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鋼鉄のアイ  作者: 大紀直家@パブロン
スローター
40/90

野菜収穫

 装甲服に着替え、いくつもの武器を装備したところでべジーは階段を駆け上がった。


 どうやら上階は演習場になっているようだ。全て分厚いコンクリート壁に囲まれた一辺が500メートルはあろうかという広大な空間がそこにはあった。


 市街地戦を想定しているのか、屋根のない家屋があり、窓ガラスの割れた車両などが点在している。


 べジーはグロッグ18マシンピストルを油断なく構え、迷路めいた裏道を歩いていた。


「さあ、始めようぜ」

 不意に後ろから声を掛けられ、べジーは振り向くより早く、グロッグ18を音源へ向けた。


 マズルフラッシュ。


「ぐッ……」

 タクムは十数本の射線を横っ飛びで逃れるが、背中から衝撃を受け、たたらを踏む。


 なぜ奴が肩に帯びた火力は元より射程や精度に勝るM16ではなく、グロッグ18を選択したのかが分かった。


 跳弾を狙ったのだ。タクムの装甲服が通常のライフル弾程度では貫通出来ないと踏んで、魔弾スキルを使用せずに跳弾と成り得る9ミリパラベラム弾を選んだのだ。


 体勢を崩したタクムに、べジーは<ダッシュ>スキルを使用して近づく。


「ハッ」

 べジーは腰から抜いたマチェットを振るった。タクムも手にしていた大型サバイバルナイフでそれを防いだ。

 べジーはグロッグ18をタクムの胸に押し付け、全弾掃射フルバースト


「ぐ、」

 貫通はせずとも衝撃は受ける。タクムは距離にして2メートルは吹き飛ばされ、裏路地の壁に背中を強かに打ちつける。


「死ね! 小僧!!」

 鉈とマシンピストルを投げ捨て、べジーは背中に帯びていたMINIMI――機関銃マシンガンの砲身を向けた。


 ――|タクムは逃げる間もなく(ダダダダダダダダダダ)、|5.56ミリライフル弾に全身を打ち抜かれた(ダダダダダダダダダダダダダダダダ)。


 100発のライフル弾を収めるベータC-MAGドラムマガジンを使い切り、手持ちの手榴弾を投げつける。


「くっ……ふぅ……はぁ、はぁ……」

 直後に爆風がベータを襲い、彼はその場で膝を付いた。体力の限界であった。人外めいた体力の持ち主であっても、2週間にも及ぶ絶食は厳しかった。常人であれば餓死していたとしてもおかしくない状況で、激しい運動――銃撃戦を行えばどうにかならないはずがなかった。


「これで、私は……自由だ…………ッ」

 一体どんな装甲板を使っているのか、<スローター(タクム)>の装甲服には傷一つ見受けられない。


 しかし、中身はもうダメであろう。100発にも及ぶ5.56ミリライフル弾の打撃を受け、最後にグレネードによる爆撃を受けた。内部はぐちゃぐちゃになっているはずだ。


 新鮮な血肉が装甲服の隙間から漏れ出ているのを幻視して、ベジーは頭を振った。


「さすがの私も、人肉はな……」

 よろよろと立ち上がり、どこかにあるだろう上階へ向かう通路を探す。これだけの施設である。更に上には居住スペースなども確保されているはずだ。食べ物もきっとあるだろう。


 壁伝いに通りを歩いて出口を探す。そんなベジーに突如、バババババッという炸裂音が――衝撃が襲う。


「なぜ……おまえ……」

 背後には居たのは、都市戦闘用の灰色ギリースーツに身を包んだ<スローター>であった。




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