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【第25話】水人間の恐怖

 女が詠唱し終えると、海から無数の突起のようなものが出現する。突起は、だんだんと人間へ形を変えていくのが見て受け取れた。

 人間だと認識できる一方で、顔がのっぺら坊のようなため、おぞましさを感じる。


「な、なんじゃありゃ……」

水人間ヒュドール・アンスロポス。天界にある古術の一つなんだけど……こんな数を操れる竜は初めて見たよ」


 ファンは黒崎の後ろで、猫のように丸まりながらいつも以上に震えていた。その震え方は尋常ではなく、朝霧は少しでも安心させたかった。が、いい言葉が見つからない。

 朝霧がそんなこんなをしているうちに、黒崎が唐突にファンの頭を撫でる。ファンはいきなりの撫でに驚いたのか、震えを止めた。

 朝霧はそれを見て少し安心し……水人間ヒュドール・アンスロポスに視線を移す。

 そして次の瞬間、足元から無数の電撃が生成を生成し、全ての水人間ヒュドール・アンスロポスにぶち当てる。

 電撃を強引に押し込んだため、水が吹っ飛び何個もの滴へと姿を変え、バシャバシャという音をたてながら海に沈んでいった。──が、滴はまるで逆再生をしているかのように元に戻る。


「嘘だろ……」

水人間ヒュドール・アンスロポスは、命力の塊。いくら攻撃して破壊しても、再生するだけだよ」


 ファンが後ろで説明する。

 声を聞く限り、少しは落ち着いたみたいだ。だが、状況が変わったわけじゃない。

 命の塊で殺せないとなれば、勝ち目なんて……。朝霧は絶望に似た感情に襲われる。いくら殺しても殺しきれない命の源なんて、どう勝てばいいのか見当もつかない。


「じゃあどうすりゃ良いんだ……?」

「はやて、命力の塊と言っても無敵なわけじゃないよ。あの女──海龍(かいりゅう)を倒せば……いや一時的にでも意識を飛ばせば、命力を集約する力が消える。そうすれば自然に崩壊するよ」


 ファンがそう言う。

 けどそれができりゃ苦労しねーんだよな……。朝霧は苦虫を噛み潰したかのような顔になりながらそんなことを思う。

 と、言うのも彼の攻撃は、毎回分厚い水の壁に阻まれる。海龍を倒そうにも攻撃が通らないのなら倒しようがない。どうしたものかと思考を巡らす。

 ──と、気がつけば水人間ヒュドール・アンスロポスがビーチの目前までたどり着いていた。その数は数百……いや千以上いるかもしれない。

 が、次の瞬間、水人間ヒュドール・アンスロポスは、次々に一カ所に引き寄せられていった。


「──龍術魔本一六〇条七〇項、それぞれの命力は一つに。更なる強大な力を得るため。更なる強大な命力を生み出すため。覚醒せよ海界の王(タラッタ・バシレウス)!」


 海龍が詠唱し終えると、水人間ヒュドール・アンスロポスがものの見事に巨人へと姿を変貌していく。

 大きさにして、建物十階くらいの高さだろう。形はところどころ歪だが、どうにか人間の形をしているのが分かる。顔と思われる部分は、水人間ヒュドール・アンスロポスと同様に、のっぺら坊のような形をしており、しかし大きさがバカでかいだけおぞましさも倍増されていた。

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