表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐と言えば・・・巫女!  作者: フィノ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/57

20話 おばけの様に 挿絵あり

「尻尾と言うか、私って動物用の蚤取りシャンプーとか使った方がいいんでしょうか?髪も伸びて尻尾も毛だらけですし。」


「山歩き等をするならその話は分かりますが、都会に住んでいて今すぐ蚤やダニが付くとは考えづらいですね。それでも気にするならラベンダーや月桃、後はペパーミント等の匂いも蚤やダニは嫌がります。マリちゃんの鼻がどれくらいいいかは分かりませんが、香水として使うならオーガニックな月桃の物を使うといいでしょう。」


「月桃・・・、例えるとなんの香りなんですかね?桃言うからには甘い匂いとか?」


「桃と付いていますが、本来は生姜科の植物でスパイシーで爽やかな甘みのある香りがします。確か沖縄等によく生えていたはずですね。」


「香水とか使った事ないですけど一応買っとこうかな?」


「そのままでもお日様の香りですが、毛に紛れ込むと言う点を危惧するなら買った方がいいでしょう。では、このシーツを被って付いてきてください。」


「怪しまれません?」


「もうすぐハロウィンなので大丈夫でしょう。小児病棟ではその飾り付けも行われていますし、当日には他の先生や看護師もコスプレされます。最悪シーツが外れてもコスプレと言い張れる二段構えですが、それでも危惧するなら何か大きな箱を探してきましょう。」


「いえ、それならシーツ被って歩いて行きます。」


 頭からすっぽりとシーツを被りスリッパを履いて手を引かれながら歩き出す。見た感じ幽霊なのに角がある様に見えない?更に言えば尻尾は背中にくっつけてるので・・・、これで鬼ではなくなったか。その代わりかなり頭の長い人には見えるだろうし、背中が盛り上がって見えるからシルエットだけ見たら太って見えるかも。


 考えてみればコレがはじめて病室の外へとなるのか。この病院自体には何回も来た事あるけど入院経験はないから、中の様子はしらない。元々東亜メディカル技研は全身として、東亜メディカルと国立医療研究所の2つの機関が医療技術発展の為に合わさって設立された。


 国内でも最高峰の病院でもあるし、そこに務める先生達も平たく言えばエリート。仕事相手としては申し分ないし、多少ケチな所はあっても支払いが遅れる事はない。そう考えると被検体契約して貰える報酬は結構あるのかも。


 廊下を歩き時々三枝先生が他の先生と挨拶を交わす以外何もなく、シーツを被った俺の事に触れる人はいない。ハロウィンが近いからその雰囲気作りをしていると思われてるのかな?でも、トリックオアトリートでお菓子を貰いに来るのは子供・・・、そう言えば身長が150cmくらいと言っていたから子供と言えば子供なのかな?


 あれ?でもその身長って尻尾込みで?それとも耳込みで?頭蓋骨から測ったら更に縮むの?と、言うか俺の場合身長じゃなくて全長とか?聞きたいけど声を出していいものか・・・。いや、声だけなら大丈夫だよな?


「三枝先生。私の身長ってどこからのものなんでしょうか?」


「どこからとは?」


「頭蓋骨なのかアレからなのかソレからなのかと言う疑問が湧きまして。」


「アレやソレでは分かりづらいですが、臀部の付属品は頭頂に該当しない為含みません。また、頭頂とは骨を意味します。頭蓋の頭頂部に位置する四角い骨、コレが頭頂骨と呼ばれるもので軟骨は頭頂骨ではないので身長には含みませんが、全長と言う話なら付属品も軟骨も含みます。よろしいですか?」


「はい、ありがとうごさいます。」


「いえ、医者として患者の疑問には出来るだけ解答しなけてはなりませんから。と、この部屋です。」


 中に入ると医療ポッドやベッド、その他にも様々な医療器具や三枝先生の物だろうデスクやPCが置いてある。スマホやスマートレンズで出来る事は多いけど、高速データ処理や送受信となるとPCにはまだ敵わないのよね。


 それでも普通に書類作成するくらいなら十分スペックは足りるし、怖いのは電池切れとか?一応遠隔ワイヤレス充電の研究もされてるらしいけど、頭痛が起こる人もいるからあんまり実用化はされていない。


「マリちゃん来ましたね!早速そこの脱衣所で検査衣に着替えてポッドへお願いします。」


「敷田さんもいたんですね、検査お願いします。」


 三枝先生が扉の鍵を掛けると同時に、医療ポッドの反対側から敷田さんが立ち上がって話しかけてくる。何かしらの準備でもしてたのかな?検査衣に着替えて欲しいって事は溶液注入もあるのだろう。男の時は海パン見たいなズボン一つで済んだけど、女性と言うか女狐なのでスポブラみたいなのとローライズなパンツを履く。


 う〜ん・・・、パンツが心伴いと言うかいつもの位置まで尻尾で上がらないからなんと言うか慣れない。まぁ、文句を言っても仕方ないしさっさと検査を済ませてもらおう。


「着替えましたけどうつ伏せで寝ればいいですか?」


「本当は仰向けがいいですけど・・・、尻尾痛くありません?」


「それはまぁ大丈夫ですよ。なんと言うか・・・、全方向に曲がる指みたいな感じですかね?まだこそまで上手くは動かせませんけど、頑張れば自前の毛皮コートも!」


 冬は暖かく夏は・・・、夏も扇子代わりに出来る?なにか布を巻き付ければ仰ぐ面積も増えて結構風量もありそう・・・、あっても筋肉動かすから結果として暑いのか。やはりクーラーガンガンの部屋で尻尾に巻かれて寝よう。


「なら仰向けでお願いしますね。溶液注入時は連絡するんで楽にしてください。あと、ゴーグルです。どれくらいかかるか分からないので動画でも見ておいてください。」


「はーい。」


 ゴーグルを付けて仰向けに寝ると多少ひんやりとした感じがする。まぁ、どれくらいで終わるかも分からないし配信者の動画でも見て勉強しておこうかな。




________________________

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄



「マリちゃんはどうです?」


「身長や体重と言った簡単なデータが今出て来ているところですよ。」


 音もなく医療ポッドは動き身体データを分析し、ログとして出力してくる。体重にして42kg、身長としては145cmだが全長と言う話なら2m近くある。確かに長い尾とピンと立った耳を加味すればそうなるのだろう。身体に対して不釣り合いなそれは、しかしマリちゃんの身体バランスを崩す事なく歩行を可能としている。


 この部屋に連れて来る事の最大の懸念はどこまで歩けるのか?と言う部分だった。本来狐は四足歩行の動物で人の様に歩くには適さない。まぁ、それは関節構造を見れば人の構造と変わらない足があるマリちゃんには当てはまらなかったが、単純にエネルギー不足も懸念される。


 今はっきりと分かった体重なら女の私でも運べるが、院内で患者を引きずっていれば嫌でも目に付く。しかし、車椅子と言う選択はその尻尾から取りづらかったのも事実だ。


 骨密度に総筋力量、肉体的な年齢・・・、年齢不明?体内の血管年齢に・・・神経は確認出来ても肉体の神経図状況酷似なし?体内で生産されるナノマシン量・・・、平常。但し待機分無数?脳神経図・・・、不明但し人よりも脳そのモノは高密度?


「問、外部より患者のナノデバイスへアクセスは可能か?」


『解、健康な為アクセス出来ません。』


「問、不健康状態ならアクセスは可能か?」


『解、不健康状態なら可能です。但し、体内デバイスとナノマシンにより不健康と想定される状態があるかは不明です。』


「問、現在分析している患者が欠損等の重大な外傷を負った場合の再生速度は?」


「三枝主任、もしかして指とか切ってもらって治療と言うかもとに戻せないか考えてます?」


「国に登録されている過去の生体データは既に破棄されてあるでしょう。しかし、個人単位での保管がゼロとは言えませんから。」


『解、不明です。現在患者は健康体であり体内のナノマシンも、正常に稼働しています。重大な欠損、大出血、ショック状態、を想定しての再生時間を算出するには外部スキャニングでは不明な点が多く、また体内データが足りません。』


「敷田さん溶液を注入して下さい。」


「分かりました。『マリちゃん、溶液注入するから酸素マスク付けてね。』」


『分かりました。』


 酸素マスクを付けたのを確認し、パッションピンクの溶液がポッドの中を満たしていく。これで毛穴等から入ったナノマシンにより体内のデータも取れるだろう。液体に揺蕩う髪や尾の毛がどこか海藻めいて見える。


  挿絵(By みてみん)


『エラ―発生。体内に検査用ナノマシンが侵入出来ませんでした。』


「えっ!?そんなはずは・・・。」


「敷田さん?」


「使ってるのはどこでも使われてる普通のナノマシン溶液です。それが侵入拒否された?でもどうして?人体には無害で、そもそもナノマシンの侵入を拒否する方法なんて人は持ってませんよ?」


「なにか仮説はありませんか?事が事なだけに突拍子もない事でも構いません。」


「突拍子もない事・・・。う〜ん・・・、ゲーム関連とか?」


「ゲームですか?」


「はい。例えば鑑定を拒否する魔法があるとか、そう言ったアイテムがあって拒否されているとか。もっとザックリと体内に侵入しようとしたナノマシンを毒と考えて拒否反応を示したとか。」


「中を探られるのを拒んでいると?」


「摩訶不思議なマリちゃんですからね・・・。心臓に癒着しているデバイスの事を考えると、外部から免疫にも反応しない異物が侵入して来たら一旦拒否してからと言うのも考えられますけど・・・、三枝主任としてはどう思います?バイオナノマシンは三枝主任が設計したはずですけど。」


「バイオナノマシンの方向から考えるとなると・・・、別の型式は別のDNAと判断してもおかしくはありませんが・・・。いえ、体組織の大半がバイオナノマシンと入れ替わっている関係上、不明なナノマシンも別データとして感知しているかもしれませんね。」


 問とポッドに問いかける。仮にナノマシンデータをマリちゃんに読め込ませられれば危険物ではないと判断を下すかもしれない。今使っているポッドは最新式ではないが、広くに普及しクラウドから多くのデータも取り寄せられる。それならマリちゃんの中のデバイスにそのデータをリンクさせれば・・・。


「患者の体内デバイスにデータ接続。クラウドより既存のナノマシンデータを送信。三枝が接続及び送信を認証する。」


『医療従事者:三枝 時子の声紋を確認。接続を行います。・・・、・・・、接続を確認。圧縮された大容量データがデバイス側よりDLされています。』


「は?既存データだそ!?容量にしても数メガしかないはずだが?問、DLされているデータ容量は?」


『データ容量不明、クラウドに接続されています。クラウドのデータがDLされています。デバイス側より既存の治療データ及び現存するナノマシンデータが収集されています。』


 ポッドから嫌な音がする。それこそPCに高負荷を掛けてファンがフル回転する様な音が。なんでデバイスと接続しただけでこんな事が!?


「これってもしかして停電とかしませんよね?或いはクラウドデータの破損とか・・・。」


「電力自体は病院なので優先的に確保されていて簡単には落ちません。しかし、クラウドの方は・・・。問!DLしているされている双方に損傷は?」


『・・・、問の内容が不明確です。先程の発言は医療ポッドと医療ポッドのデータ通信を指す発言ですか?』


「患者を優先!患者へのダメージは!?」


『医療ポッド内の患者については健康体であり正常です。』


「マリちゃんはなんともない?」


「それはいいです敷田さん。問、クラウドデータ側の破損は?」


『破損は認められません。既存の医学、医学的処置、ナノマシンに関するデータのDL完了予測時間・・・、推定2時間。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
マリちゃんに謎のデータがダウンロード中!? いったい、何が始まるのですか?!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ