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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第19話 架陰VS鉄平 その③

泥の中にて林檎を食む

4


(なるほどな)


能力を発動した架陰の攻撃を受けながら、鉄平は悟った。


振りぶって刀で一撃。これは陽動。本物は左手の鞘。


刀を鉄棍で受けつつ、鞘の突きを右肩で受ける。


直ぐに後退して、威力を弱める。


(威力が上がるわけじゃないのか)


変わったのは反射神経。それに比例して速度が上がっただけだ。別に、鉄平の腕を切り落とすほどの腕力も、鉄平を押し切ってしまう馬力も無い。


「ふっ」


鉄平は鉄棍を左手に持ち帰ると、留守になった右手をバキリと鳴らした。


架陰が斬りかかってくる。


それを鉄棍で受け、素早く殴打を放つ。


「!?」


架陰の左頬に、鉄平の右拳がめり込んだ。メキッと鈍い音がして、架陰が吹き飛ぶ。


「がはっ!!」


架陰は中央分離帯の植え込みに突っ込んだ。


「鉄棍に集中したな。俺の武器がこいつだけだと思ったか?」


鉄平は再び鉄棍を右手に持ち替えた。


「俺はな、この剛腕で椿班という荒くれ者の集団を束ねてんだよっ!!」


大きく振りぶり、槍投げの要領で鉄棍を投げつける。


「っ!!」


架陰は刀をかちあげて鉄棍を弾いた。


その間に鉄平が距離を詰め、がら空きになった腹に一撃を放つ。


拳が入る直前、架陰は後方に跳んで勢いを弱めた。


「さどいなっ!」


「そりゃどうも!!」


鉄平の猛攻は止まらない。ぬるりぬるりと、間隙を縫って攻撃してくる。


架陰も能力の【魔影眼】で動きを読むが、だからといって、鉄平の剛腕から放たれる一撃を防ぎ切ることも出来なかった。


(この人っ!! 強いっ!!)


「いくらてめぇが速くなったって、俺はその上を行くぜっ!!」


鉄平の鉄棍が架陰の刀と衝突する。バチッ!! と火花が弾け、架陰の体が後方に吹き飛ぶ。


(持ちこたえろ!)


架陰は体勢を整えようと足を踏ん張ったが、勢いを殺しきれず、よろめいた。


(しまった!)


「もらった!!」


鉄平が迫ってくる。あの鉄棍を振り下ろす。刀で防いでも、一瞬の隙から、拳が飛んでくる。


全て読めていた。魔影眼なら造作でもないことだった。だが、身体が追いつかない。


(やられる!!)


そう確信した瞬間、架陰の顔面に鉄平の拳がめり込んだ。


「ぐあっ!!」


ゴリッと鈍い音がして、架陰は地面に背中から倒れ込む。


(た・・・、立ち上がれ・・・)


鼻の奥がツンとする。鼻血が出ているのだ。


「終わりだな」


鉄平が勝ち誇った顔で、架陰を見下ろしている。


架陰は何とか立ち上がろうと首をもたげるが、次の瞬間には、ぐるんと白目を剥いて気を失った。


鉄平はニヤリと笑った。


「けっ! 脳震盪起こしやがったか。たわいのねぇ」


鼻血で赤く染まった架陰の顔を覗き込む。完全に意識が途切れている。


髪の毛を掴んで、ぐっと待ちあげてみた。もちろん、架陰が反応することはなく、糸の切れた人形のようにくったりとしている。


「桜班の、四席・・・、いや、下っ端だったな」


結果的には鉄平が勝ったものの、少し苦戦したのは事実だった。


架陰でこの強さだったのだ。ならば、三席、副班長、班長と強くなっていくに違いない。


鉄平はムフフと笑った。戦闘狂の性であった。強い者と戦うことを想像すると、やはり気が高揚する。


その時だ。


架陰が目を見開き、鉄平の腕を掴んだ。


「っ!?」


そして、それを支点にして下半身を持ち上げると、鉄平の頭部に膝蹴りを食らわせる。


「くそっ!!」


鉄平は直ぐに手を離し、架陰を蹴りつけた。


架陰はバックステップを踏んで後退する。とても脳震盪を起こしていた者の動きではない。


(こいつ、芝居を打ちやがったな)


視界がぐるんと揺れた。あの一撃だけで、脳震盪を起こしたのだ。


「ふー」と、架陰は息を吐いて、鼻血を拭った。まだボタボタと落ちてくる。


先程の鉄平のパンチは、確かに強力だった。だが、魔影眼を発動している間は、一種の【ゾーン】のような世界に入っているらしい。ちょっとやそっとのことで、気を失わないのだ。


架陰は刀を鉄平に向けた。


「どうしますか、まだやりますか?」


鉄平は歯を見せて、「くくくくく」と笑った。肩が小刻みに震える。


「いいねぇ」


「いいんですか」


二人は再び向かい合う。


二人の間を、渇いた風が通り過ぎていった。


ピリピリとした空気が漂う。


どちらが先に切り込むか。


その機会を伺って、互いに動かない。


「・・・・・・」


「・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


均衡を破ったのは、両者が携帯しているトランシーバーの着信音だった。


「ビィー、ビィー!!」と、互いの懐から電子音が鳴り響く。


二人は我に返ると、その着信に耳を傾けた。


「も、もしもし」


『お、架陰か?』


響也の声。走っているのか、音が途切れて聞こえる。


鉄平の方も、椿班の者からの連絡らしい。


「おう、俺だ!!」


『鉄平さん!』


「なんだ、八坂かよ」


それは、ある意味奇跡だったのかもしれない。架陰と鉄平が争い合っているその水面下で、UMAが暗躍していたということが。


響也と八坂の声が、重なって聞こえた。










『『UMAが出現した(しました)。さっさと(早く)援軍に来い(来てください)!!』』










20話に続く











UMAハンター図鑑


椿班 四席 【矢島真子】(15)

体重 42キロ

身長 152センチ


弓矢をこよなく愛する、椿班の四席。必ず、語尾に「っス」と付ける。これは、人を舐めているという訳ではなく、親しみやすさを込めて使っている。だが、結果的に八坂をイラつかせているので、効果は無いに等しい。もとは捨て子だったところを鉄平に拾われているため、鉄平への忠誠は絶対である。学歴は無いので、言葉はおろか、計算も出来ない。それに漬け込み、八坂が、握力が真子よりも弱いということを隠蔽している。「お前、17キロの方が、28キロよりも強いんだよ」と言う具合に。

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