表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ化】悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
~第1部 極悪非道の婚約者~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/342

43 婚約者として

 フランチェスカはひとまず弟分を見上げ、彼から宥めることにした。


「ごめんグラツィアーノ、きっとびっくりさせたんだよね? 私がレオナルドの食べてたアイスを分けてもらったら、そこにお酒が入ってたみたいなんだ」

「酒のせいかなんて分かんないでしょ。この男に、何か薬を盛られた可能性だってあります」

「こら!」


 そもそもレオナルドが食べていたアイスクリームなのだから、その可能性は低い。そう言おうとしたところで、フランチェスカは自分の失敗に気が付いた。


「……そもそもが、なんでこいつとアイスなんか食べてるんですか?」

(ああーっ、やっちゃった……!)


 レオナルドがフランチェスカの『友達』であることは、カルディーノ家のみんなには内緒にしていたのだ。


 その理由は数年前、夕食時の父が、フランチェスカにこう告げたからだった。


『フランチェスカ。お前に万が一、「男友達」なるものが出来たなら、まずは私に報告するように』

『男友達……』


 フランチェスカには、生まれてこの方友達が出来たことがない。そのため、同性や異性という枠組みで友人を分けることの意味があまり分からなかった。

 だが、それもすべて自分が『友達初心者』であるからだと納得し、一度は頷く。


『んんっと……分かったよパパ。私、一日も早くパパにそんな報告が出来るよう、頑張るからね!』

『……自然体のお前で、頑張らなくていい。だが、安心しろ』


 ナイフとフォークを動かしながら、父は淡々とこう述べる。


『友情を口実に近付いて来る不逞の輩は、私がすべて素性を調べ上げてやる』

『へ……っ』

『お前の友人としてふさわしい男か、ファミリーの総力を上げて試験してやろうではないか』


 その宣言に、当時のフランチェスカは青褪めた。


『不合格の者が出た場合は、もちろん適切な処分を下す。お前の元に残る「男友達」は安全な人間ばかりだ、心置きなく友情を育むといい』

『わ、わあ……!』


 引き攣った笑みを浮かべつつ、フランチェスカはきゅっとグラスの脚を握った。


『あ……ありがとう、パパ……!』

『このくらい容易いことだ。ろくでもない男がお前に近付くなど、あってはならない問題だからな』

(婚約者や恋人じゃなくて、お友達の話だったはずなんだけどなあ……!?)


 当時のことを思い出して、フランチェスカは溜め息をつく。


(まったくパパったら。『友達になることを口実に近付いてくる不逞の男』なんて、そうそう居るわけがないのに……)


 そもそも、あれから数年経ったいまですら、フランチェスカの友達はたったひとりだ。


(だから、私に初めての友達が出来たことも、グラツィアーノにしか話してなかったんだよね。グラツィアーノにも、友達が男の人だってことや、そもそもレオナルドであることは内緒にしてたんだけど……)


 だが、先ほどのフランチェスカの失言により、グラツィアーノは完全にフランチェスカをじとりと眺めている。


(ど、どうしよう。友達がレオナルドだったってバレたら、さすがにパパに報告が行っちゃう……!)


 グラツィアーノは忠実なお世話係だが、彼の主人はフランチェスカでなく父なのだ。

 大半はこちらの味方になってくれる弟分も、フランチェスカの身を守るためという名目であれば、あっさり父の側につくだろう。


「れ……レオナルドと、一緒にアイスを食べていた理由は……」


 これはもう、正直に話すしかないだろうか。

 フランチェスカが口を開こうとした、そのときだった。


「それは、当然」


 上掛けの上に置いていたフランチェスカの手を、レオナルドの手がやさしく握る。

 そうして彼は、まるで愛おしい者を眺めるかのようなまなざしで、フランチェスカを見詰めるのだ。


「――俺とフランチェスカが、婚約者同士だからに決まっているだろう?」

「!」


 レオナルドの言葉に、フランチェスカは目を丸くした。

 そしてもちろんグラツィアーノは、思いっ切り顰めっ面をしてレオナルドを睨む。


「あんた、何を言って……」

「彼女は俺の、未来の花嫁だ。放課後にデートくらいするし――……」

(デート!)


 フランチェスカはびっくりした。だが、レオナルドがこちらを見て悪戯っぽく笑ったので、その意図に納得する。


「フランチェスカが、『友達』に予定をキャンセルされて悲しんでいれば、時間潰しの代役を買って出ることもある」

(……私の嘘を、誤魔化そうとしてくれているんだ)


 指を絡められて、嬉しさにじんわりした。


「ありがとう、レオナルド……」

「俺が協力しないはずもないだろう? ……君の、『退屈』に」


 フランチェスカの告げたお礼が、『放課後デート』のことではないと分かっているはずだ。それでもレオナルドは、フランチェスカの手の甲に口付けるふりをした。


 まるで、本当の恋人同士みたいだ。

 そのことを意識して、少しだけ緊張してしまう。


(演技とはいえ、ちょっと落ち着かないや……)


 どうしてこんな風に、心臓がどきどきするのだろう。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最近、なろうで読み始めたからすっごい面白くてドキドキが止まらん!ルプナナ、追魔女、あくまなときてるので先生の作品で3番目に読んだ作品なのです!!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ