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ディルクさんの苦手な人

短めです。

 あの後工房でディアナさんの作業を見せて貰ったのだけど、ディアナさんは凄い手先が器用だった。職業だから当たり前と言えば当たり前なのだけど、金属を加工して花を作り上げたり、彫って細かい模様を描いたり、宝石と組み合わせながら複雑な形の装飾品を作り上げたり。

 とても私には出来そうにない作業を軽々とこなしている。


 お兄ちゃんに「あんな風に出来るの?」と聞けば「流石にあそこまで細かいのはまだ無理だ」との事。親方は別格、だそうだ。

 凄いな、なんて感心していたらお兄ちゃんは我が身のように喜んでくれた。……お兄ちゃんは、ディアナさんの事尊敬してるんだな。何だかんだ言いながらも、眼差しは真剣そのものだもの。




「ディルクさんってお姉さん居たんですね、びっくりしちゃいました」


 日が暮れる前に送ってくれたので、晩御飯は変わらずオスカーさんと一緒だ。オスカーさんは「ディアナの事か」と微妙な顔をした。……あまり良い思い出がなさそうな感じがする。


「しかしまあ、お前の兄貴がディアナの弟子か……世間は狭いというか」

「ふふ、私もビックリしちゃいました」

「俺もな。……ディルクのやつに知らせたら驚かれそうというか」

「ああ、そういえばディルクさんによろしくって。何かにまにまされましたけど」

「……ディルクはディアナに散々からかわれてきたからな。苦手というか天敵レベルだ」


 俺も苦手ではある、と零したオスカーさん。

 ……まあ確かにオスカーさんはああいう気の強そうな人は苦手だと思う。というか女の人全般的に苦手だからなあ。


 その点私は慣れ親しんでくれたのか、最近は触っても極端に狼狽える事はなくなった。くっつくと怒られてしまうものの、何か妥協してくれたらしく大半はそっぽ向いて好きにさせてくれるのだ。


 駄目な時は駄目で逃げられたり剥がされたりするけど、これはまあ仕方ないし、寧ろ側に居ても平気になってきた辺り進歩だと思うのだ。


 まあ、よく「早く中身を成長させてくれ」とは零してるのだけど、私ちゃんと大人になったもん。何処をどう見たらそんな事が言えるのか。


「という訳でディルクさんの所に明日お邪魔してきますね!」

「まあ好きにすれば良いが……くれぐれも周りには気を付けろよ。不審者が居たら即殺して良いからな」

「流石にそこまではしませんけど……でも気絶くらいはさせますよ。自衛くらいはしますから!」


 流石に無抵抗は有り得ないし、そもそも大通りを歩いていくから平気だもん。

 変態即滅、ってお兄ちゃんも言ってたし。……まあお兄ちゃんが変態っぽい触り方してきたから説得力はないんだけどね。


 大丈夫ですよ! と意気込む私に、オスカーさんは何故か溜め息をついて「俺も着いていかないと怖い」と言った。そんなに心配しなくで良いのになあ。

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