


「いや、いいさ。アイツの相手なんてしている暇は無いんじゃないかな?」


 ふと振り向いた先に見えたのは、宝石の街から浮かび上がる3つの光。


「めぐみ……?」


「ただいま――!! って、キョウちゃん! ちょっと成長しすぎてない!? なんか、不公平を感じるんだけど!?」


「ふふっ、そうね。めぐみはちっとも成長して無いわね」


「あー、ひどーい。これでも大きくなったんだからね!? ……たぶん」


 ピシリと抱きしめ合った2人を宇堂先生とネネが、優しい瞳で見詰めていた。

 

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