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4-2 チーム結成

 

 私と菜摘が、並んで先頭を走っている。

 そのすぐ後ろには儀同さんが速度を合わせていた。


 目指す先には、4人のクラスメイトが鍵器を構えて待ち構えていた。

 盾、剣、槍を持った3人が前衛。後衛に弓。

 中央の盾の人がやや菜摘の方によっている。盾と槍で菜摘を、剣で私を抑えようというのだろう。


 私もすでに杖を構えている。


 菜摘は素手だった。

 盾の人が前に出た。大きなカイトシールドだ。素手であれをどうにかするのは大変だろう。

 私がちらりと菜摘を見ると、ちょうど腕輪に手をかけていた。


「鍵器形成」


 腕輪が形を変えていく。光の粒子が菜摘の左手を覆い、手甲ガントレットになった。


(村娘……?)


 どう考えても村娘の持ち物ではないんじゃないだろうか。


「しゃーんなろー!!」


 菜摘が気合いと共にそのガントレットで構えられている盾を殴った。拳と盾が打ち合わさり、大きな音が響いた。


 私も杖で剣の人に打ちかかった。刃と杖が激突し、こちらも菜摘ほどではないものの鋭い音が響いた。

 剣の人が剣先で私の杖を絡め飛ばそうとしてきた。私はその力に余り逆らわないようにして自然と距離を取った。


 そこに儀同さんが剣を構えて突っ込んでくる。

 儀同さんの鍵器はもちろん剣。

 勇者にふさわしい精巧な両刃剣。


 儀同さんは大上段から剣を思いっきり振り下ろした。

 剣と剣が打ち合う。押し勝ったのは儀同さんだ。剣の人が体勢を崩した。

 儀同さんが剣の人を追撃する脇をすり抜けて、私は弓の人に向かった。


「!!」


 弓は既に引き絞られていて、私を狙っていた。

 矢が放たれる。


 矢は防ごうとした私の杖をすり抜けて肩に当たった。衝撃で私の足が止まった。

 それまで菜摘に向かっていた槍が私に向かってくる。


「ファイヤアロー!」


 背後でライフルを構えていた栗原さんが引き金を引き絞った。

 ライフルの銃口が火を噴き、弾ではなく火の矢が飛び出した。回転式リボルバー魔法銃ライフルという珍しい鍵器だった。


 火の矢に構わず、槍の人は私を貫こうとしてくる。

 その穂先を儀同さんが飛び込んできて剣で払った。

 火の矢が槍の人に当たり、爆発した。


「一本!」


 草薙先生の判定。槍の人はこれでアウトだ。

 私は改めて弓の人に向かう。

 私は弓を放つ瞬間をしっかり見計らって2射目を避けた。3射目はつがえさせない。私は杖で殴りかかった。

 杖は弓では止まることはなく、弓の人の胴をなぎ払った。


「一本!」


 弓の人、アウト。

 残りは、と儀同さんと菜摘の様子を見た。

 菜摘は盾の人を投げて地面に倒していた。儀同さんも、刃を相手の首元に突きつけている。


「はい、それまで!」


 草薙先生が宣言して試合は終わった。

 全員が鍵器を腕輪に戻した。


「互いに礼!」

『ありがとうございました!』


 お互いのチームに礼をした。


「鬼沢さん、1射目の矢もよけられたでしょ?」


 すかさず儀同さんが指摘を始めた。


「う……。まさか狙われてるとは思わなくて」

「接近戦から離れたら遠距離に狙われてると常に意識しないと。もし矢が複数射撃だったら死んでたわよ」

「はい」


 儀同さんは手厳しい。


「赤城さんは、なんなのそのガントレット?」

「ん?」

「あたしは素手だよ、と言っておいてそんなの出すなんて。あらかじめ言っておいてくれないと作戦変わるじゃない」

「いやぁ、ごめんごめん。でもこれだって素手みたいなもんじゃないか」

「それはそうだけど……。あとなんで村娘でガントレットなの?」

「うん、なんかさ、形成器入ったとき、最初村娘っぽいやつが三つ叉のフォーク差し出してこようとしたんだけどさ、あたしって長物嫌いじゃない?」


 私が魔王ぜんせと会ったように、同じようにあの機械を使って菜摘も村娘ぜんせに会ったらしい。


「知らないけど、嫌いなの?」

「嫌いなんだよ。それで、なんか他にないのかって聞いたら、父が兵隊やってたときに着てた鎧のやつだけど、ってガントレット出してきた」

「ふうん、きっと彼女なりに思い入れのある鎧ではあるのね」

「そうなんじゃないかな、知らないけど」

「ならいいわ。それと、栗原さん」

「は、はいっ」


 最後の一人、魔法使いの栗原さんは明らかに緊張していた。


「魔法を打つタイミングが遅いわ、もう1秒早く。それと狙いね。相手がどう動いて、着弾の時にどこにいるのか、もっとイメージして。私が槍を止めずに鬼沢さんが飛び退っていたら、はずれてたわよ」

「はい、ごめんなさい」


 栗原さんは小さくなっていた。


「そういう儀同自身は?」


 菜摘が指摘した。


「私は、そうね、そもそも1太刀目で切り伏せるべきだったわ。上段からは少し狙い過ぎね。やはり確実に仕留めるなら突きのほうが良かったわ」

「お前の剣なんかで突いたら相手死ぬから授業ではよしてくれ」

「刃物系はその制約つらいわね。鬼沢さんの杖がうらやましいわ」


 あまりうれしくない妬まれ方だ。


「草薙先生、先生の意見も参考にしたいんですが、どうでしょうか?」

「ん、そうだな。全体的な連携はこれから詰めるとして……」


 と、草薙先生は私たち4人にあれこれと指摘をしてきた。

 良かった動き、悪かった動き、その理由。

 さすがの意見だった。


「とまぁこんなところか。体育祭のクラス対抗戦までに少しずつ改善していこう」


 私たち4人は、6月に行われる体育祭で、クラス対抗チームバトルに1組代表として出場する予定になっていた。


 つい今朝決まったチームだ。

 代表チームを組むに当たって、儀同さんはもう最初から決まっているようなものだった。

 次に菜摘。村娘ながら、儀同さん以外には負け知らずだ。村娘ぜんせのことを持ち出してくる者を全員ねじ伏せるという荒技で、菜摘に実力があることはクラス全員が理解するに至っていた。


 残り二人を誰にするか。

 何人かで票が分かれたが、儀同さんが私を推しきって押し込んだ。


「私の見るところ、赤城さんの次くらいに強いわよ」


 という敵を増やす言い方で。おかげで今日は何人かからの視線が痛い。

 最後の一人が栗原さんだ。

 チーム3人が前衛武器なら、一人は遠距離武器がいた方がいいということで、遠距離持ち全員によるプレゼンの結果最後の一人の座を勝ち取ったのである。


「遠距離の欠点は連射性であることが多いけど、私の鍵器なら6連発!」


 という理屈で多数決を勝ったのだった。


「体育祭まで1ヶ月ちょいね。栗原さん、今日の夕方一緒に自主練しない?」


 特訓の鬼が栗原さんを地獄に誘っていた。


「は、はい!」


 栗原さんは緊張した様子でうなずいた。

 かわいそうに。たぶん栗原さんは儀同さんの自主練を知らないのだろう。私は哀れみの気持ちで栗原さんを見た。


「鬼沢さんは、ちゃんとこれまでのメニューをこなすのよ。いいわね?」


 やぶ蛇だった。

 儀同さんの笑顔が怖い。もしやらなかったらもっと怖いことになるやつだ。


「やだなぁ、わかってるよ、なっちゃん、そういうわけだからちょっち一緒にやろ」

「お、いいね。組手もメニューに足していいか!?」


 菜摘は無邪気に、私の自主練メニューを増やしてきた。


「……」


 儀同さんも菜摘も、特訓好き過ぎるんじゃないだろうか。そんなにやってどうするの。ダンジョン本気で制覇するつもりなの?


 問いを口にできるはずもなく、私は、弱々しくうなずいた。


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