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鋼鉄のアイ  作者: 大紀直家@パブロン
スクラップ
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基地の日常

 補給部隊を潰しを始めてから一週間が経った。襲った部隊数は一〇を超え、大型トラック一〇〇台分という物資は全て基地の倉庫に詰め込まれている。中には一線級の最新装備も存在しており、タクムは自らが所有する<鉄屑兵団>やその下部組織に優先的に割り当てるようにしていた。


 残りは<ガンマ義勇軍>に販売し、組織の金を自分の懐にせっせと詰め替えている。ガンマ解放を謳う部隊の装備が敵国ソフィスト産の最新装備で統一されているというのは盛大な皮肉であった。


 タクムは、ライムやベジー、クリスといった義勇軍最高幹部と共に司令室に居た。彼の下した指令はやはり<適当にやれ>という大雑把なものであった。


 幹部の三人にはそれぞれ支援、情報、戦闘の三つの観点から任務や作戦レベルまで落とし込んでもらっている。ちなみに割り振りは、支援や補給関係はライムが行い、敵部隊情報の取りまとめはベジーに任せ、得られた情報から敵部隊を殲滅する指揮官役をクリスが担当していた。


 義勇軍は様々な開拓者兵団クラン開拓者部隊パーティの寄り合い所帯であり、装備も人員のスキルも千差万別である。集団としてひとつにまとめて戦わせるよりも、個の優位性を活かして戦功を上げてもらうほうが有利だと判断したのだ。


 そもそも数十からなる各部隊の特性や長所などいちいち把握していてはそれだけで日が暮れてしまう。


 仕事は自分で選んでやってくれ、が基本方針である。基地一階の広間に偵察、戦闘、生産などで分類分けされた掲示板を配置し、いくつもの依頼――体面上、義勇軍では任務としている――を張り出し、事務官によって受諾をさせる。そのまんまギルド方式を採用したわけだ。


 慣れ親しんだシステムをそのまま採用することにより、義勇兵かいたくしゃ達への説明は不要となり、混乱を回避することも可能となった。一石二鳥である。


 唯一の例外は報酬に<戦功ポイント>という独自の通貨を採用したことだろう。


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ミッションID:M01-03

表題:敵部隊の調査


ガンマ周辺に展開する有力な敵部隊の情報を調査すること。

敵部隊の現在位置や活動区域、規模、装備、練度などを偵察し、敵情報を本部への報告することで任務完了とする。


戦功ポイント:10~

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 例えば敵部隊を発見しただけでは10ポイントしか手に入らないが、規模や活動区域など詳細な情報を手に入れてくれれば100ポイントを与えるという形である。情報の質、量で包括的に判断するというわけだ。


 ちなみにこの戦功ポイントは、基地内部での支援や福利厚生を受けるための通貨ともなっている。一例を挙げるならこういった形となる。


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食事レーション:1ポイント

食事(定食)   :2ポイント

食事フルコース:10ポイント

宿泊(四人部屋) :10ポイント

宿泊(二人部屋) :20ポイント

宿泊(一人部屋) :100ポイント

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 また武器の購入や、弾薬を補充に使うことも可能となっており、義勇兵として基地内で活動している間は誰でも最低、月500ポイントの支給が受けられる。一日三食、最低限の寝床は提供するが、もっといい生活をしたいなら戦功を挙げろといった具合である。


 ちなみにベジー、ライムにクリス、その他、友好関係を結んだ兵団首領クラスにはガンマ義勇軍XXX部隊長と役職をつけており、月3000ポイントの役職手当が付くようにしてある。えこひいきである。


 金は使わせず、全ての消費を電子通貨ポイントで決済させることにより、国や企業からの支援にほとんど手を付ける必要がなくなった。膨れ上がったキャッシュは一部が組織発展のための投資に使われるものの、残りのほどんどはタクムの懐に入ってくる。

 ちなみに戦争終結後は戦功ポイントをスター都市国家群の通貨であるドルに両替できると公言しているが、その利率はタクム次第だ。その気になれば1ポイント1ドルにしてやってもいいのである。


「フハ、フハハハ……」

 思わず哂い出してしまうタクム。


「うわぁ……なんか、どこかの魔王みたいな笑顔を浮かべてるにゃ……」

「ああ、素敵な笑みだな」

「<八百屋>も大概だわな……」

 ライムがその表情を見て頬を引きつらせ、ベジーは心なしかうっとりとした表情を浮かべ、呆れた様子でクリスが言う。


「で、報告は以上か?」

 司令室には三メートル四方の大きなテーブルが鎮座しており、その上にはガンマを中心とした地図の模型が配置してある。倉庫から見つけてきたものだが、紙ベースのそれとは違い、高低差が一目で人目で分かるために敵部隊が取るであろう補給路を絞り込むのにかなり重宝した。

 ついでに任務で得られた敵部隊情報を色付きのピンで現すことにより、視覚的に状況分析をすることが可能となった。


「なあ、スローターよぅ。ちぃっとばかし時間いいか? 何だか同盟ギルドの連中から話があるみてえなんだわ」

「そうか……そろそろ来る頃だと思ってた。通してくれ」

「あーちょっと待って! にゃーはエスケープしたいにゃん! あの人達といると胃が痛くなるので」

 同盟を結んだ部隊は皆、<獅子心王ライオンハート>に並び立つほどの大兵団ばかりである。その首領ともなれば――分野こそ異なるが――ベジークラスの能力を有している。そんな中で上級兵種すら持っていないライムは戦闘能力的にかなり劣っており、彼らから放たれる強者オーラに耐えられないのである。


「そうだな、演習場でライブでもやってこい」

「やたー! お金取っていい?」

 タクムと同郷であるライムは、電子マネーの危険性を理解しており――戦功ポイントは発行元が信用ならない通貨などお話にならない。近くの開拓者達に話を持ちかけては、ポイントをドル売りしたり、金やプラチナ、宝石などと交換したりしている。当然、彼女のライブチケットは全てドルで販売される。この基地で唯一、ポイントで取引できないアイテムとなっている。


「あんまりぼったくるなよ。せいぜい一人一〇ドルまでにしておけ」

「S席は三〇ドル、A席は二〇ドル。これだけは譲れないわ。私はこれでもパンツを張ってるのだから」

 突然、シリアスモードになるライム。拝金主義の鑑である。タクムはこめかみを押さえつつ、シッシと彼女を追い払った。


 義勇軍の士気を高める効果もあるので、タクムは彼女の活動を放置している状態だ。支援もしないが、邪魔もしない。とはいえ、ライムのライブは人気がある。彼女の歌唱力やダンス技能はプロ級――実際プロなのだが――であり、何より日本で培われた萌え文化はこの世界にはないものだ。元々軍人や開拓者から人気のあった<パワドル>の生ライブである。基地には娯楽の類はほとんどないことも関係して、ライブは毎回満員御礼。最近では<戦場の歌姫>あるいは<聖女>などという不相応な二つ名まで付き始めている。


「どうせ見せパンだろうに……」

「まったくだ。あれを女としてみる感性が分からん」

「いやいや、時々ちらりと覗くエロティズムが、たまらないんだわな」

「「クリス!?」」

「おっと、それじゃ連中を呼んでくるぜ。さっさと終わらせねえとライブ始まっちまうからな」

 言いながらクリスは椅子から立ち上がり、通信機片手に司令室を出て行った。


『おう、参謀! これからライムたんがライブをする! 兵員に言ってS席を確保しておけ! そうだ金は幾らかかっても構わん!! あと垂れ幕とはっぴの準備を忘れるなよ!!』

 ドア越しに聞こえるクリスの砲声に、タクムは深いため息を吐くのだった。


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