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【アニメ化】悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
〜第4部 知勇兼備の生徒会長〜

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262 たいせつ

本日4/3はレオナルドの誕生日、4/6はフランチェスカの誕生日です!



「レオナルドが守ってくれたから、あの地下でも寒くなかったよ。痛い思いも、怖い思いもしなかった」

「…………」


 フランチェスカが怪我のひとつもなく、こうして呼吸をしていられるのも、レオナルドが傍に居たからこそだ。


「レオナルドは、私のことをずっと守ってくれる。どんなときも、私を一番に考えて、何よりも優先してくれて」


 それはもちろん、今日だけではない。

 燃え盛る屋敷の中でも、土砂降りの雨の中であっても、暴力と罵声のさなかでも。レオナルドは自身の犠牲を厭わずに、フランチェスカを助けてくれた。


「……君のことを大切にしたいから、そうしているだけだ」

「それなら」


 彼から少し身を離して、フランチェスカは金色を見据える。


「――私がレオナルドを大切にすることも、許してくれる?」

「!」


 満月の色をしたその瞳が、知らない言葉に触れたかのように見開かれた。


「レオナルドがとっても強い人だって、ちゃんと知ってる。……だからこそ目的のためになら、自分を傷付けながらでも、平気な顔をして進んで行くよね」


 それがたとえ、茨で出来た道であろうとも、笑って踏み出してしまうのだろう。


「本当は、悲しいことも怖いことも、レオナルドにはたくさんあるのに」

「…………俺は」


 幻覚の兄と対峙して、きっとそれでも笑ったはずだ。

 そんなレオナルドの姿を想像するだけで、泣きたいくらいに苦しくなる。だから、想いを込めて口にした。


「レオナルドのことが、大切なの」

「……っ」


 僅かに息を詰めたレオナルドの頬を、フランチェスカは両手でそうっと包む。


「だから、私もレオナルドを守りたいんだ」

「…………」

「寒いところから連れ出して、幸せな場所に居させてあげたい。この気持ちは、今はまだ、『恋』って言い切れないものかもしれないけれど……」


 右手をレオナルドから離した代わりに、それを自らの左胸に当てる。


「これからどんどん、レオナルドが私に抱いてくれている感情と、近くなっていく気がするの」

「……フランチェスカ」


 自身の鼓動を確かめながら、フランチェスカは目を眇めた。


「笑ってほしい。悲しませたくない。私がそれを手伝えるなら、なんだってしたいな」


 金色の瞳を見上げながら、レオナルドに告げる。


「だから、レオナルドを大事にさせて」


 微笑んで、それから少し首をかしげた。


「……この『愛おしい』は、レオナルドとおんなじ?」

「…………」


 その瞬間、レオナルドが再びフランチェスカを抱き寄せて、その腕の中へと閉じ込める。


「っ、レオナルド……?」


 強い力に驚いてしまう。

 先ほどくれた抱擁とは違う、なんだか拘束にすら感じるほどのやり方で、それでも声音はとてもやさしい。


「ああ」


 頬を擦り寄せるようにくっつけて、触れ方で『大切』を伝えるかのように、レオナルドが頷いてくれた。


「おんなじだよ。フランチェスカ」

「…………」


 その言葉に、なんだか胸がいっぱいになる。


「『好き』の気持ちが分かるまで、もうちょっとだけ待っててね」


 レオナルドの頭をもう一度撫でて、フランチェスカは誓いを告げた。


「その代わり、私はこの先の未来で絶対に、レオナルドの傍に居るから」

「――――……」


 父が、かつて母に願ったことを思い出しながら、改めての約束を重ねる。

 すると、レオナルドは柔らかに尋ねてきた。


「……やくそく?」


 やはり幼な子のような問い掛けに、「うん」と小さく頷く。


「約束するよ。レオナルド」

「…………」


 レオナルドが静かに目を閉じたのが、気配で分かった。

 だからフランチェスカは、レオナルドの気が済むまでいつまでも、彼の腕の中に閉じ込められたままでいる。


「――俺の、フランチェスカ」


 その言葉は、ひとつの祈りにすら似ているのだった。




***




 レオナルドに手を繋いでもらいながら、一段ずつ螺旋階段を降りていく。昼間はひとつの観光地として賑わうこの場所も、真夜中は静まり返っていた。


「……だけど、どうして時計塔だったの?」

「ん?」


 数段先を下っているレオナルドが、やさしくフランチェスカを振り返った。


「意外だなあって思って。レオナルドは、私と色んな場所に行ってくれるけれど……」


 話しながら吐き出す息は、お互いに白い。


「いつものレオナルドなら、冬の夜中に、私を外に連れ出すことはしないから」

「…………」


 レオナルドが、くちびるをそっと微笑ませる。


「さすがは俺のフランチェスカだ。……君にあの景色を見せたかったのは、本心だが」

「もちろん、それは分かってるよ! だけど、他にも理由があるんじゃない?」


 最下段を降り切って、出口へと繋がる扉の前で、レオナルドを見上げた。


「――人目の無い所でしたいこと、とか」

「ははっ」


 レオナルドは何故か嬉しそうに、人懐っこく見える笑みを浮かべる。


「愛おしいフランチェスカ。君と居ると、本当に退屈しないな」

「……この気配」

「君も聞きたいだろうと思って。今度は、ちゃんと暖かい場所で話そう」


 レオナルドの大きな手が、木で出来た扉を押し開く。

 冷たい風が吹き込んでくるも、レオナルドに守られて平気だった。ゆっくりと目を開けたフランチェスカは、そこに立っていた人物の姿に驚く。


「ルキノ……君」

「…………」


 隣国の王子であり、ゲーム六章で行動を共にするキャラクターのルキノが、不機嫌そうな顔で雪道に立って居た。

 だが、フランチェスカにとって想定外だったのは、ゲームでの味方キャラクターとなるルキノが、『フランチェスカ』の前に現れたことだけではない。


「あなたは……」

「……こんばんは」


 さらさらとした茶髪を丸く切り揃えた男の子が、フランチェスカたちに挨拶をする。

 ルキノの傍らで一礼したのは、今日の『予行練習』で司教ラディエルの傍に居た、小間使いの少年だった。


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