23話 声だけ 挿絵あり
先生は部屋を出て行きベッドをリクライニングチェアにし、ネットでお買い物。取り敢えず月桃の香水と言うか虫除け?は買うとして他にも色々と入り用なんだよなぁ〜。洋服に下着にスマホに後はアパートの解約もか。
流石にすぐには帰れないし、支払いだけするのは金食い虫過ぎる。トランクルームを契約すれば必要なものはそこに入れてもらえるし、印鑑やらは殆ど電子化されて個人情報データに紐付けされている。電子拇印って便利だよね〜、ちゃんと判定してくれれば印鑑なんかよりよっぽど信頼がおける。
そう考えると必要な物って何?服は全部買い換え、生活用品も買い換えれば済むし、男物のシャンプーとかは別に使えるけど、その為だけにトランクルームを契約するのはちょっと勿体ない。そう考えると全部販売処分にしてもらって買い替える?
本も電子書籍が主だし、かさばるものはそんなにないと思う。声出しOKっぽいし流石に業者としても不明品は聞いてきてくれる。流石に自分の部屋を毎回写真に撮る趣味なんてないし・・・。いや、風景録画ならまだスマートレンズに映像残ってるかな?
スマートレンズを操作するけど流石にないか。まぁ、記憶に残ってないって事はそこまで思い入れがあるモノはないかな?う〜ん・・・、この際たまに吸ってたから持ってたライターとかも捨ててしまって心機一転してから頑張ろうかな。手配を済ませてちょこちょこ編集してテスト配信としてアップロード。
内容的にもアイコン越しにアテレコ入れるくらいだし・・・、そう言えばキャラクターと俺の声って同じだからアテレコなのか中で喋ってるのか分からない。改善点として書き留めておくとして、外で撮影出来るわけでもないしクエストの時間もあるし撮影しておくかな。敷田さんが持ってきた夕飯を食べつつアップロードした動画のアドレスを送る。
まだテスト配信なのでチャンネル名もツキ(仮)巫女である。名前とかは後から直せばいいし、改善点の洗い出しからしないとなんとも言えないのよね・・・。
「さて、潮彩からスタートだけど誰かフレは暇してないかな・・・。おっ、フロムさんがいる。メッセージ送って見るか。」
篝火さんはいないし、他のフレは忙しい様なのでフロムさんにメッセージを送ると、丁度フロムさんのデイリーが貝殻納品と言う事で来る事になった。撮影していると言う話もしたし、こう言う時アバターをメイク出来ると言うのは撮影に対する忌避感が比較で助かる。
「お疲れさん。なんだ配信者にでもなって小銭稼ぎか?」
「乙〜、売れないとその小銭も稼げないですけどね。まぁ、色々リハビリしないといけないんで日々挑戦ですよ。そう言えば、私のアバターって実は現実基準って言ったら笑う?」
「笑うってお前さん男だろ?なんだ実はネカマじゃなくてネナベか?」
「いや〜、配信するなら声はいるし入った声で性別バレるし。それならさっさとフレにはバラした方が早いかなと。あっ、さっきテストでアップした解説動画もあるよ。見てみる?」
「ほぅ。どれどれ・・・、声で分かるも何も同じ声でアバターがアバターを説明している様な奇妙な動画だな。で、お前さんの声は?」
「説明してる声だけど?」
「説明してる声はツキの声だろ?」
「現実基準だから同じ声だけど?」
「「???」」
「・・・、ツキさんはあれか?声優とかしてる人か?いや、リアルに突っ込むのはやめよう。まぁ、ワシの撮影自体は好きにしていいぞ。逆に現実基準でも有名人じゃない限り拒否る奴もおらんだろうしな。それで?魚人モドキ狩りだったか、誰か野良でも探すか?フレを呼んでもいいが。」
「ならフロムさんのフレかな?私の方はなんか大物狩りに行ったり山頂でゲー厶内パーティーしてるとかで捕まらないのよね。」
「なら、誰か呼ぶからちょっと待て・・・。よし、1人来れるぞ。」
「コレで受け持ち1体で済む。ところでどんな人?」
「あぁ・・・、アレだ。」
「うぉにぃちゃあぁんーー!!!」
多分女性アバター。その代わり俺と違い全てが真逆で高身長線の太い身体にガッツリと筋肉の鎧を纏ったアマゾネス。褐色肌で前髪も含めたアッシュブロンドの神を全てをポニーテールにしているので精悍な顔付きも見える。ただ、魔族かな?サキュバスみたいな尻尾と額に生える1本のピンク角が見える。
「妹さん?」
「狩人の嫉妬は醜いですよ。」
「フロム名言乙。妹には憧れないけどアバターの体格的に妹と言うよりフロムさんが弟的な・・・。」
「知らん、アレは単純にそう言うロールしてる変人だ。見ての通りマチスモにあこがれる可憐な乙女だろ?」
「可憐・・・、可憐って何だっけ?まぁ、可愛い顔付きだと思うけど・・・。そもそもマチスモって男性らしさを求めるものじゃ・・・。」
「求めてるだろ?私より男らしくあれの体現だ。」
「呼ばれて馳せ参上!って、その人だれ?さっきメッセージにあったツキさん?」
「始めましてツキです。え〜と・・・。」
「サクラ96542・・・、長いからサクラでいいですか?」
「いいですよ。人気の名前だから増える数字が多いですもんね。コレからバーサーカーフイッシュ狩りですけど大丈夫ですか?」
「OKOK、あのマッチョな魚人モドキは好敵手よ!私の愛用武器は大剣ね。ゴリゴリ前に出るからよろしくね!」
握手するが手もデカい。最大身長でやるとこうなるんだな。確かに街には見上げる程の人もいるし、海外からの人もいるから高身長も用意されてる。
「・・・、ちょっと持ち上げていいですか?」
「どうぞ?」
セクシャルガードは了承回避。ガード中だと触っても質感がなくて空を掴む感じだけど、互いの了承があれば回避出来る。まぁ、それでも全年齢対象VRMMOだからこうして抱っこされるとか下から押し上げるとかかな?
何気にNPCを背負って走る事とかもあるし、変に質感なくなると違和感も生まれるのよね・・・。それでも絶対に触らせない所は触らせない様になってるけど。
「おにいちゃん・・・、こんな可愛い子を隠してるなんて・・・、嫉妬を恐れた弱者か!」
「黙れサクラ。お前がそうなるからあんまり呼びたくなかったんだ。学生だからとゲームにハマってガンガンレベル上げやがって全く。今は120だったか?」
「でもこのゲームのレベルって基礎ステと割振りポイントしか旨味ががが・・・。モーションとスキル鍛えないとクソザコナメクジだよね・・・。それと140代までは上げた!」
「それが長くやってる人のアドバンテージと言えばアドバンテージだからね。だから、頑張ればこんな事も。」
10本の尻尾を身体に巻き付けてフルクロス!コレで真正面からも9回は無敵よ!割と自前の尻尾でナインテールを操作するのって疲れるし、全部動くというのはかなり楽。コレで憎っくき高速アサシンにも勝てる!はず・・・。
「おっ!アプデで脳波操作方面を最適化して、誘導兵器やら魔法も操作出来るものが増えたって公式が発表してたがそれもか。」
「さぁ?私は現実基準だからわっかりませ〜ん。」
「現実基準?」
「なんか知らんがツキさんは配信者始めるんだと。テスト配信を見たがアバターと同じ声で喋っとるし、配信者ワイプの所は狐耳だけ見せとるからそう言う設定なんじゃろ。」
「へ〜・・・、コレも撮影してる?」
「嫌なら切りますよ。」
「いいよいいよ!なら・・・、世の野郎ども!筋肉に根をおろし、筋肉とともに生きよう。筋肉達磨とともに冬を越え、腰巻き1つの野郎どもとともに春を歌おう!」
濃い人だなぁ〜・・・。割とハヤトさんとかと合う?なんにしてもヒョロい人よりもガッシリと筋肉質な人が好きとか?昔は筋肉=ステロイド的な時もあったと聞くけど、あんまり使いすぎると身体に悪いと言う話でそこまで筋肉強化に使われなくなった。
なので今はナチュラルに筋肉を鍛えるしかないから、昔の映画みたいに凄い筋肉の男臭い人って少ないんだよなぁ〜。永久脱毛とかも簡単に出来るしヒゲが邪魔な人は抑えられるし・・・。俺?面倒と思う事もあったけど剃ってる感覚は好きだったかな。
「そんな話はいいからツキさんを下ろしたれ。さっさと行くぞ。」
「は〜い。」
そんな話サクラさんを従えて3人で浜辺へ。相変わらずいる海魔達を見つつバーサーカーフイッシュ狩りへ!タイマンなら負ける気はしない!
「それぞれ1体づつ受け持ちでいい?無理そうなら遊撃に行くけど。」
「ワシはタイマンでいいがサクラを見てやってくれ。筋肉主義で魔法はからっきしだ。」
「遠距離は不精ながら弓風の銃で賄ってるよ!ただ、もっとこう・・・、グラディエーター的な遠距離武器は欲しい。」
「グラディエーター的な遠距離?手投げ斧とか?」
「それだとヴァイキングだろ?まぁ、あれもマッチョと言えばマッチョだが・・・。」
「でも確か符の外観鍛冶で変えてそれっぽいのを見た様な・・・。」
「なるほど鍛冶カスタムか。その手の改造まではまだやり込めてないから・・・、おにいちゃんお願い!」
「知らん・・・。いや、バーサーカーフイッシュを単騎撃破で考えてやる。」




