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師匠は規格外です

「もう俺は絶対にお前を起こさないからな」


 どうやら夢ではなかったらしい。

 オスカーさんを抱き締めていたら、オスカーさんが藻掻いて腕の中から抜け出して私の頭を軽く叩かれた。痛みに意識が緩く覚醒して起き上がったら起き上がったでオスカーさんにローブを巻き付けられるし。何なんだろう。


 もぞもぞと起き上がって瞳を擦りつつ、欠伸。

 外を見れば、もう太陽が結構な位置に上がっている。……ああ、これはオスカーさんが怒る筈だ、思い切り寝坊してる……!


「すみません、今着替えて、」

「頼むから俺の前で着替えようとするな!」

「師匠が部屋に居るんですよ……?」


 俺の前で着替えるなって、そもそもオスカーさんが居るんだもん。別にローブにくるまってたら中で着替えられるし。

 未だ消えぬ眠気にぼんやりとしつつ「どうしようもないでしょう」と首を傾げたら「着替えるなら言えば出ていくに決まってるだろ!」と慌てて出で行ってしまった。


 ……どうしたんだろう、と暫く考えていたものの、頭が起きてくると自分も馬鹿な発言をしたな、と思えるように。

 流石に目の前で着替えるのは駄目だったかもしれない。いや、寝間着に手をかけてすらいなかったから問題はないと思うけど。


 オスカーさんにちょっと悪い事をしちゃったかもな、と思いつつ、私は外で待つオスカーさんを長く待たせないように急いで着替えた。




「で、これからだが」


 改めて顔を合わせた私達は、今度こそ作戦会議をする事に。

 ちゃんとばっちり服は着替えたので、今度はオスカーさんも視線を合わせてくれた。……心なしか、そわそわしてるけど。


「兎に角、一人で全部は認めない。別に実力を見せるというのなら、二人でも充分だ」

「それじゃあ一人で出来るようになったって証明できないじゃないですか」

「見ていれば分かる」


 兎に角、オスカーさんは私に任せるつもりはないようだ。ぷううと頬を膨らませて不満を露わにしようとも駄目だの一点張り。

 ……何か最近オスカーさんがやけーに慎重というか私を気遣って危ない事をさせようとしない。今回それが顕著で、本当に依頼を受けるまでにどれだけ説得に時間を費やした事か。


「……私が折れないと師匠は折れてくれないので、じゃあそこは諦めます。代わりに私の事ちゃんと見てて下さいね」

「ちゃんと見てるだろ」

「む。まあ最近は私ばかり見てますもんね」


 ……なんというか、ちょこっと過保護というか。今まで放任してきた反動みたいな感じで私の事を構うのだ。嬉しいけど、今までが今までだからどうしたんだろうって心配になる。

 私、そこまで危なっかしかったかなあ。そりゃあ変質者は怖いけど……。


「で、どうやっておびき寄せましょうか」

「まあ餌を置いておびき寄せる、とか、あと……浅瀬に居るなら、そこの湖の被害を考えないなら湖に衝撃を与えて浮かび上がらせる、とかも出きるな。抵抗がないなら湖でも楽に倒せるだろう」

「衝撃……ですか?」

「まあ水中で軽く魔法を爆発させれば浮かび上がるぞ。魚もまあ死ぬだろうが……」

「怒られそうですよね」

「一体一体相手にしてたらきりがないけどな。比較的浅い部分に魚人種が出てきているそうだから、加減すれば深刻な影響もないだろう」


 ある程度の犠牲を容認して早く被害を収めるか、気長に地道に倒していくか。但しゆっくりすれば余計に本来そこに住む生物や人にも害がある。

 ……なら、選ぶべきは前者なんだろうけど……。


「本当に被害度外視して良いんだったら、一瞬でケリがつくんだが……」

「一瞬?」

「湖干上がらせる」

「……湖を?」

「ジュッ、とな」

「じゅっと」

「そうしたら依頼達成だが、まず間違いなく苦情が入るな。救ってくれと言われた観光資源をなくすから」


 うん、オスカーさんが今物凄い事を言った気がするけど聞かなかった事にしよう。私の師匠は凄い人、それだけ分かっていれば良いだろう。

 ……湖、かなり大きいって地図には載ってたんだけどな。池を干上がらせるんじゃなくて、湖を干上がらせるとか冗談だよね。そうだよねオスカーさん。


 あはは、と笑って今の発言は聞かなかった事にして、私は現実的で建設的な意見を採用する事にする。

 よし、魔法で衝撃を与える方向でいこう。水産資源と観光資源、大事。


「……おい弟子、流石に今のは冗談だからな、流石に俺もそこまで考えなしじゃないからな」

「そ、そうですよね、びっくりしちゃいました」

「流石に一発じゃ干上がらせられないだろうから、数発は撃たなきゃ無理だ」

「出来るんですね!? なにこの師匠、師匠色々おかしい! 普通有り得ませんからね!?」


 どうしよう、私の師匠は改めて何か色々と規格外過ぎる事を思い知ったの。何したら湖が干上がるんだろうかほんと。あのさも当たり前な様子だと間違いなく出来る。


 師匠おかしい、と口にしたら「お前に常識を諭される日が来ようとは」とか言われてしまった。失礼な。


「兎に角! 最初の案にします、良いですね」

「分かってるよ。冗談と仮定で言っただけだったんだ」


 オスカーさんの洒落は洒落にならない。しかも実行しようと思えば出来る辺り色々と恐ろしい。「お前が戦う前に終わらせたかったんだがな」とか言ってるけどそれ意味ないし確実に駄目だからねオスカーさん。

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