50話 キーテキスト
「この辺りですよね?」
「そや。え〜と、あそこやな。」
チャリオットを飛ばしてればモンスターを蹴散らし、やって来たのは廃棄船ダンジョン。一見して周囲は荒野だけどピンの場所に近寄ると『ピピッ』と言う電子音がする。名も無きダンジョンは色々あるにしても、かぐや周辺のダンジョンは見つけづらいんだよなぁ〜。
地上なら森の中やら山なんかのありそうな場所を探索すれば見つからない事もないけど、事かぐや周辺となるとこうして埋まっている事が多い。そしてこの電子音を聞き逃すと見つからないし、モンスターと戦っていると聞こえづらいから更に見落とす確率は上がる。
「まだ攻略されてないみたいですね。」
「完全攻略なら崩壊やし、途中攻略で撤退ならウチらの旨みも減ってまう。なんにせよ中覗こうか。」
「戦力的に2人で厳しかったらどうします?」
「そんときゃ野盗して放置やな。行けるとこまで行って情報売ってもええし。ボス残しときゃ誰か攻略するやろ。ツキさん的にはなにか欲しいもんある?」
「ザコのドロップはいいとして、かぐやマップならバイオアーマーとか戦闘パーツ、他は素体ですかね?素体あるとカスタムしたロボが召喚出来ますし。」
魔法での召喚はスキル依存だけどロボの召喚はスキルではなく発進依頼となる。コレは運営のテコ入れで、魔法が苦手な種族に対しての救済処置とされてるけど、プラモとか好きな人には結構ハマったな。
スタートは機械系ボスモンスターからレアドロップである素体を入手する所から。その後戦闘パーツやらを使い自分好みのロボを作る。召喚出来るのは1体までの制約があるにしても、召喚獣とは違い自分の戦闘スタイルに合わせた機体が呼べるし、戦力としてもちゃんとカスタムしていれば十分に数えられるので作る人は多い。まぁ、コレにもレベルキャップと言う運営の悪意が出てくるんだけどさ。
「ツキさんロボ持っとらんの?」
「いますけどぜんぜんカスタム出来てないですねぇ。そもそもドロップ率が低くて素材も中々集まらないし、流通自体もレベルキャップのせいで少ない。総合的に見て後回しになっちゃうんですよね。」
「確かにかぐやこれんのレベル190以上やからなぁ〜。無理くり来れん事もないけど、モンスターごっつ強いし。」
「下手するとフィールドザコがザコじゃないって話になりますからね。中級もボロボロ出てきますし。」
「ツキさんソロならどこまで狩れる?」
「う〜ん・・・、相性次第としか。流石に高魔法耐性のモンスター相手にソロだと勝率は落ちますね。」
「了解了解、なら魔法耐性高いんウチが貰うわ。ほな行こか。」
ダンジョンと言いつつ地面に埋まっているのでハッチを開いて飛び込む。そこそこの浮遊感とともに着地して周囲を見ると結構広そうな感じだな。ただ、デカい試験管やら割れたガラス窓なんかがあるから宇宙生物は潜んでいるかも。
「属性弾は火でええな。山程キュウリやらが取れるとええんやけど・・・。そこ!」
「寄生された死体かぁ。遠距離ですね、分かります。ファイアーバレット!」
かぐやマップによく出る寄生された死体。ゾンビと違い走る、道具を使う、上から降ってきて奇襲する、焼かないと寄生体と言う毒を振り撒く等々。ザコながら出来る限り早くご退場願いたいモンスターである。
『アァァ〜・・・。』
「こいつら手榴弾持っとるで!?」
「遮蔽物!遮蔽物!」
緊急回避で壁に飛び込みつつ魔法をやら射撃で牽制!まぁ、寄生体は止まらないからダメージ稼ぎにしかならないけど、腕やらを破損させて手榴弾を封じる。と、言いつつも何個かは転がって来るんだよなぁ〜!
「ダメ高!爆発+火か!盾無しやと危なかった。」
「隠れる方がいいですよ!その前に潰せたらなおよし!走り抜けましょう!ファイアアーマー!」
「ブリキの鎧っと!どっちもカウント30やな。行くでーー!!」
防御力を上げつつモンスターを倒しながら走る。カコンッと秋ドンさんからジャストガード成功音が響くけど、モンスターの数が多いし毒も貰ったな。けど、MPに余裕もあるしここは毒を無視して走り抜けた後に回復しよう。立ち止まってもリポップでモンスターが供給されたら事だし。
「戦闘メカも来たか!邪魔やわ!」
「サンダー・レイ!チェーン・ライトニング!うげっ!対電装甲持ってる!」
機械系モンスターの弱点と言えば水に電と相場が決まっているのだが、宇宙感を出す為かかぐやで出て来る機械系モンスターは水と電気に耐性を持つモノが多い。フレーバーテキスト的には高気密で絶縁体を利用しているかららしいけど、壊れて指示受け付けない機械とか本当に危ないだろ!
「なら撃ち落としちゃる!精密射撃、高速射撃、跳弾曲芸、にソウル・バレット!」
「メカ任せました!私は寄生体の方をやります!」
ゲーム的に死にやすいのとしぶといのは違う。初見殺しやら即死トラップやらも盛り沢山だけど、HPが1でも残れはプレーヤーは死なない為に動き出す。毒はそもままにヒール使って回復しつつバフを盛り、秋ドンさんから援護射撃を貰いつつモンスターの中へ踊りでる。流石と言うか的確な援護射撃は助かるな。
手榴弾持ちは投げる前に斬り伏せればいいとして、工具やら鉄パイプ持ちはボコスカ殴り掛かるから面倒だし、ノックバックしないからタックルして押しやるしかない。そこそこの広さで助かった。
無拍子やら回転斬り、炎をエンチャントしてからの炎舞で寄生体を斬り伏せつつヒールを挟んで回復しながら2人で進む。メカ系もドローンみたいなのから2足歩行までの出てきたな。実弾が爆発やら連続ヒットするのに対して、ビーム系はメカ系魔法よろしく属性が付与されていて1発が重い。
どちらが捌きやすいかと言われるとビーム系かな?連続ヒットすると尻尾がすぐに無くなる。オートジャストガードするって事はねぇ、例え流れ弾でもガードしてしまって尻尾がなくなるんですよ!また生えてくるけどさ。
「ツキさんグレネード持っとらへん?2人で面制圧した方が早いかも知らへんで。」
「ありますけど雑魚いグレネード銃ですよ?ダメージ半減で魔法使えばなんとかならない事もないですけど。」
「2人とも死んどらへんからフレンドリーファイア怖いんよな。MPマーキングに振ってええ?」
「いいですよ、私も毒回復後回しにしてヒール使ってますし。そろそろ安地来ないかなっと!昇龍武斬!」
天井から火炎放射器持って落ちて来る寄生体を斬り上げで迎撃!装備を巫女服に変えたいけど、変えると動きすぎるんだよなぁ〜。そんなこんなでダメージ貰いつつ迷ったりしたけど、どうにか安地へ。途中の採取場所で種やら野菜、肉に鉱石を秋ドンさんが掘りつつモンスターを1人で相手するのには骨が折れた。
そもそもね、下級がザコ扱いなのはいいとしてレベル200とか出すなよ!色々と検証した人曰く、下級レベル200はプレーヤー換算ではレベル20くらいの数値とか言ってたけど、明らかにプレーヤーレベル20の敵じゃねぇ。まぁ、マップ的にはかなり奥のマップだから仕方ないんだろうけどさ。
「ようやく安地かいな。相変わらず運営の悪意は酷い。」
「絶対プレーヤーレベル20換算じゃないですからね、アレ。」
「ツキさん知らへんの?それってゴブリンとかだけらしいで?」
「え?ならここの雑魚は?」
「フィールド適正値も参照するさかいもっと上やな。AIよりプレーヤーが強い言うても雑魚を膾切りしてくれへんのが運営やろ?高レベルで俺つえぇ!したいなら最初の町周辺でええやん。」
「それは確かに。うへっ、ボスとか考えとうないなぁ・・・。」
2人で安地を漁りつつ話すけど、やはり運営は悪い文明だ。そのうちレベル限界250も外れるんじゃない?ラスボス倒しても強い敵やらはどんどん出てくるし、マップも追加され続けるし。宝も合ったから開けるけど、中はバイオ細胞か。生体メカ作るなら山程いるらしいから一応保管かな?
「ツキさんええもん出た?ウチはお金と種と野菜でウハウハや!見てみぃこの浮きキュウリ3000個とか!」
「こっちはバイオ細胞に壊れたAIやらのパーツですね。パーツいらないなら貰っも?」
「種やら野菜くれるならええで〜。メカはアキンド1号作ったし。」
「強いんですかそれ?」
「動く盾と言うか不動の盾やな。ノロマやけどカチカチやで。遮蔽物ない所で呼ぶとモンスター潰しながら飛んでくる。ただ、デカ過ぎてここじゃ呼べへんねん。う〜ん・・・、今から換装して室内戦出来る装備に変えたろかな?」
「変えるなら変えていいですよ。私はもう少し安地を探索してきますね。」
宇宙船を模したマップと言う事で中はメカニカルな感じでありつつ、基盤がショートしている様な演出もある。ゴソゴソ机なんかを漁っていると、乗組員の手記なるアイテムが出てきた。
どうせ生成AIがそれっぽい事を書いているのだろうが、こう言った物を集めている人もいるんだよね。ゲーム中の図書館なんかの本は本当に読めるし、それっぽい歴史やら理論が書かれてるから、読むだけでも楽しい派はいるし。
「え〜と・・・、寄生体が船内で逃げ出してパンデミック?バイオ細胞を乗っ取ってメカと融合してマザーを掌握中?お〜、SFのお約束と言うかなんと言うか・・・。」
『船内に敵性生命体を確認しました。マザーの権限を迎撃機体に集約しこの船を10分後爆破します。繰り・・・、キシャーー!!!』
「あちゃ〜、キーテキストかよ・・・。」
「ツキさんやった?やらかした?」
「不用意にテキスト読みました!ボス倒すかズラかるかですね。10分括りですけどどうします?」
「帰っても縦穴登らないかんやろ?明らかに寄生体降ってくるやん。どう考えてもボス撃破やな。なんかのヒントあらへんかった?」
「多分戦闘メカがボスですよ。権限集約とか書いてありましたからね。10分括りなら多分ボスまで残り2フロアくらいでしょう?」
「ほな10分でボス殺ししたろか。さっき換装も済んだで。」
「身代わり人形もONにしてっと、一応今からバフ盛りますね。この感じだと中ボスはいないでしょうけど、その分ザコが増えそうですし。」
「おおきに!」
2人でバフを盛りつつ3つある通路を見る。どれかが当たりなんだろうけど、時間考えるとさっさとボスへ行きたいな。秋ドンさんと話し合って正面を最後にして左右の扉をそれぞれで確認する。俺の方はハズレでモンスターハウスだったよ!ご丁寧に扉開けたら寄生体にとりつかれてガジガジと耳やら尻尾を齧られた。
ジャストガードしてもキモいモノはキモいのでバフ盛り魔法ブッパで中を焼き尽くす。ただ、トラップは燃えずに不意にビームとかも飛んできて危うくボス前に一度死ぬ所だった。その上ドロップ品がほぼなし、宝箱からも種とか嫌がらせか!
「連続ヒール!戻れ〜、私のHP回復しろ〜。」
「ツキさんはハズレかいな。」
「そう言う秋ドンさんは?」
「宝箱から重粒子砲出たで。レーザーブレードが良かったけど、コレはコレでそこそこ当たりや。生物系ならダメージ上がるし。」
「いいなぁ〜、今回の私は塩っぱい感じですね。大麻を振ってラックを上げときましょう。」
「ならウチにも振ってぇな。前はそれでクリスタル・ビットでたから。」
残された通路を前に大麻を振って気分を上げる。ゲームは数値勝負だけどプレーヤーのやる気だって馬鹿には出来ない。なにせ脳波で操作してるなら、下手にやる気がない操作よりもやる気が合った方が強い気もするからね!




