31話 プロデューサー? 挿絵あり
「それで、なんでまた魔法少女マリちゃんになろうと?」
「ち〜が〜い〜ま〜す。撮影してるんで見れば分かりますけど、さっきまでゲームでボス戦してたんですよ。その時耳を打ちましてね。」
「それで回復魔法ですか。・・・、フブッ。魔法少女の服とか買います?巫女っぽくて赤いやつとか。」
「武士の情け!笑わない!」
「またまた、わざわざライトか何か仕込んでまでやったんだから誰かに見て欲しかったんでしょう?このこのぉ!」
「ライト?何の話ですかソレ。」
敷田殿が意な事を言う。某、この部屋より出ること叶わず、持ち物も私物はなく備品しか得ておらぬ。それ故、らいとあっぷなる技法は出来ぬし・・・、武士の情けと言ったせいで思考まで時代劇風に・・・。そのうちワシとかのじゃとか言い出しそうなのでやめよう。
「ヒールって言ってた時ほのかに光ってましたよ?主に耳が。」
「こそは普通杖なんじゃ・・・。と、言うか光ったんですか?」
「こう、淡い感じに。」
えぇ・・・、わけ分からない身体なのに光るの?淡い感じって夜光虫とか?敷田さんは頭の上辺りを指差してるけどそこって俺の耳がある所だよね、多分。そもそもな話、人は普通光らないはずだし何かの見間違いだろう。
「光の加減で見間違ったとかじゃありません?人が光る分けないですし、放電してたら電気鰻ですよ。」
「人は光ってますよ?バイオフォトンって言って特殊なカメラで見ないと見えないから光ってないと思いがちですけど、代謝活動の副産物として発光してますね。まぁ、微弱で人間の目の認識能力の約1/1000程度ですけど。」
「それなら敷田さんが見えるわけないじゃないですか、そんなカメラ持ってないですし。」
「う〜ん・・・、なんにせよ痛みは?」
「今はありません。ゲームで打っただけだから錯覚的なモノでしょう。」
「なら大丈夫ですね、お昼はステーキ弁当ですけど、塩なんかじゃなくでニンニクバターを別で付けてもらってます。食べれたら食べて貰っていいですけど、臭いがダメそうなら残して下さい。それと、香水とブラシが届いてたので置いときますね。」
敷田さんがステーキ弁当をテーブルに積み上げながら香水を置いて出ていく。取り敢えず、先に香水の香りを嗅ぐけど大丈夫そうなので尻尾に振りかけると言うか揉み込んでブラッシング。絡まらずゴワゴワせず櫛がスルスル入るし、抜け毛もないから楽でいい。香水の方も嫌味にならない程度のどちらかと言えばスパイシー差よりもほんのりとした甘い香りがするしから、虫除けになるならこれを使うかなぁ〜。
結構早く注文した物は届いたし、この分だと下着やら衣類も明日には届くかな?出来ればスマホが早めに欲しい。そもそもスマホスマホって言うけど、昔からそう言われてただけで機能的には多機能電子ツールだし個人のものがないと色々困る。
スマートレンズと連動させてるから失くしてもすぐ見つけられるし、なくても多少はどうにかなるけど仕事やらする人はないと仕事が滞るし、スマートレンズの機能にも限界もある。
「ニンニクバター・・・、元からあんまりニンニク食べないけど多少は舐めて・・・、食べられない事はないけどそこまで好まないかな?おっ!岩塩と粒胡椒があるしそっちで食べよ〜。」
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「三枝しゅ・・・。」
「ですから白波先生がコチラに携わる事は・・・。」
「しかしですね、昨晩大量のデータDLが発生した際私の・・・。いえ、わかりました。そこまで言うなら今回は引きましょう。」
入れ替わるように白波先生が出て行く。あの人はあの人で優秀なんだけど、私とは別の方向で研究してるんだよね。私達はナノマシンをデバイス制御して本人に自覚して貰ってから治す方向性だけど、白波先生は完全に外部から医療ポッドを介さす簡易的な方法でナノマシンに直接アクセスしてから治療する方向かな。
昔からその議論はあって、白波先生の話を指示する医療研究者も多い。でもそれが中々形にされないのは、外部からの簡易アクセスを許可してしまうと強制的な不調も作れてしまうから。医者と言っても人間で悪用しようと思えばいくらでも悪用出来てしまう。だって薬だってオーバードーズすれば身体には毒薬だし。
白波先生は私を躱して部屋を出て行き、三枝主任はどこか疲れた顔でPCと昨晩使った医療ポッドを見る。特に変わった所のない医療ポッドはマリちゃんが何かをDLしたと言うログも消されて普通のポッドにしか見えない。でも、DLした方のマリちゃんはなぁ・・・。
「大丈夫ですか主任。」
「大丈夫ですよ敷田さん。昨晩の名でマリちゃんのデバイスに接続した際クラウドにある医療データ・・・、取り分けナノマシンやその他のデータをマリちゃんはと言うかデバイスは大量にDLした様です。大多数は問題のない閲覧可能データでしたが、その中にあった白波先生の論文にもアクセスしていた様で、その件で話に来られていました。」
「あ〜『私の力が必要でしょう?』的な?」
「そんな感じです。しかしどうしました?昼はマリちゃんの食事観察と言う話でしたが。嗅覚的な発達や、ないと出ていますが一応、ニンニク等への拒否反応がないかを見ると言う話でしたが。」
「いえ、それよりもですね。スマートレンズに送るので見て下さい。」
「ふ・・・、む?」
「どう思います?」
「細胞の極度な活性化?この時のマリちゃんの状態は?流石に自傷行為が合ったとは思いませんが・・・。」
「茶化して帰ってきましたけどそう思いますよね?本人曰くゲームでダメージを負って、それが現実にもフィールドバックしたと思いこう・・・、ヒールと呪文を。」
「ヒール?ゲスな悪役倒れろと言う怒りですか?」
「そっちのヒールじゃなくて回復魔法のヒールですよ!」
「・・・、到頭マリちゃんは魔法まで使い出したと?いえ、厳密にはナノマシン操作を感覚で体得した?確かやっているゲームでの回復手段はアイテムか魔法でしたね?」
「はい、結構アクション性のあるゲームで魔法とアイテムを使う感覚はプレーヤーによりますけど、マリちゃんのアバター的には多分回復魔法の方が・・・。」
「・・・、敷田さんゲームに明るいですか?」
「う〜ん・・・、明るい明るくないで言えば普通ですかね?どちらかと言えば実況とかを見て満足する方です。えっ?今から私もゲームに参戦した方が?」
「いえ、それなら参戦は見合わせてマリちゃんのサポートの方をお願いします。前に配信者やるなら敷田さんに話した方がと布石も置いてありますから。なんにしても私は1度トラブルオンラインと言うモノのデータを確認しつつどの様な魔法やスキルが存在するのかを確認します。敷田さんの方は一旦マリちゃんが魔法を使おうとするのを止めつつ、配信の方で昼から話し合って下さい。」
「それはいいですけど、配信しても大丈夫なんですか?」
「今は音声と耳だけですが、今からそれを中止しろと指示すれば疑問も出てくるでしょう。それならそう言う風にプロデュースした誰かがいると視聴者には思わせ、マリちゃん側には何かあれば私達に相談する様に仕向ける。当然実名等は厳禁ですが、そもそもマリちゃんは元の姿からかけ離れてしまっているので、仮に元同僚が見たとしても気付かれる可能性は低い。」
「要は私達が相談役となってデータを取り続けると。色々買うとして経費で落ちます?」
「必要な物があって落とせると私が判断したら経費としましょう。ダブルチェックは大事ですからね。」
「それは大丈夫ですけど顔出しとかどうします?今はフレンド間にアドレスを教えると言う形ですけど、下手したらもうオープン配信で流しているかも・・・。」
「配信者そのモノは確か何十万人もいるのでしょう?それならわざわざマリちゃんを探して見るのかと言う話です。コマーシャルの様に勝手に流れて来た映像に気を止める人がどれだけいるか・・・。」
「撮影もアップロードもかなり簡単になりましたからね。その分、ネットモラルの授業やセーフティなんかで番地が表記された物は勝手に消えたりしますけど。と、確かに配信者自体の総数は多いですけど配信頻度は人によりけりで一回で終わる人もいれば続ける人もいます。そして、続けるチャンネルほど露出は増える。1発当たり屋見たいな人もいますけど、マリちゃんの考え的には継続配信ですよ?」
「その人気が出るかはマリちゃん次第でしょう。発光現象の方も魔法の方も考えないといけないので、私生活部分は何か集中してもらっていた方が私としても安心出来ます。」
「う〜ん・・・、顔出しタイミングとかは?」
「それは敷田さんに任せましょう。マリちゃんがそう言うプロデュースと言う部分を理解して活動するなら、私はそこまで危惧するものではないと考えていますし。」
「分かりました、その方向で話してきます。」
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どうやら知らないだけで人は光るらしい。ステーキ弁当を4つ食べて一息。歯も磨いたし後はシャワーでも浴びようかな?ナノ洗浄とかはしてもらったと言うか、検査でナノ洗浄状態になったけど湯船に浸かりたい。
病室にはシャワーしかないし、外には中々出られないから当面の夢と言えば夢かな?でも、認知度が上がったとして温泉に入れるんだろうか?まぁ、内湯付きの旅館にでも泊まればいいか。
「戻りしました〜。」
「おっ、なんか検査ですか?」
「それもなんですけどマリちゃんは配信者になろうとしてるんですよね?」
「なろうとしていると言うか、先生達の話を総合して出来る事を考えると認知度上げるならそれかなと。別に売れっ子になりたいわけじゃないですけど、そこそこ知られていれば、こんな姿でも検索して私だと分かれば納得してもらえますからね。」
「なるほど、なら私がマリちゃんのプロデューサーですね。配信に際しての注意事項とかもありますし。」
「はぁ・・・、まぁ、1人で考えてするよりは色々意見もらえた方が助かりはしますけど・・・、大丈夫ですか?忙しくありません?」
「いえいえ、心のケアの一貫だから大丈夫ですよ。基本的にオープン配信に乗せる前に見せてもらえればいいだけですからね。私の方としてはプロデューサーと言いつつ相談役的なモノと考えていますし。なんなら今、フレにだけ公開してるものをアップしてみますか?反応調査的に。」
「う〜ん・・・、アップしてみましょうか。」




