19話 企画書 挿絵あり
「あ〜、最後に蹴り抜かれた腹が痛い。」
あの後残った2体を捌いていたけど、更に他のモンスターが乱入してきて辛うじて2体目を倒した所で死んでしまった。尻尾も本物の1本を残して再生中で、その1本も心做しか萎れて見える。ただ符は割と使えたし、あんまり使わないサキュバスキッスと言う、投げキッスのモーションで魅了のハートが飛ぶスキルもそこそこ使えた。
一応モンスターにも性別があるらしいけど、外見じゃ分からないんだよな・・・。それこそさっきのバーサーカーフイッシュだってあの外見で女性と言う事も・・・。
時間を見ると夕方になってるし一旦ログアウトしようかな?夜には検査と言うし、いつものゲーム時間以上にゲームをして疲れた。ログアウトしてから気付いたけど、動ける様になったのに全く動いていない。流石に座りっばなしも悪いだろうから、ベッドから降りてストレッチでもしてみよう。
「おっ!おぉ・・・。」
取り敢えず前屈したけどペタリと両手が床に付く。前は硬いわけではなかったけど、膝の裏が痛くなっていたのにその痛みもないし、かなり柔らかくなったのだろ。ついでに言えばその膝もなくなったはずなのに、こうして曲げたりも出来る。
生死の境を彷徨って復活して尻尾と耳は生えたけど、人並みの生活には支障がない様だ。まぁ、その耳と尻尾のせいで取れる選択肢は確実に減ってるんだけどね。
当面は慰謝料と出向社員としての給料を当てにするとして、仕事をするとなると先生達が言う様に、この容姿でも変に疑われない事を前提とした仕事方法になるよなぁ・・・。でも、配信者とかってどうなんだろう?あんまり見た事ないけど感覚としてはアマチュアの芸能人とか?
本職の芸能人と違ってキャラ付けとしてこの格好をしてると言えば多分信じてくれるし、そこにツッコむ視聴者も多分いない。スマートレンズからデスクアプリを起動させて書類作成。流石に芸能人(?)の売り込み方の企画とか作った事ないけど、やらない事には始まらないのよね・・・。
容姿を武器とする・・・△
今の姿を見た人が2人しかいないし、それで集客しても持続性が分からない。トーク力と言われても俺ってただの会社員だからそんなに面白い事言えるかも・・・。
トラブルオンライン実況者・・・△
カンストプレーヤーの超絶プレー動画は結構人気で俺も見た感じ再生数は悪くない。ただ、悲しいかな俺はエンジョイ勢くらいだから超絶プレーと言うか魅せるプレーは厳しいと思う。なら、ストーリーを進めてないしストーリー攻略実況とか?
一発逆転!身バレ・・・✕
流石に本末転倒と言うか・・・、1番の最短解決策だけどその後の俺の人生的にヤバい?ヤバい・・・、のかなぁ?どの道外を出歩くと考えると、顔出しも身バレもしちゃうんだよね。それを考えると頭ごなしに✕としたけど実は◯なのか?早期にこう言う人と印象付けてしまえば後はその流れに乗るだけ。
そう考えると容姿を武器と言うのも△よりも◯?ゲームキャラクターと同じ容姿の人がゲーム実況してると考えると、そこそこ集客は見込める。当然ゲームだからいつかは終了と言う話になると思うけど、それまでに基盤を作ればある程度安定した老後も・・・。
「キャラクター名はツキ・・・、よく使うゲームでの名前だけど、何かしらの由来とリンクさせる?容姿がゲームキャラクターと一緒だから・・・、狐憑きのツキとか?確か狐って女の人に化けるし。巫女服で大麻持って走り回ってるし稲荷巫女で狐に憑かれた・・・。」
時代が進んでも神話とか信仰心とかはあるんだよなぁ〜。未だにワルキューレとかタイタンとか名前を付ける学者もいるし、今回携わった医療ポッドも正式名称と言うか呼び名はメタモルフォーゼだったし・・・。
「マリちゃんいいですか?」
「いいですよ。」
三枝先生の声が聞こえてアプリを閉じる。思い描いて文章にした限りだと生配信からの実況がいいのかな?隠し事は隠すから意味があるのであって隠せないし事実とか、隠して後からバレると不味い事実にはマイナスに働くし。やっぱり書き起こすのは必要だよね。全てを頭でまとめられるならいいけど、そこまで俺は頭はよくないと思うし。と、言うか先生はなんで車椅子を?
「なにかされてましたか?」
「ストレッチと人生設計プランを・・・。この姿から離れられないならこの姿でいてもいい方法を考えるしかないですからね。先生達に聞きたいですけど、その姿の配信とかメディア露出ってどう思います?」
「ふむ・・・、マリちゃん的には今後を考えての発言だと思いますが、もうしばらく・・・。いえ、配信は許可します。その代わり今撮影した物を実況者としてです。」
「いいんですか?」
「個人の自由を縛るのは私しとしても不本意ですし、私達の手を離れた後の不安をケアするのも医者としては当然です。ただ、顔出し等はまだ控えて貰えますか?流石に分からない中での顔出し配信は我々としても思う所があります。」
「それは・・・、一応今所感で書いた企画書的な物がありますけど見てもらえます?」
話を通すなら分かりやすく。個人での納得では相手は納得しないし、書けば書くほど後から見返せば気付く事も増える。行き当たりばったりで医療系の会社に務めれるほど甘くないし、分析力が足りないと思うなら書き留めて後から読み返す。
書いた直後に読み返しても気付かないから、一旦時間置くのが望ましいかな?出来れば誰かに読んで貰うのもいい。ケアレスミスとか、誤字脱字は書いた本人だと認知バイアスで正しい物として読み飛ばしちゃうし。
「一旦預かりましょう。今から詳細検査をしますのでこれを被ってもらえますか?」
「コレ・・・、これって厚手のシーツですか?」
「ええ。ハロウィンには早いですがその姿を隠すならシーツを被って車椅子で運ぶのが最適と考えました。最悪日光に弱い患者への対策として言い張れますし、それを言われてシーツを取ろうとする医者もいない。」
「はぁ・・・。そう言えば今までトイレとかシャワー浴びてないですけど私って臭くありません?」
「マリちゃんの臭いですか?ちょっと失礼して・・・。」
言うが早い!何かを言う前に尻尾を握って顔を埋めてしまった!アレって綺麗に拭いたけど今朝は水に濡れて生乾きの臭いとかしない?身嗜みという面ではブラシとドライヤーはマスト!流石に臭いとは言われたくない!引か剥がそうと尻尾と手で頭を掴む。
「ちょっ!やめてください!」
「あぁ~・・・、アニマルテラピーとはこう言う感じなのですね・・・。温かい毛で包まれると和む・・・。」
「いやいや!拒否行動ですからね!?」
「大丈夫です。お日様の匂いがします・・・。」
「それってダニとかが死んだ匂いなんじゃ・・・。」
蚤取り剤とかもいる!?確かに毛深くなった(?)事だし今更とか都会にいるとは思えないけど注意はいるよね?ペット用でいいか悩むけど無尽蔵に蚤被害をばら撒くのは気が引けるんですけど!?




