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LACUMOON~人間以上に頑張ったら女神になりました。~  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫


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20 ログインしますか?




二話連続、更新!

ラストです!







 とある家のリビング。

 一人の男性が起き上がり、ヘルメットを脱いだ。


「あ、ログアウトしましたか。幸樹さん」


 チリン。鈴が鳴らしながら、少女のような幼さがまだ顔に残る美しい女性が呼ぶ。

 ジェイソンこと幸樹は、前を丸くして振り返った。

 黒い長い髪は艶やかにくるりと曲がっている。その髪を揺らして、幸樹の横たわっていたソファーに歩み寄る。


「聞いてください。【LACUMLUNA】にログイン出来ないし、よぞらがログアウトしないって、”狐月“が騒いでて何度も電話してきたんですよ。少しは待てって言ったのに、よぞらが絡むと彼はどうしようもないですね。たかが“数十分”も待てないのかって言ってやっていたら、よぞらがログアウトしたみたいでそれっきり電話はかかってこなくなりましたが……」

「……」

「全く。一言もなしですよ。……あ、ただいま」

「つ……椿さん……」

「はい?」


 携帯電話を睨み付ける瞳は、深紅の色。

 愚痴ばかりを言っていないで、先ず言うべきことを言う。

 椿と呼ばれた彼女は、きょとんとした。


「会いたかった!」

「!?」


 がばっと幸樹は、椿を両腕で抱き締める。


「会いたかったです! すごく、会いたかったです!」

「な、な、なんですか……今日はいつになく激しいですね、幸樹お兄さん」


 抱き締めるだけでは飽き足らず、頬ずりをして香りを吸い込む。

 戸惑いながらも、妹の椿は抱擁も頬ずりも受け入れた。


「今回は三週間ぶりだからですか?」

「……今日は、何日ですか?」

「? 十三日の金曜日ですけど」

「……そう、ですか」


 幸樹は少し目を細めたが、もう一度愛おしい妹を抱き締める。


「本当になんですか……」


 呆れている椿に、幸樹は映画でお決まりのセリフを言う。


「話せば長くなります」


 ちょっぴり笑って、こう加えた。


「おかえりなさい、お兄さん。そう言ってくれませんか?」


 椿は不思議そうに首を傾げたが、それさえも引き受ける。


「おかえりなさい、幸樹お兄さん」

「……はい、ただいま。椿さん」


 今度は優しく、幸樹は抱き締めた。



 ◆◆◆



 五月十三日の金曜日。

 携帯電話に表示されている日付を見て、夢を見ていたのだろうかと思った。

 私は変わらず、一人暮らしのマンションの部屋にいたものだから、驚く。

 だって、てっきり病院に運ばれていることを想像していた。

 でも世間は騒ぎもしていなかったのだ。

 つけたテレビのチャンネルを回しても、ニュースになっていない。

 そもそもログインしてから、一時間ほどしか時間が経っていないことになっている。

 長い夢を見ていたのだろうか。

 長く、とてもリアルな、夢を見ていたのだろうか。

 考えても私はとてつもなく眠くなってしまって、ベッドに倒れて朝まで眠ってしまった。

 翌朝は、仕事を報せるアラームで起きる。

 でも身体は怠すぎて、仕事が出来そうにもなかった。

 仕方なく、仕事を休むという連絡をして、またベッドに身体を沈める。

 昼が過ぎてから、いい加減お腹が空いてしまったので、私はご飯を簡潔に作った。それを喉に流し込みながら、なんとなくネット検索をしてみる。

 すると、驚く記事が目に入った。

 【異世界ラクムーン】に行こうと言う掲示板があったのだ。

 口に入れたご飯を吹いてしまうところだった。

 内容は、“女神ルベナ様が異世界ラクムーンに連れて行ってくれる“というものだ。

 目を疑ったが、それは間違いなくアーロンさんが書いたものだとジワジワと理解した。

 他にも”明日の夜にログインをして、異世界ラクムーンに行こう“という書き込みがあって、名前はキアやガラクとある。

 夢じゃなかった。

 現実にあったのだ。

 冷やかしの書き込みもあったけれど、”また行きたい“という書き込みが多数あった。それもまた名前に覚えのあるプレーヤーのものだった。

 夢じゃない。私は、異世界にいた。

 私達は、異世界にいたのだ。



 五月十五日の日曜日。

 夜の九時前に、ヘルメットを被った。

 白い文字で表示されるのは、この言葉。



【ログインしますか?】




 end




三年ぶりに再開し、完結させていただきました!

当初からこの流れで終わろうと決めていました!

ちょっとだけ二章目も考えていますが、

レックスとの再会は今のところお預けで!


ここまで読んでくださり、ありがとうございました!!!


20190526

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