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強制任務です

 この国の第三王子に呼び出されて護衛を頼まれる、なんて誰も想像つかなかった。というか私みたいな新入りが、お偉方、それも王族の護衛とか普通あり得ない。


「……あのう、失礼ですが、何故私が……? 護衛は彼で充分だと思うのですが」

「ん? 純粋に見目の整っている女性が居た方が落ち着くだろう」

「この女好きめ」

「美しいものを愛でるのは男女共通だと思うがね。色目を使ったつもりはないし、奥方もそなた一筋であろうに」


 ぱち、とウィンクを向けられて、ひとまず頷いておく。

 いやオスカーさん一筋なのは当たり前なんだけどね、鑑賞用として側に置いておきたいっていう事なのだろうか。それだったら私でなくても、もっと見目麗しい人が居ると思うんだけど。


「まあ美しい女性というのも一つの理由だがね、純粋にそなたの実力を買っているのだよ」

「は、はあ、実力……ですか? まだ私は新米の魔法使いで、実績とは縁遠い存在なのですが」

「謙遜を。そなたは転移が使えるのであろう? それが使えるだけで、充分に並外れた存在であるというのに」


 それを言われるとそうなのかな、と思う。

 転移魔法は最高位の魔法使いですら使いこなすというのは難しいとされているし、オスカーさんも完璧に使いこなせている訳ではない。オスカーさんは自宅に座標を固定しておいて飛べる、といった感じだし。決まった場所に飛ぶ分消費は少ないんだけどね。最近では協会とか私の実家も飛べるようになってきたので、便利になっている。


 私は一応行った事のある場所ならどこへでも飛べるので、その点では非常に便利な存在だし護衛にうってつけだとも思う。集中力や魔力が切れなければ、護衛対象を抱えて逃げられるのだから。

 欠点としては、痛みとかが強いと集中出来なくて飛べないって事くらい。なので、もしもの時はオスカーさんが時間稼ぎしつつ私がシルヴィオを避難させる、といった事ができるので理にかなっているとは言えるのだけど。


「……新米がシルヴィオ殿下の護衛とか、周囲に反対されません?」

「ユルゲン殿の秘蔵っ子と言えば割と納得してくれるぞ? そなたら夫婦は王宮でも割と有名でな。問題はないぞ」


 なんて事のないように言う彼だけど、王宮でも有名とか言われると胃に悪い。

 庶民には縁遠い王族や貴族達に名前を覚えられているって相当でしょう。あまり知りたくなかった事実だ。


 うぇぇ、と思わず顔に出ていたらしく、それをイェルクさんに見られて笑われた。

 そういえば、イェルクさんはシルヴィオと親戚とかなんとからしいけど、王族の親戚って貴族でも上の位置に居るよね? イェルクさんって貴族だったの?


「あの、質問なんですが……イェルクさんって王族の方だったのですか」


 恐る恐る質問をすると、イェルクさんは目を丸くして、それから苦笑。


「まさか。僕は王弟の庶子の息子だからね。確かに血は引いてるけど、紛れもない平民だよ」

「庶子って」

「あれだよ、よくある高貴な方が外見のよかったメイドに手をつけたってやつ。結局、ごたごたがあって祖母は王宮を辞して母を育てたんだよ、実家からも出て平民になってね」


 祖母は元々貴族の令嬢だったそうでねー、とのんびり笑ってるけど、当人たちからすれば結構な事件だったのでは。


「まあ、母は平民と結婚して僕を生んだって訳。僕は単なる剣士だし、継承権なんてまったくないよ。……まあ、先祖返りというか、王族の血が濃く出たらしくて、見かけはこうして似てるんだけどね。だから余計な事に巻き込まれたし」

「余計な事?」

「僕を影武者にしようとかそんな感じのね。ほら、パッと見そっくりだろ?」


 最初から感じていた事だけど、イェルクさんとシルヴィオは確かに似ている。

 もちろん並んでみれば細かい差異はあるし体格もやや違うけど、よく知らない人が見たら勘違いするだろう。イェルクさんがシルヴィオのような服を着たら私も一瞬分からなくなりそうだし。


 そういう似ているという部分を利用して危険を肩代わりしてもらう、というのは王族にとっては正しいのだろう。本人はかなり迷惑そうだけど。


「私としては掘り出し物であったがな。ほら、格好だけ同じにして部屋に置いていけば抜け出せるし」

「頼むから無断で抜けだすのはやめろ。護衛のこっちが困る。もし何かあったらどうすんだ」

「だから貴殿の奥方の力も借りたいのだかな」


 そこでこっちに話が飛んでくる。

 いや、シルヴィオの言いたいことも分からなくはないんだけど……城下町にくりだすのは決定なんだね? 大人しくしてるつもり、絶対ないよね?


「……あのー、これって拒否権とかないやつですよね」

「まあそうだな。案ずるな、報酬はたっぷりと用意しよう」

「いや生活には困ってないんですが」

「旦那の護衛している姿を見たくないか?」

「それは見たいです」

「ソフィ、乗せられるな」

「どちらにせよ個人指名だから諦めてくれ。受けてくれるな?」


 なんとも爽やかな笑顔で言われて、私はひきつった笑顔ながら「つつしんで護衛の任拝命いたします」と答えるしかなかった。


大分更新遅れてすみません。

遅くなりましたがご報告させていただきたいことがありまして、1/26に『最強魔法使いの弟子(予定)は諦めが悪いです2』が発売いたしました。

こちらで完結となります。

イラストは一巻から続きましてあり子様にご担当いただきました。素敵なイラストに彩られたまほでし2を手に取っていただければ幸いです。

表紙や得点SSについては活動報告をご覧いただければ幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

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