アクアVSココロ その②
雨宿る秋穂の
何と美しい様よ
私は露を一口啜り
鴉の翼を擡げている
2
「ぶっ殺してやる!」
逆上したココロは、木刀を中段に構えると、アクアを獣のような目で睨んだ。
アクアが「おお、怖い」と肩を竦める。
次の瞬間には、ココロは砂塵を巻き上げて地面を蹴り、アクアに向かって斬り込んでいた。
「死ねや!」
木刀から、肌を這うような殺気があふれ出る。
それを、傍らで見ていた架陰は思わず叫んだ。
「危ない! アクアさん!」
ココロが、「技」を出すことに気が付いたからだ。
目にも留まらぬ四連撃を叩き込み、相手の行動を一次的に封じ込める強力な攻撃。
架陰も、一度彼女と対戦したときに、それを喰らって戦闘不能に追い込まれていたのだ。
「おいでおいで」
アクアは拒まない。
ココロは全力で、アクアに木刀を振り切った。
「心響流! 一の技! 【一条】ッ!」
ボコンッ!
と鈍い音が辺りに木霊した。
ココロの一閃を、胸の前で交差させた腕で受け止めたアクアが、その斬撃に踏ん張ることができず、後方に吹き飛ぶ。
「アクアさんッ!」
「ありゃあ、これはすごい」
アクアは吹き飛びながら、ココロの剣技に感嘆の声を洩らした。
ココロは止まらない。
再び地面を踏み込み、ロケットを彷彿とさせる軌道を描いて、空中に跳び上がった。
「二の技…!」
空中機動でアクアに追いつくと、さらに木刀を振り下ろす。
「【二条】ッ!」
宙に浮いていたアクアの身体が、地面に向かって真っ逆さま。
これも腕で防いだアクア。そのまま、背中を地面に打ち付ける。
そこに、ココロは回り込む。
「三の技…!」
一閃。
「【三条】ッ!」
墜落したアクアが、再び天高くに打ち上げられた。
「さて、これで終わりだよ」
ココロはすうっと息を吸い込むと、腰を落とし、獲物に飛び掛かる獣のような体勢をとった。
ギランッ! と、目が鋭く光る。
「四の技…!」
地面を蹴りだした瞬間、その余りにもの脚力に、土の地面に蜘蛛の巣のような亀裂が走った。
ヒュンッ!
と空気を裂きながらココロが、空中のアクアに迫る。
勝利を確信したココロは、歯を見せてにやっと笑った。
「終わりだよ!」
刀を振る。
「【死条都下】ッッ!」
渾身の一撃だった。
これで、アクアは戦闘不能に陥るはずだった。
腕をしならせ、酸素使って得たエネルギーで放たれた斬撃は、虚しく、空を切った。
「え…」
空中で、ココロの表情が固まる。
「ふ、不発…?」
「甘い甘い」
はっとして目を向けると、アクアがココロの背後に回り込んでいた。
「お前ッ! なんで!」
「私の能力、舐めてもらったら困るのよ」
アクアは、ぽんっと、ココロの背中に手のひらを押し付けた。
そして、ゼロ距離で【能力】を炸裂させる。
「【水砲撃】…」
ボンッ!
と、アクアの手から放たれた強力な水圧が、ココロを吹き飛ばした。
「ぐッ!」
背中に殴られたような衝撃を覚えながら、何とか体勢を整えようとするココロ。しかし、それをゆるまじと、アクアが手を「ピストル」の形にして構えた。
「【水弾】…」
パシュンッ!
空気を裂いて、小さな水の弾丸がココロの肩を撃ち抜いた。
貫通はしていない。
しかし、関節に強い衝撃を受けたおかげで、彼女の手から木刀が零れ落ちた。
「こいつ…、ボクの弱点を…!」
体勢が整えられないまま、ココロは地面に墜落。背中をしたたかに打ち付けた。
「あぐうっ!」
遅れて、アクアも地面にふわりと降り立った。
「はい、私の勝ちだよ」
「ふざけんな」
ココロは水でびしょびしょになった身体を起こした。
木刀を拾おうにも指が上手く動かない。
「くそ…、手が…、動かせない…」
「多分、関節外れてるから、無理に動かさない方がいいよ」
「くそが…! こんなことあってたまるか!」
何とか木刀を拾うココロ。
しかし、すぐさまアクアが水を発射して、彼女の手から弾き飛ばした。
「はい、もう持てないね」
木刀は空中を舞い、乾いた音を立てて地面に落ちた。
「私の勝ちってことで、アーユーオーケー?」
その③に続く




