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【アニメ化】悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
〜第3部 狷介孤高の同級生〜

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178 影響

「君の知ることを聞かせてくれ。『ゲーム』では、どんな筋書きになっている?」

「……まずは、ゲームの世界がどんな物語になっているか、それを話すね」


 王都の通りを進む馬車の中で、フランチェスカはそれからしばらく、ゲームのあらすじをレオナルドに話した。


 『主人公』フランチェスカの境遇や、父とグラツィアーノとの関係性。それから『ラスボス』レオナルドが、どのように接触してくるかについて。

 ゲームの一章と二章で起きることを話すあいだも、レオナルドは真剣に耳を傾けてくれた。


 そうして、三章の筋書きを話し終えた頃。


「――フランチェスカ。手を」

「ありがとう、レオナルド!」


 イチョウの葉に埋め尽くされた金色の並木道で、レオナルドのエスコートに促されながら、フランチェスカは馬車を降りる。


「寒くない? 大丈夫か?」

「うん、平気。レオナルドの言う通り、今日は外の風が気持ち良いね」


 イチョウと同じ色合いをしたドレスの裾が、吹き抜ける風に柔らかくそよいだ。今日はいつもより暖かくて、あと少しの距離を歩くにはちょうどいい気温だ。


「……ゲームの三章で起きるはずの出来事は、いま話した通りだよ」


 レオナルドと共に黄金色の街路を歩き始めながら、フランチェスカは続きを話した。


「三章では、私とダヴィードが一緒に調査をするの。ダヴィードの抱える悩みを解決して、ラニエーリ家に昔からいる使用人を、犯人として捕まえる」

「そして、子供に変えられた君は本音を曝け出して大人に戻り、『黒幕』である俺の計画を阻止すると」

「いまの時点で『子供に変えられた人物』と『元に戻る方法』、『黒幕』と『輝石を盗んだ犯人』が違っちゃってる訳だけどね……」


 ゲームの知識があったとしても、ほとんど宛てにならないかもしれない状況だ。肩を落とすフランチェスカをあやすように、手を繋いだままのレオナルドが尋ねてくる。


「ダヴィードの『悩み』が何かは、俺には秘密?」

「……うん、秘密。ただでさえダヴィードの隠したい事情を、ゲームシナリオっていうずるい方法で知っちゃっているんだもん。それを私がレオナルドに話す訳にはいかないと思うんだ」

「そうか。君らしい」


 レオナルドが何故か嬉しそうに笑うので、フランチェスカは首を傾げた。だが、レオナルドはこれについての仔細を話すつもりはないようだ。


「とはいえ、レオナルド。この世界でいままで起きた事件は、ゲームシナリオの更なる真相としても、矛盾しないように出来ているの」

「薬物事件の真犯人が、リカルドの父親だったのも。暗殺騒動で番犬の父親が、自ら命を絶とうとしていたことも。君の話すシナリオの裏側にあった事情として、成立する」

「そう。だから今回も、きっと同じなんじゃないかな」


 街路に敷き詰められたイチョウの葉の上を歩きながら、フランチェスカは顔を顰める。


「……考えれば考えるほど、『ゲームの中に転生』って一体なんなんだろ……」

「それはもっともな疑問だろうが、この世界との差異は十分な参考になる。君の知るゲームとの違い、その中でも輝石にまつわる部分だけを、改めて考えてみようか?」

「うん……」


 隣に並ぶレオナルドの提案に、イチョウ並木を見上げた。


「ええと……輝石が盗まれず、偽物にすり替わっているところ。小さくなったのがレオナルドなところ。犯人が、ラニエーリ家の古い使用人さんじゃなさそうなところ」

「…………」


 金色の落葉が舞い落ちる中で、レオナルドが口を開く。


「ラニエーリ家の使用人が新しくなっているのは、ソフィアの家出を許した不始末によるものだが。君の知るゲーム世界では、その解雇が発生していないということなんだよな?」

「少なくとも犯人は、ソフィアさんたちのお父さんの代から仕えていた人だったよ。ソフィアさんの家出については、ゲームでは語られてなかった」


 レオナルドはそれについて、何か思うところがあったようだ。


「ゲームとやらでは、ソフィアが逃げ出す出来事が起きなかったのかもしれない」

「そういうこともあるのかも。私が生まれたこの世界で、何もかもがゲームの通りに進んできた訳じゃないし」

「フランチェスカ」


 こちらを見下ろした金色の瞳が、真っ直ぐに問い掛けてくる。


「一連の事件について以外で。――君の知る『ゲームとの違い』はすべて、君自身が、ゲームと異なる行動を起こしたことによるものか?」

「え」


 思わぬ質問に、フランチェスカはぱちりと瞬きをした。


「……うん」


 ゆっくりと慎重に思考を巡らせながら、俯いて頷く。


「ゲームでの私は、小さな頃に郊外に出されて、裏社会とは関わりを持たずに大人になってる。だけど」

「現実の君は、お父君とのわだかまりを解消し、カルヴィーノ家に留まったまま成長した」

「そうだね。だからこそグラツィアーノがうちに拾われたときも、一緒に過ごすことが出来た。ゲームでグラツィアーノと初めて会うのは、十七歳になった私が、この王都に帰って来た後……」


 そこからの日々も、フランチェスカは家の構成員から存分に可愛がられ、ゲームとは違う関係性を築きながら成長している。


「俺は先ほど、『一連の事件について以外で』と前提を置いたが。ゲームとやらの事件が始まっても、君の行動が影響を及ぼしているだろう?」

「……だってそもそも、ゲームではラスボスになるレオナルドと、こうして大親友になっちゃってる……」


 レオナルドが考えていることが、フランチェスカにも分かった気がした。


「輝石が盗まれたんじゃなくて、偽物に変えられているのも。事件の犯人が変わっちゃっていそうなのも……」


 ばらばらに配置されていたものが、少しずつ繋がりを持ち始めたように思えてくる。


「――私の行動が、影響しているの?」

「…………」


 レオナルドは、その言葉を否定しなかった。


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