表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
63/530

第24話 架陰と鉄平 その③

天狗の笑い声が聞こえる


死神の嘲りが聞こえる


悪魔は静かに啜り泣く

3


ほぼ同時に仕留められた二頭のバンイップは、アスファルトの上に身体を横たえていた。


響也は確認のために、切断した頭、胴体をつついてみるが、二度と動くことはなかった。


「厄介なUMAだった・・・」


安堵のため息を吐いて、The Scytheの刃を下げる。


架陰は刀に纏わせていた魔影を解除した。再び煙のようになった黒いオーラは、架陰の体に戻ることなく、空気に溶け込むようにして消えた。


「やりましたね!」


「ああ・・・」


響也は言いたいことは山ほどあったが、架陰は右腕を骨折しながらよく戦ってくれた。お咎めなしといこう。


響也と架陰の元にカレンが走ってきた。


「やったわねぇ!」


「おい、後ろ」


響也はカレンの後ろに立つ大男を指さした。


椿班副班長の【山田豪鬼】だ。


「・・・・・・」


山田は、丸メガネを白く光らせ、バンイップ討伐の功労者をじっとみた。


その異様な視線に、三人は身構えた。


だが、その筋肉質の厳つい体とは似合わず、山田は腰を90度折る。


「ありがとうございました・・・」


「ああ、こちらこそ・・・」


山田はのっそりと顔を上げる。


「あなた方が来てくれて助かりました。正直、二頭のバンイップの相手は難しかったです」


素直に礼を言う山田を見て、響也は「こいつ、話のわかるやつだな」と思った。


チラリと、地面の上で伸びている鉄平を見る。左足の腱と右肩の腱をThe Scytheで切断しておいた。しばらくは動けないだろう。


山田は、電柱の上でライフルを構えている八坂に「降りてきなさい」と声をかけた。


「分かりました・・・」


八坂はライフルを持ったままアスファルトの上に舞い降りる。


「お疲れ様です、山田さん」


「はい、お疲れ様です」


山田と八坂は二人並ぶと、再び桜班に一礼した。


「感謝致します」


「・・・、どうも・・・」


響也は完全にペースを狂わされていた。これからこの者達を処分してやろうと考えていたからだ。


(まあ、素直なやつにとやかく言う必要も無いか。恐らく、今回架陰とクロナを襲わせたのも、桜班の管轄を超えてきたのも、全てあの鉄平という男の独断・・・)


その時だ。


「てめぇ!!」


鉄平の怒号と共に、殺気が響也に迫る。


「ちっ!!」


響也は振り向きざまにThe Scytheを振った。


案の定、目の前に鉄平。折れた鉄棍の半分を左手に持って襲いかかって来ていたのだ。


ギンッ!!!!


金属音が響く。


鉄平は空中で身を捩り軌道を変え、響也の攻撃をいなした。


(こいつ!?)


「喰らえ!!」


右腕と左脚の自由を奪われているというのに、攻撃を仕掛けてくる気概。


負傷を補う体幹の強さ。


そして、響也の【死踏】を使用するこの男。


椿班・班長【堂島鉄平】。


(この男・・・、何者だ!?)


鉄平の渾身の一撃が、響也の頬を掠めた。


「うっ!!」


響也の頬に熱いものが走り、鉄平の顔に血が散る。


「この!!」


カレンがすかさず翼々風魔扇で突風を発生させ、鉄平を吹き飛ばした。


鉄平はコンクリート塀に身体を打ち付ける。


「ぐはっ!!」


伏した鉄平はコトリと動かなくなった。


「響也、大丈夫!?」


鉄棍の切断面が鋭利になっていたようだ。響也の白い顔はぱっくりと裂け、血がどくどくと流れていた。


「問題ない・・・」


響也は着物の袖で血を拭う。袖がベッタリと赤くなった。


カレンが思い切り吹き飛ばしたというのに、鉄平は「コノヤロウ・・・」と言って起き上がる。右肩と左脚から血が流れ落ちていた。


「やっと会えたな・・・、死神・・・」


「っ!?」


やはり、この男は響也のことを知っている。


満身創痍の状態で襲いかかろうとする鉄平を、山田と八坂が止めた。


「鉄平さん、やめましょう。死んでしまいます」


「そうです。バンイップは倒しました。早く真子を・・・」


「う、うるせぇ・・・、オレは、やっとお前に会えたんだよ・・・」


鉄平は相当な執着を持って響也に噛み付こうとする。


カレンが響也に耳打ちした。


「ねぇ、知り合い・・・?」


「いや、知らない男だ・・・」


響也は首を横に振る。本当に、知らない男だったのだ。


「オレは・・・、てめぇのことを知ってんだよ・・・」


山田の静止を振り切り、鉄平が立ち上がる。右脚を軸にしているので足取りがおぼつかない。


「てめぇは・・・、オレの、憧れなんだよ・・・」


「憧れ・・・?」


響也は記憶を辿ってみた。


こんな野犬のように乱暴で、発情した猫のように襲いかかってくる男など見たことがない。


だが、もしかしたら、今まで見てきた光景の端くらいに、その姿を捉えているのではないか?


「・・・・・・、まさか・・・」


響也は言いかけて辞めた。


だが、心当たりと言えばこのことしかない。


「おまえ、【月ノ子児童施設】の人間か?」


その言葉に、鉄平の表情が明らかに変わった。


何故か、少し嬉しそうな顔をする。


「へへ、その通りだよ」


(なるほどな・・・)


響也は独り合点をした。


あえて口には出さない。


不味いことになったと思った。もしここで自分と鉄平の関係を話してしまうと・・・。


(架陰が・・・)


架陰に自分の過去を知られることになる。


別にそれが嫌というわけではないが、自分を尊敬している架陰の信頼を裏切るのも気が引けた。


(なら、この男の部下も、あの施設の出身者か?)


響也はカレンの方をちらりと見て、奥歯を噛み締めた。


(どうしたものか・・・)


その時、架陰がおもむろに口を開いた。


「つきのこ、じどうしせつ・・・」


「・・・、どうした?」


鉄平に気を取られて気づかなかったが、架陰の様子をおかしくなっている。


目が虚ろで、口調もふわふわとしている。


「いや、僕、その施設の出身なんですよ・・・」










番外編に続く

次回・・・、番外編【堂島鉄平外伝】


一つの秘密が、明らかになる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ