52話 座敷童子
「マリちゃんって結構しぶといと言うか、ダメージ貰わない様な立ち回りですよね?相手強かったんですか?」
「強いと言うかゲーム的に死ぬのは仕方ないし、確かにしぶといですけど尻尾全損すると脆いですよ?盾持ってないですし。」
「そう言えばなんで盾持たないんですか?あのゲームって盾持っのが普通な感じですけど。」
「単純に大麻がに2属性武器だからですよ。それにジャストガードって気を使うし結構邪魔な時は邪魔ですからね。ガードモーションでダメージ軽減は出来ますけど、盾を装備してそっちのスキルまで考え出すとループやらを更に考えなくちゃいけなくなりますし。」
盾のスキル自体はそこまで多くないし、単純明快に防御力を上げたり突進して轢き殺したりシールドバッシュで弾き飛ばしたり、変わり種だとサーフィンしてなんてのもある。ただ、最大のダメージソースはジャストガードと言う後の先を取る方法なのよね。
プレーヤーのスタイルにもよるけど、押せ押せしてる時にジャストガードのタイミング探るのは大変だし、なによりモンスターに対する観察眼が必要になる。毎回モンスターの動きを読み解くのは大変だし、今回みたいな初見モンスター相手に上手く立ち回るのはかなりのスキルがいる。その辺りが上位陣とエンジョイ勢の違いかな?
「割とマリちゃんは押せ押せなんですね。」
「チマチマやるよりはガンガン攻めてる方がゲームしてる気になりますからね。ゲームの種類にもよりますけど、攻める時は攻める。攻められない時も糸口探して攻める。守りに入ったらジリ貧な事が多いですからね。」
しかし腹が減った気がする。食事しつつ敷田さんと動画の打ち合わせをしたけど、次はやはり領地防衛戦をメインにやろうと言う話になった。でも、今の所俺と秋ドンさんしかチームにはいないしフロムさん達にはメッセージ飛ばしたけどどうだろう?
篝火さんは初心者と言う事で来そうだけど、フロムさんはなぁ〜。防衛戦が嫌いなわけじゃないけど時間的な拘束が結構あるからガチ勢向けのイベントではある。ただ、絶対に張り付いてないとダメと言うわけじゃないから、結果として役割分担出来る人が多い方が有利と言う側面も出て来る。
そんな事を考えつつ編集して終わったら敷田さんに動画を送るかな。自分とAIでチェックしても第三者目線と言うのは大切だしね。
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元彼が狐娘になった。混乱するが好みだしそういう者と関わりもあるからそこまで・・・、やっぱり気にする。そもそも私のいる宮内庁の部署は古くは朝廷時代まで遡るらしい。曰く、妖怪やら荒神やらを鎮めたり討伐する所。
表向きは皇室警護となっているが、裏ではその時代その時代で人とは違う者達と時には争い時には協力して付き合って来た。そして科学全盛期の今の世の中にもそう言った者達はひっそりと暮らしている。多くは一次産業、例えば林業や漁業を生業としつつ自分の好みの土地に根を張り人の中で生きているが、時代の流れによりデジタルの場を好む者も出て来ている。
あの三枝と言う医師と話したが、彼女も私達側と言うか妖怪を知る側の人間で間違いない。そもそもあの病院のトップ二人組が妖怪と認定されているのだし、そこそこの地位がある者には話していると考えられる。
まぁ、そこはいい。問題は真利だ。彼は普通の会社員で特段犯罪に関わる事もなければ妖怪に関わる様な事もなく、至って普通の人物で好ましい人だった。割と私の性格は猪突猛進らしいが、知り合ってからそこそこ時間をかけて好ましいと思った人に好意を抱くのはおかしな事だろうか?
ストーキングするでもなく、きっちりと交際を申し込み承諾されて付き合っていたらから問題はないだろう。私の見た目は別として可愛い物は好きだし、子供も好きだったが彼は子供はと言うタイプだったので泣く泣く別れたが、彼が狐娘となってしまったからにはよりを戻す云々ではなく嫁として迎えよう。
ええ!もう保護と言う名のもと甘やかしつつ愛溢れる愛の巣を作り、必要なら私達の協力者として共に働きつつ現場でも背中を預けつつ・・・。
「おい、華澄。キモい顔するなよな。」
「縛りますよ?それと私の顔はキモくない。」
「おぉ、怖い怖い。座敷童子を縛る意味知ってっか?不幸呼ぶぞコノヤロー!」
「家から離れられない座敷童子はその家を繁栄させるしかないでしょう?本当に幸運が来るかは別と考えてましたが、今だけは座敷童子の力と言うモノを信じて上げましょう。」
「へー、珍し。なんだよ、人の力にあやかって何を得た?報酬はまんじゅうでいいぞ?」
「そう言うと思ってお饅頭を二箱ほど買ってきました。」
「・・・、ヘイAI!明日の天気は?」
『この地域の明日の天気は晴れです。西高東低の冬型の配置の為・・・。』
「なにを聞いているんですか?ほら、こんなに散らかして。」
「うるせぇ、暇なんだよ。外に出るでもなく遊ぶ相手がいるでもなく、やる事と言えばゲームばかり。過去から現代に至っても結局人の幸福ってのは自己愛ばかりか?」
「煩いですよ座敷童子。その自己愛もない人は人ではなく化物です。人が生きると言う事は先ずは自身が生きているから言える言葉言葉であって、他者を優先して死んでしまっては元も子もない。」
車をとばして帰ってみれば、家の中で市松人形があぐらをかいて頬杖を付きテレビを見ながら悪態をついてきた。見た目だけなら可愛らしい人形で古臭い人形ではなく現代風のドールの様な顔付きをしていて、黒髪に白いメッシが入ったりしている。はっきり言おう、コイツは男の娘だ。
可愛らしいモノが好きだと知った上司が私に押し付けてきた妖怪、座敷童子。能力は確かな様だが、如何せん口が悪く部屋も散らかす。真利を部屋に呼んだ時何度コイツのせいでだらしない女と思われて怒りに震えたか!
だが、今日の事でその能力は本物だと確信は出来だ。部屋を散らかすのは何故か?本人曰く骨卜と言う骨を使った占いの亜種で、たまにか故意かは別として散らかった現状で占うと言う。
そして、その座敷童子がある時散らかして私にこう言った『華澄、お前最高についてるぞ?なんか知らんが一気に願いが叶うそうだ。』と。事実、それから少し時はたったがこうして願いはかなった。




