表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/149

はじめの一歩

 転移、というのは並大抵の人間が出来る芸当ではない。魔力量と、魔力の制御力、感知力がものを言うそうだ。

 オスカーさんはほいほい使っているように見えるけど、ユルゲンさん曰く、あれは完全なものではないらしい。一方通行なのは、扱いきれなかったから自分なりに最適化した結果、だそうな。

 本来ならば、一方通行ではないし場所も自分が指定出来る、但し自分が行った場所に限るそうだけど。


「遠距離になればなる程、転移は難易度が上がるんだよ。座標の指定が難しくなるからね。だから、オスカーは自宅の地下室に目印をつけて座標を固定してる。オスカーはあれで満足してるみたいだけどね」

「……ううむ、聞けば聞く程難しい気がしますね」

「まあオスカーは細かい調整が苦手だから、あそこで止まってるんだよ。その点、ソフィちゃんは繊細な使い方が出来そうだから、頑張ればなんとかなるんじゃないかな」


 何とも楽観的な言葉をくれるユルゲンさん。

 ユルゲンさんは基本的にのんびりしてるしマイペースな方だから、偶にどうして良いのか分からなくなる。まあ、嘘はわざわざつかないだろうし、見込みはある……と思って良いのかな?


 というか、そもそも転移の式とかさっぱりなんだよね。参考書とかオスカーさんの書庫になかった、というか隠してるんだと思う。


「えーと、そもそも転移の式は」

「あー、転移って一応、最高位に上がるまでは使わせない方が良いんじゃないかって話なんだよね」

「えっ、じゃあ私駄目じゃないですか」

「んー、ソフィちゃんは特別、というか……そもそも君らみたいな魔法に愛された子は、枠組みすら意味ないんだよね。一度身に付けてしまえば、息をするように振るうから」


 覚えさえすれば難なく振るうから、あまり制限しても意味がないらとの事。

 ……そういえば、私って覚えるのには時間かかったけど、使うのにはそうてこずらなかった。気付けば、体に馴染むように、使いこなしていた。

 それが、この体質の恩恵。魔法を扱うのにもっとも適した体質。


 喜ばしいのだろうけど、私にはあまり実感がなかったりする。身近なオスカーさんが普通に扱ってるから、血の滲むような努力を重ねて魔法を使う、なんて事を見た事も経験した事もない。

 や、努力は勿論してきてるつもりだけど……全部体質のお陰だ、と片付けられてしまいそうなのは、複雑だったりする。


「そもそも制限かけるのは扱えないだろう人に触れさせない為、だからソフィちゃんなら問題ないだろう。という訳ではい」


 いつの間にか、手にしていた紙を手渡してくるユルゲンさん。……いま、いきなり現れたよね。


 私の探るような視線に「ああ、これも転移の応用だよ。ちゃんと目的のものが何処にあるか正確に把握してないと無理だけと」となんとも簡単そうに宣うので、ユルゲンさんが改めて魔法使いの頂点に君臨しているのだと思い知る。

 オスカーさんにも出来ない事を、いとも容易く行うユルゲンさん。……私は、こんな風になれるのだろうか。


 手にした紙には、とても細かく指事語やら座標特定の行程やら書かれていて、何だか覚えるのが大変そうだ。

 基本的に魔法使いでも最高位の人が扱うという転移式、他の物よりも複雑で、一つ一つの意味を理解しないと全く発動しないだろう代物。……が、頑張らなきゃ、実践どころか覚えるのも難しそう。


「今回は、その紙に書いてあるの丸暗記ね。丸暗記出来たら、もう一度私の所においで。そこから実践だ」


 魔法に愛された子、と言われようが、記憶力は自分の努力次第なので、私が頑張るしかないのだ。

 よし、と意気込んだ私に、ユルゲンさんは一層笑みを深めた。




「師匠ー」


 書庫に居るらしいオスカーさんを探しに行くと、立ち読みしていたオスカーさんを直ぐに発見した。オスカーさんは、私の登場にやけに驚いているみたいだけど。


「早かったな」

「今日は相談だけでしたから。お待たせしましたか?」

「いいや、早すぎて驚いたところだ」


 ぱた、と本を閉じて棚に仕舞い、それから私の頭をくしゃりと撫でる。きょとりのオスカーさんを見上げれば、ただ穏やかな瞳で「何でもない」との事。

 ……最近とみにオスカーさんが優しくなった気がするのだけど、気のせいかな。や、心配かけさせて滅茶苦茶気遣わせていたりするから、それのせいなのかもしれないけど。


 何にせよ頭を撫でられたのは嬉しいので「へへー」と笑ってされるがままの私。


「で、何話してきた」

「ご機嫌取りしても話しませーん」


 然り気無く聞き出そうとするオスカーさんには笑ってはぐらかすと、オスカーさんはやや不満そう。でも、無理に聞き出そうとはしない。

 気になってるんだろうなあ、オスカーさん。でも教えてあげない、折角なら完璧に身に付けた所で見せびらかせたいのだ。


 ふふふー、と企んだ笑みを隠そうとしない私に、オスカーさんは諦めたのか苦笑しつつも頭を撫でてくれた。

この話で100話です。まさかこんなに続くとは。

この章で終わ……る……筈。終わらなかったら六章突入します。

これからも宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ