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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第21話 刀を砕く牙 その①

この世界にさようならをする

1


時は、遡る。


UMA出現の通報を得た響也とカレンは、現場に向かっていた。


「ここか・・・」


やってきたのは、成田高校からすぐ近くの住宅地。通報で指定された民家の前に立つ。


一見、ここがUMAに襲われたとは思えなかった。窓ガラスが割れているわけでもなく、花壇が荒らされているわけでもない。


いつもの平凡な日常を切り取ったような家だった。


ベージュ色の扉の前に立ち、インターホンを鳴らす。


直ぐに扉が開いて、40代半ばくらいの女性が顔を出した。


「こんにちは。UMAハンターです」


「あ、ああ、どうも」


女性は、着物の少女二人に、若干の戸惑いを見せたが、直ぐに中に招き入れた。


「UMAはどこから出現したんですか?」


リビングに繋がる廊下を歩きながら尋ねると、女性は「こちらです」と、廊下の先を指さした。


「ここ?」


リビングに入った途端、その惨状に思わず目を疑った。


破裂した水道管から絶えず水が吹き出し続け、床が浸水している。皿を収納していた棚はなぎ倒され、白い破片が散乱していた。


白い壁に、三本の爪痕が残っていた。


「なるほど、室内に出現したのか・・・」


「そうみたいねぇ」


響也とカレンは、足が濡れることお構い無しにリビングに踏み入れた。桜班の足袋は強靭だが、直ぐに水が染み込む。


廊下から、被害女性が声をかけた。


「虎のような獣でした・・・」


「虎?」


確かに、この荒らし方は熊か虎のような獣によるものだろう。


だが、少し違和感を感じる。


響也は女性に尋ねた。


「あの、そのUMAは、どこから入って来たんですか?」


「それが・・・」と女性が口ごもる。


「いつの間にか、中にいたんです。私が二階で片付けをしていたら、一階のこのリビングから凄い音がして・・・、見てみると、その獣が部屋を荒らしていました」


「・・・」


響也は、破壊された冷蔵庫を見た。食い散らかされた牛肉や豚肉のパックが目立つ。


「食べ物目当てか・・・」


「そうでしょうね。一通り荒すと、水に溶け込むように消えてしまいました」


「消えた?」


思わぬ情報に、ピクリと眉が動いた。


違和感の正体はこれらしい。「どこにも、逃げた跡が無い」。つまり、「中に突然現れて、突然消えた」。


すると、無言で辺りを調査していたカレンが口を開いた。


「これは、バンイップねぇ」


「バンイップ?」


「ええ。こんな能力を持つUMAは、バンイップしか考えられないわぁ」


数多くのUMAを狩ってきた響也でも、そのUMAの名前は初耳だった。


「どんなUMAだ?」


「ええと、前にアクアさんに教えてもらったのよぉ」


カレンは薄紅の唇に指を当てて、記憶を手繰る。


「川や湖に生息するとされる【水棲の獣】。その姿は、アザラシのようでもあり、牛のようでもあり、虎のようでもある。有する能力は、【水化】。体の構成物質を、【タンパク質】から【液体(水)】へと切り替えることができるのよぉ」


「へえ・・・」


響也は、自分の足首まで覆う水を、パシャパシャと踏みつけた。


「じゃあ、この水が【バンイップ】に変わるのか」


「そうかもしれないわねぇ」


カレンの予測に、響也は静かに頷く。頭の中で、「どうやってバンイップを狩るか」イメージを膨らませていく。


まず、奴が水に変化するメリットは何か。


カメレオン(または吸血樹)が擬態をするのは、敵に己の存在を知らせないため。


蜘蛛は巣を張って敵を捕まえる。


ナマケモノが動かないのは、体力を消費するから。


カブトムシだって、あの角は戦うためにある。


生態の全てに意味があるのだ。


では、なぜバンイップは水化するのか。


(恐らく、ダメージを無効にするため)


響也は、水を蹴りあげた。


水が散り、水面が大きく揺らぐが、直ぐに元に戻った。


(ただの水・・・?)


そう思った、次の瞬間。


ザブンッと、水面が揺らぎ、大量の水の塊が浮かび上がった。


「!!」


響也とカレンはすぐにリビングのテーブルの上に跳び移った。


廊下の方で困惑の表情を浮かべている女性に叫ぶ。


「離れろ!!」


「・・・、は、はい!」


女性はスリッパをパタパタと言わせてその場から逃げていった。


これでいい。


響也は、肩に担いだThe Scytheの布を取り払う。


カレンも、翼々風魔扇を右手に握る。


浮かび上がった水が、まるでスライムのように蠢き、獣の形へと変化した。


「いくわよぉ!」


カレンが翼々風魔扇を仰ぎ、竜巻を発生させた。


「風神乃槍!!」


極細の竜巻が、槍となって、バンイップ(水)を穿つ。


バンイップは一瞬でその姿を砕かれ、風に巻き込まれた水が辺りに飛び散った。


直ぐに、飛び散った水が集結して、水の獣の姿になる。


「ダメだ! 再生する!!」


「ならぁ、再生する前に打ち砕くわぁ!」


カレンはニヤリと笑うと、翼々風魔扇を両手に持つ。そして、舞うように、身体を回転させた。


「風神乃牢獄」


ゴオッ!!と、槍よりも太い竜巻が発生して、水のバンイップの周りを取り囲んだ。ミキサーのように、風が、バンイップを構成する水を削り取る。


「カレン、これじゃあダメだ。永遠に竜巻を発生させるわけじゃないだろ!」


このやり方なら、バンイップの水をめちゃくちゃに散らして、再生を防ぐという効果があるが、それでは、根本的な解決にならない。


「まずは、やつを実体に戻すんだ!」










その②に続く

UMA図鑑【バンイップ】

体重 1トン

体長 2メートル


水棲の獣。能力は【水化】で、体を水に変化させることができる。この時の姿になると、相手の攻撃は受け付けないし、自らも攻撃出来なくなる。しかし、緩急を付けて実体と水を切り替えることで、相手を錯乱させることが出来る。また、水になってしまえば、小さな隙間も難なく通ることができる。水道管が破裂したのはこのためである。

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