24話 どうやって外に出よう?
「その筋肉、見せ筋かぁ?」
「餌だ!餌だ!餌だ!」
サクラさんが大剣を一気に振り下ろすのをバーサーカーフイッシュはステップで交わしてレバーに1発。しかし、パンプアップしてインパクトをずらしたのか、一歩も引く事なく剣の腹で打ち付けてノックバックさせる。
レベル的に今回の集団は110前後。タイマンなら先ずは負けないけど、大剣ってダメージが大きい代わりに扱いが難しい。ガード迄は片手武器よりも1テンポ遅れるし、両手持ちなので対応力が片手武器よりも低い。ただ、それを補うだけの魅力は確かにある。
「決闘の誓い・・・、私から逃げるな!」
「お前を食う!お前から食う!その肉寄越せ!」
「挑発スキルが入ったか、毒とか効きづらいくせして挑発とか魅了はかかるんだよね、コイツら。」
「だからアイツにしちゃ好敵手よ。ほれ、お前さんの相手はワシじゃ。フィールドスタンプ、亜人勢の火力を舐めなさんなよ?骨砕き!」
フロムさんは手堅いな。地面揺らしてスタンさせてから貫通ダメージ出してる。ただドロップキックで飛んでくるけど、それも織り込み済みなのか掬い上げる様に打ち上げた。撮影妖精と言うか、俯瞰視点で3人を写しているモノと個人を写しているものがあるから、後で編集したりアテレコしたりしないとな。
そんな事を思いつつ眼の前の1体に集中!脳波操作の最適化と言う話だけど、狐火もいけるかな?スキルやアーツが多い分、雑な運営は何をどう最適化したかの詳細は教えてくれない。だからこそ、カンストしても手探り感はあるしマイナーチェンジも多い。それによって見直される武器とかもある。
「今日は真正面からもやってやんよ!」
尻尾を前にして毛達磨っぽく見えるけど、コレでジャストガード9回!インターバルを計算すれば無限ガードもいける!流石に俯瞰視点苦手をそろそろ克服と言うか、慣れないと配信するにしてもマズイよね?
「アクアジェットナックル!」
「打刀:影打ち!更に更に狐火!」
懐に潜り込むならやっぱりコレ、出も早いしカウンターが狙える。更に姿勢も低いから拳やらをやり過ごせるし、何より抜刀するのではなく柄打ちなので振り抜く必要がない。PVPだと読まれやすい場面もあるけど信頼度はかなり高い。
それに狐火も自由自在と迄はいかないものの若干操作出来るっぽい。前は勝手に飛んで行って爆発してたけど、アプデのおかげか順番やら角度は決められそう。影打ちでカウンターを決めて下がった所に狐火で追加ダメージ、更に飛び蹴りで追撃して頭に縦回転斬り、流石にこの程度で倒れてくれないので更に剣のアーツで追撃!
「こっちは終わったぞ〜。」
「私も終わりましたよ〜。フロムさんHP減ってるからヒールかけとくね。」
「ボンバーラリアットォォォ!!!!我が筋肉敗北はなし!」
背中に大剣を納刀してラストフィッシュは爆発するダッシュラリアットかぁ・・・。HPゲージもないのによくやる。ポリゴンになって消えていくモンスターを見つつ討伐カウンターが増えるのを確認。討伐依頼なので取り敢えず倒せばいい。剥ぎ取りもするけど褌とか鱗だしなぁ・・・。
いや、領地戦考えると鱗はあっても邪魔じゃないか。褌の方は何故か肥料にもなるし。面子的にも勝てるのでそのままバーサーカーフイッシュを規定数狩ってクエスト達成!昼に討伐しておいたのでよかったよかった。
「それで、これは誰からの発生クエストだ?」
「オーランドのパン屋。昼に街が襲撃されてNPCが入れ替わった。」
「襲撃発生か、そう言ゃあ若干NPCの顔も変わってたな。」
「なに!?おにいちゃん波に乗り遅れる!私達も探しに行こう!」
「手伝ってくれたお礼にサクラさんには余ってる秘伝書あげようか?大剣アーツとかほとんど使わないし。」
「う〜ん・・・、ちょっと見せて?」
フレンド登録してアイム欄を見せる。単純に売るにしては勿体ないし、かと言ってダブる秘伝書もある。そんな時は手伝って貰ったお礼に渡してしまってもいいし、自分で探して集めるからと断る人もいる。後は次に助けてくれたらいいと言う人も。
「この大剣秘伝書で転送突きってなに?」
「確か剣先を対象の腕1本分くらいの手前に転送するスキルだったかな?ゼロ距離だと防御不可能だから確かそんな感じだったと思う。」
使い勝手がいいか悪いかと言えば、俺としては使い勝手悪そうかな?剣先が転送されてたらその分リーチが減りそうだし、対空技とするにしても不意打ちするにしてもどうなんだろう?地面からも出せるらしいけど、それを初っ端で狙う?
「ほほぅ・・・、貰っていいならそれ下さい。」
「どうぞ〜、手伝って貰ったし記念にあげちゃおう。あっ!秘伝書狙いで辻助けやらフレ申請はNGですよ〜、狐憑きのツキはお硬い人です。」
「なんぞ?その狐憑きのツキって。」
「配信するならキャラ付けにいいかなぁ〜と。ほら、稲荷神社に務めてて狐憑きになったツキと言う巫女とか。巫女っぽく大麻も振りますよ?これって割とLUCKが上がるから。」
「わざわざワイプで狐耳見せとるし、キャラ付けならまぁ・・・。なんだ?そのうち顔出し配信でもやる気か?」
「ハッハッハッ・・・、見たら合法美少女っぷりに多分ビビりますよ?」
「へ〜、VRMMOに出会いを求めたおにいちゃんはリアルに出会いがあったと?」
「コイツ男だと言っとったぞ?」
「そこはほら、慣れ親しみ人間性がOKだからゲロったとか?えっ!?本当にここに春が・・・?」
「いや?単純に今日引っかかったのがフロムさんだっただけだけど?色々リハビリもしないといけないし・・・、はっ!今の私って薄幸系美少女?」
「そのリハビリ、リハビリ言っとる割にはよく動いとるがな。」
「胃を鍛えるリハビリに焼き肉弁当4つほど昼に食べたった!」
「それはもうリハビリじゃなくてフードファイター的ななにかでは?まぁ、リアルはそこまで詮索しないし、私の戦いっぷりも流れるならチャンネル教えて。」
「ほいどうぞ。どうせ投げ銭とかないしCM流れるだけだから気楽に見てよ。」
サクラさんにアドレスを送り布教完了。まぁ、布教と言ってもただで見れるので、ある存在を認識してもらう為の布教とか?収益化前に先ずは姿を認知してもらわないと困るし、逆に姿を認知してもらえば1回くらいはバズると思う。なにせリアル狐娘だし。
ん?そう考えるとそれまでは病室から出歩けない?う〜ん・・・、裁判とか保険関係は任せたからいいとして、どこかで外にはでたいんだけどなぁ・・・。いや、それを考えると見舞いを受け入れた後がいい?流石にAIにリアル狐娘と対面した人の反応って質問投げかけてもコスプレ姿の女性は褒めましょうとしか帰ってこなかった。
コスプレじゃないし、本当に耳と尻尾が生えた人に出会った時の反応が知りたいんだよなぁ〜。それを調べると妖怪や幽霊と出会ったらファブリーズで撃退って、ゲーム作ってる会社の社員じゃないんだよ。確かにクローズドホラーゲーム作ってる時の制作秘話らしいけどさ。
「どうした、急に黙りこくって。」
「どうしたら病室から脱出出来るかと・・・。」
「VRMMOやりながら別のゲームか?脱出するなら窓からロープか縄梯子じゃろ?」
「その前にゾンビ撃たないと!」
「いやぁ〜、そうやって脱出するのはちょっと・・・。合法的に外に出たいも言うかなんと言うか。」
「それなら単純に外出許可取ればいいじゃろ?ゲーム出来るくらいには話せるんじゃし、配信者目指すくらいには元気だし。」
「う〜ん・・・、まぁ、寝て起きて考えようかな。結構遅くまでやっちゃったし。」
全く疲れてないから逆に眠れるのかって言う不安はあるけど、それでも色々考えないとなぁ・・・。




