表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【アニメ化】悪党一家の愛娘、転生先も乙女ゲームの極道令嬢でした。~最上級ランクの悪役さま、その溺愛は不要です!~  作者: 雨川 透子◆ルプなな&あくまなアニメ化
〜第3部 狷介孤高の同級生〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

147/342

145 変化(第3部1章・完)



「偽物……!?」


 ゲームでは忽然と消えるはずの輝石が、偽物にすり替えられている。

 相違に絶句したものの、すぐさま思考を切り替えた。


(――ううん、動揺しちゃ駄目! 過程が違うだけで結果は同じ、『ミストレアルの輝石が消失した』!!)


 暗闇をすぐに照らしても、事態は変化しなかったということだ。恐らくは黒幕クレスターニが、ミストレアルの輝石を奪った。


『……会場の客人たちは、すり替えに気付いていない』


 ソフィアの苦い声がする。フランチェスカたちは走り去った人影を追いつつも、聞こえてくる会話に耳を傾けた。


『最悪の事態とは呼ばずに済みそうだ。すぐさま国際問題って状況だけは、免れたんだからね!』

『っ、はい、ソフィアさま!』

(ソフィアさんの言う通り。輝石が消えてしまったゲームと違って、すり替えなら各国に隠し通せる)

『ただちに陛下に報告を! それからこの会場にエヴァルトとアルディーニ、セラノーヴァの坊やも来ているはずだよ。連中を探してきてくれ、各ファミリーの協力を仰ぐ!』

『!? しかし……!!』


 どうやらソフィアはフランチェスカの父やレオナルド、リカルドに事情を話すつもりのようだ。彼女の部下である構成員が、驚いてソフィアを止めようとする。


『ソフィアさま。輝石がすり替えられたという事実を、他家に明かすということですか!? わざわざラニエーリ家の失態を広めるようなことをなさらずとも……!』

『プライドなんかよりも重要なのは、悪党なりにこの国を守ることだ』


 迷いがないソフィアのその声に、フランチェスカはこくりと喉を鳴らす。


『私の頭なんざいくらでも下げてやる、当家の汚名は全部私が被る! 今ここで初手を誤った所為で、取り返しのつかない結果になるなんざ御免だからね!』

(ソフィアさん……!)


 潔く勇ましい言葉を聞いて、フランチェスカも走る速度をぐんっと上げる。構成員も胸を打たれたのか、自分を恥じるように言った。


『仰る通りです。すぐに各ファミリーに伝達を!』

『頼んだよ。……しっかしこんな時に、あの馬鹿弟は何処に走って行っ……』


 そこでぶつりと音が消える。隣を走るレオナルドが笑って首を振ったので、スキルの範囲はここまでのようだ。


「レオナルド、この先……!」

「行き止まりだな」


 息を切らして立ち止まったフランチェスカは、平気そうなレオナルドの傍で周囲を見回した。


「変だよね。人影みたいなものをずっと追い掛けてきたけど、途中から本当に、ただの影を追わされていたような気がする……」

「気配らしきものは残っている。フランチェスカ、さっき君が言っていた『姿を変えるスキル』はクレスターニによるものか?」

「そう思う理由は話せないけど、その可能性が高いはず。そのスキルで、私を子供に変えてくるんじゃないかなって……」


 レオナルドが僅かに俯いて、その手をそっと口元に当てた。


「……変質のスキル。クレスターニ……」

「レオナルド?」


 そのとき視界の片隅に、鮮烈な光が走ったのが見えた。


「!」


 恐らくあれはゲームの通り、こちらの姿を変えるスキルだ。けれどもゲームとの更なる相違に、フランチェスカは声を上げる。


「……レオナルド、危ない……!!」

「!」


 レオナルドを襲おうとした光の前に、フランチェスカは飛び出した。

 ぎゅうっと彼に抱き付いて、背中に迫ってくる光から守る。


(こうすれば、レオナルドは守れる……!)


 けれども次の瞬間、レオナルドはフランチェスカの腰を抱き、強引にその位置を反転した。


「あ……!!」

「駄目だよ。フランチェスカ」


 傍にあった木に背中を押し付けられ、レオナルドによって庇われる。

 強い光が迸り、目を開けていられないほど眩くて、それなのにレオナルドの体が離れてしまった。


「レオナルド……!!」


 触れようとして手を伸ばしたのに、そこにいるはずのレオナルドが居ない。

 ようやく光が止み、フランチェスカが目を開けると、信じたくない光景がそこにあった。


「……まさか」


 地面には、仕立てのいい幼児服を纏った男の子が、ちょこんと座っていた。


「…………」


 身長はフランチェスカの腰ほどもなく、黒髪に金色の瞳という容姿の子供だ。


 まんまるな形をしたその目は大きく、睫毛は人形のような長さをしていて、頬はぷにぷにとした輪郭を描いている。


 白いシャツは表面に淡い虹色の光沢を帯びたようなもので、膝までの黒いズボンは漆黒であり、灰色の靴下とつやつやに磨かれた革靴を履いていた。


 ぱちりと瞬きをする姿は、天使のように愛らしい。

 けれどもその姿は紛れもなく、フランチェスカの親友のものだ。


「……レオナルドが、ちっちゃな子供の姿になっちゃった……」

「――――へえ」


 自らの着ている子供用シャツの、とても小さな袖口やボタンを見て、レオナルドが笑う。

 同時に誰かの足音がして、フランチェスカは咄嗟に手を伸ばした。


「誰か来る、隠れて!」


 けれども動揺していた所為か、レオナルドを隠すのが間に合わない。

 結果として、木々の間から現れた人物に、頭を抱える羽目になるのだ。


「おい! 輝石に何かしやがったのはお前らか? 逃げんな、話しを……って」


 何もかもしっかりと目撃したその青年は、レオナルドを見下ろして呟いた。


「……そのガキ、もしかして、アルディーニか?」

(……ダヴィード……)


 フランチェスカは途方に暮れて、小さなレオナルドをぎゅうっと抱き締めるのだった。



------

第3部2章へ続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] この小さくなった教育済みのレオナルド、私が欲しい❗️可愛いだろうなぁ❣️
[一言] まさかのレオナルドが小っちゃくなるなんて。 フランチェスカの小さい姿を見たい気もしないけど、レオナルドもいい。 小さい姿でレオナルドがどうやってフランチェスカを守ろうとするのか、楽しみです。…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ