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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第20話 水の獣 その③

命を捧ぐと言ったら


「そんなことしなくていい」と怒るから


命を分け合うと言う

3


足元に広がる液体。


「なんだと!?」


八坂の顔からサッと血の気が引いた。背筋に冷たいものが走る。


(この水、さっきまでなかった!)


反射的に飛び退いた。


次の瞬間、床に広がっていた水がザワザワと集結して、あの獣に変形する。今度は、実体がない「水」の獣だ。


「くそっ・・・、水に変形して追ってきたのか!」


八坂はライフルを構えた。この至近距離なら、スコープを覗くまでもない。


「名銃【NIGHT・BREAKER】!」


ドンッ!!と、火薬が弾ける爆音が一階の空間に木霊した。


鉄の弾が、水の獣の頭を吹き飛ばす。


(どうだ・・・?)


八坂の願いは他所に、直ぐに飛散した水が集まって、頭を形成した。


「やはり、あの水の姿の時はダメージを与えられないのか・・・」


八坂は冷静に対象を観察すると、ライフルのマガジンを抜いて、新たなマガジンを差し込んだ。


あの水の姿になっている時は、ダメージは与えられないし、あちらも与えることができない。だが、油断は出来ない。


水の姿か、実体の姿か。切り替えるのは、あのUMA本人だ。


先程の真子同様、緩急を付けて変形されたら対応出来ない。


(常に、一定の距離を置く・・・)


八坂は水の獣から目を離さない。獣がこちらに向かってこようとしたら、直ぐに床を蹴って後退する。


「グルルルル・・・」


水の獣が唸った。


その瞬間、水の獣が爆発する。


「!!」


八坂は身構えた。あの爆発が「実体への変形」の合図なのだ。


しかし、水の中から実体のある獣が飛び出すことはしない。


「まさか!!」


八坂の周りを飛散した水が取り囲んだ。


そして、一瞬で集結する。


「しまった!!」


実体のある獣が、八坂の目の前に出現した。


(こんな芸当もできるのか!)


獣の牙が、薄暗い空間で白く光った。そして、八坂の身体を噛み砕こうと大口を広げる。


(やられるっ!!)


八坂は、己の命の終わりを感じて、目を強く瞑った。


次の瞬間。


「八坂ああああっっっ!!」


「っ!?」


気の所為ではない。我らが班長堂島鉄平が、自分を呼ぶ声が聞こえた。


「八坂から離れろっ!!」


ゴンッ!! と鈍い音が響き、獣の巨大な頭が仰け反った。


鉄平の鉄棍が殴ったのだ。


「グオオオオオオッ・・・」


頭蓋が揺れた獣は、「苦痛」の声を洩らし、水に変形した。


とぷんっと床に広がり、這うように走り出す。


「逃げた!」


「止めろ!! 山田アッ!!!」


水と化した獣が向かったのは、入口。


入口を塞ぐように、山田の大きな身体が待ち構えていた。


「逃がしませんよ・・・」


山田は、バキッ!と指を鳴らした。そして、タイミング良く、床の上に広がる水に拳を叩きつける。


ドンッッと、タイルが敷き詰められていた床に亀裂が入った。


「ダメです!!」


八坂は悲痛な声を上げる。


「今のそいつに、物理攻撃は効きません!!」


「!?」


山田の拳をすり抜け、水の獣は外へと逃げ出てしまった。


山田は床にめり込んだ自らの右拳を抜いた。パラパラとタイルの破片が落ちる。


「・・・、すみません。取り逃しました」


山田は丸眼鏡を押し上げ、その巨体をぺこりと折った。


危機が去った八坂は、脱力してその場に座り込んだ。逃がしてしまったとは言え、命が助かった。


「すみません。鉄平さん・・・」


援助に来た班長に深く頭を垂れる。


UMAの猛攻を食い止められなかった自分への情けさがふつふつと湧き上がってきた。


鉄平は、八坂の方を見ずに首を横に振った。


「いい。お前が無事なら・・・」


そして、長椅子に横たわる真子の方に駆け寄る。


「大丈夫か? 真子・・・」


「だ、大丈夫ッス」


「ごめんなあ、俺がもうちょっと早く駆けつけてれば・・・」


鉄平の声が震えた。野獣のような三白眼からじわっと涙が溢れる。


「すまねぇ・・・、班長なのに・・・、お前を、護れなかった・・・」


「て、鉄平さん・・・」


「八坂ぁ、ありがとよぉ。真子を護りながら戦ってくれたんだろぉ?」


「ま、まあ、そうですけど・・・」


鉄平は、子供のようにオイオイと泣いていた。目を赤く腫らして、筋の通った鼻からも鼻水が出ている。本気で、仲間が傷ついたことを悲しんでいた。


その姿を見て、真子と八坂は、胸に温かいものが宿るのを感じた。


「泣くのはやめましょう・・・」


八坂は、鉄平の肩に手を置いた。どうしようもなく震えている。


「俺たちは、生きてますから・・・」


「そうっスよ・・・」


本気で悲しんでいる姿に、「この人と同じ班で良かったなぁ」と思う。


この人は、いつもそうだった。


親に捨てられ、裸でさまよっていた真子を拾った時も・・・。


UMAに襲われ、血塗れで道路に倒れ込んでいた八坂を見つけた時も・・・。


全て、自分の事のように悲しみ、泣いてくれた。


だから、彼を信じることが出来た。これからも、信じて行くことが出来る。


あなたが私たちを捨てないように、私たちもあなたについて行きます。


この命を捧げたら、きっと「そんなことしなくていい」と怒るから、せめて、一緒に歩きましょう。


命を分け合って、UMAと戦って行きましょう。


「UMAを、追いましょう・・・」


「そうだな」


鉄平は涙を拭った。











第21話に続く

八坂「俺のいい所を10個挙げてくれ」


真子「ごめんっス。三つまでしか思いつきませんっス」


八坂「言ってみろ」


真子「ひとーつ。【目がある】」


八坂「おう」


真子「ふたーつ。【鼻がある】」


八坂「おう」


真子「みぃーつ。【口がある】」


八坂「撃ち殺すぞ」


真子「よぉーつ。【腕がある】」


八坂「撃ち殺すぞっ!!」


真子「あ、四つめだった。私たち、数が数えられないんスよぉ!」


八坂「もういい・・・」


真子「次回、第21話【刀を砕く牙】」


八坂「撃ち殺していいんだな・・・」

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