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鋼鉄のアイ  作者: 大紀直家@パブロン
スクラップ
82/90

アイドルの初めて

「すいませんでした……」

 ポーションによる顔面修理が終わったライムを出迎えたのは、紅い瞳を爛々と輝かせる悪魔の貌であった。


 彼は言った。


 どう落とし前を付けてくれるのか、と。


 タクムは装備品のほとんどを失っていた。


 国内有数の銃職人である<ワンダー・ランド>が設計し、製造までを手がけた対物小銃<ドリーム・ガン>。

 最上位生体兵器<女王蟻ジャイアントスローター>の牙を使用した銃剣<ドリーム・リッパー>。


 同じく<女王蟻>素材のグレネード付きのカイトシールド<ハーベスト>。


 そしてソフィスト軍人の中で広まりつつあるタクムの二つ名――<金色の悪魔>の象徴である金色の強化服<デゥラハン>は、この世界で初のオリジナル戦車――マイクロ戦車のことである――を開発した――戦車界の第一人者<ドリーム・ランド>が、彼のためだけに作り上げた代物である。ちなみにこの世界の武器・車輌類は古代遺跡から手に入る設計図をベースに作られており、技術を流用したとはいえ――機関部から脚部の移動方式に至るまで一から作り上げた彼の評価は、マイクロ戦車の普及と共に高まっているのだ。


 そんな素材も性能も、製作者のネームバリューに至るまで最高・・の装備であり、タクムと職人兄弟による個人的な友誼によって入手出来たのである。完全な一品物ワンオフ。再び手に入れようと思えばどれだけの費用がかかるか想像も付かない。


 これらの装備は全て大破している。つまり、<リペアキット>などの修復アイテムでの修理が不可能なのである。これを補填するためには全く同じもの――あるいは同等以上の装備品――を手渡すか、賠償金を支払うしかない。


 ランド兄弟に伍する技術者はスター都市国家群には存在せず、最上位生体兵器を手に入れる術がないとすれば金銭による補填を行うしかない。


「一億ドルだな」

「ほぇ……?」

「聞こえなかったか? この装備一式の賠償金と新しい装備が手に入るまでの期間の慰謝料、合計で一億ドルを請求させてもらう。それで手打ちだ」

「そんな……」

 日本円にして百億円。値段など付けられない装備品であり、戦闘中にバックファイアをやらかしたことを考えれば、彼女には言い値を支払う以外に方法はない。


 もしも、支払いを拒否するならばその場で処刑されても文句は言えない。少なくとも臭い飯を食ってもらうことになりそうだ。ライムのカードにはしっかりと<殺人未遂>が記入されてしまっている。


 別段、弁済能力がないわけでもない。ライムはアイドルとして返り咲いていた。義勇軍に従軍し、活躍していることが広報を通じて国内に知れ渡るようになると、<戦場の女神>、<戦士の癒し手>、<聖女>のなどと腹立たしい呼び名と共にCDやプロモーションDVD、ライブ映像などがバカ売れしているのだ。


 ――それでも、今後10年はタダ働きであるが。


 ちなみに銃剣や強化服については機能が大破して使い物にならなくなっただけで、希少なことこの上ない女王蟻素材は無事である。ガンマに戻り次第、両職人に修理に出せば二三日で元に戻る。


 がそれを言う必要性は全くない。せいぜいタダ働きさせてやるだけである。当然ながら金利も取る。年2.5パーセントが限界だろう。開拓者ギルドや金融機関などの融資よりも安い金利にしなければライムが他所に流れてしまう。


「わたしの、金……」

 わざとらしく泣き崩れるライムを見て、タクムは眉を寄せた。


 ――この女、ほんとうに反省しているのか?


 とりあえず、死ぬことはないと安堵の表情を浮かべるライム。段々に腹立たしくなったタクムは口を開いた。


「で、どうだ? 初めて人を殺した感じは?」

「は? え――」

「見ろ、ライム。あの光景を」

 タクムが指差したのは半径五十メートルに及んで深く抉られた地面である。穴の所々には赤い斑点が浮かび上がっており、荒野迷彩を施された鉄塊――戦車の瓦礫――が轢き殺された蛙のように拉げ、潰されている。


「素晴らしい威力じゃないか。十や二十じゃ利かないぞ? たった一発で戦車二輌、小隊規模の兵士が跡形もなく消え去ったんだ――なあ、お前のレベル、どれだけになった」

 ライムのぼんやりとした瞳に理解の光が宿った途端、


「オエエェェェエェェェ――ッ」

 タクムは蹲るライムの髪をつかむと、今にもキスしそうな距離で言葉をかける。


「安心しろ、ここはゲームだ。何にもおかしいことはねえ、NPCエネミー倒してレベルをあげる。ゲームなら当然のことじゃないか、なあ、そうだろう? 連中は人じゃねえ、だから殺したって罪じゃねえ、分かるか、ライム」

 緋色の瞳が怪しく輝く、掴んでいた髪を離し、優しく上下になで始める。


 徐々にライムの黒目勝ちな瞳が段々にぼんやりとしていく。人は自分の見たい現実ものしか見ようとしない。精神的に弱いライムを誘導することくらい造作もない。


 ――ようこそ、ライム。人非人こっちの世界へ。


 そうやってタクムはとても優しく嗤うのだった。


先日は沢山の祝福(?)メッセージありがとうございました。


新生活につき時間とネット環境がないので、返信出来てません。

たまたま自宅に寄れたのでオフラインで書いたのを投稿します。


ごめんなさい。いつか必ずお返しします。


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