第19話 架陰VS鉄平 その①
血を美しいと思ったのは
あなたを殺した後だ
1
クロナが、敵の狙撃手に狙撃され、倒れるところを、架陰は横目で見た。
「クロナさん!?」
「よそ見すんな!!」
一瞬でも集中力が散漫になると、鉄平の鉄パイプが架陰の頭を打った。
ゴンッと脳が揺れ、視界に火花が散る。
(この人・・・、頭ばっかり狙って・・・)
やはり、ただのチンピラではないようだ。どうすれば効率よくダメージを与えられるのか、考えて攻撃をしてくる。
(この人の攻撃は速い・・・)
架陰は一度後退すると、腰から刀の鞘を抜き、左手に握った。刀と鞘の二刀流だ。
「いい判断だ」
やっと戦う意思を見せ始めた架陰に、鉄平はニヤリと笑った。ビュンビュンと鉄棍を振り回す。
「だが、それだけじゃ俺は止めれねぇ」
再び、刃と棍を合わせる二人。
金属音が弾け飛んだ。
「オラァ!!」
連続で鉄棍を振る鉄平。
それを必死で受け止める架陰。
金属音。
金属音。
金属音。
金属音。
金属音。
「くっ!!」
何とか刀と鞘で受けきれているが、攻撃に転じることが出来ない。
「どうしたあっ!!防戦一方だぜっ!!」
金属音。
金属音。
金属音。
金属音。
金属音。
防戦一方など、わかっている。
(なんだ、この人の攻撃は・・・)
何かの型や流派があるような棒術では無い。だからと言って、力だけに頼って振り回している訳でもない。
本能の攻撃。
言わば、めちゃくちゃな旋律と、めちゃくちゃな音で成立してしまう音楽。才能の領域。
「くそっ!!」
架陰は刃で鉄棍を受けると、手首を返して、柄でかちあげた。
「!?」
鉄平の胴ががら空きになる。
しかし、架陰は一度後退して距離を取った。
「どうした? 今のは入ってたろ」
絶好のチャンスを逃した架陰に、鉄平は不思議そうな顔をした。
架陰は首を横に振る。
「それじゃ、ダメなんだ」
架陰は呼吸を整えると、刀の刃を自らの腕に当てた。
「? 何をする気だ?」
「力を、借ります」
刃が架陰の腕を裂き、流血を促した。その瞬間、ドグンッ!!と架陰の心臓が脈を打ち、腹の底から熱いものが込み上げた。
男の声を思い出す。
(君の能力はまだまだ未熟だ。特に、【魔影】を発動させたあとの反動は大きい)
じゃあ、どうすればいいのか。
(力の出力を抑えるんだ。大丈夫。君は今までも、無意識の中でそれを使っている)
息を吐く。
イメージをする。
力を一段階落として発動させるのだ。
架陰は目を見開いた。
「魔影・壱式・魔影眼!!」
ザワザワと架陰の眼球に力が集中し、架陰の白目が赤く染まった。吸血樹を倒した時に出ていた黒いオーラは出ていない。
「さあ、行きますよ!」
架陰は刀と鞘を握り直すと、赤黒く染まった眼で鉄平を見据えた。
(魔影・壱式を発動させた時の俺は、弐式の時ほどの攻撃力は無いけど、動体視力が格段に上昇する・・・)
故に。
「っ!」
架陰が斬りこんだ刃の先か、鉄平の顎を掠めた。
「速い!?」
ギリギリで躱した鉄平は、身を捩り、鉄棍を振った。
だが、直ぐに架陰が受け止めた。
「ちっ!!」
架陰は鉄棍を受け止めたまま、右手の刀で鉄平を突く。
「危ねぇ!」
鉄平は直ぐに上体を仰け反らせて、刀を躱した。勢いそのまま、長い脚を蹴りあげる。
しかし、足ごたえが無い。
(躱しやがった!)
鉄平は体操選手のように体を一回転させて体勢を整えた。そして、バックステップを踏んで架陰から離れる。
(こいつ・・・、能力者かよ)
一瞬で動きが変わった。攻撃の全てを読まれている。
架陰は刀を鉄平に向けた。そして、挑戦的な口調で言い放つ。
「さあ、続きをやりましょう!」
2
響也は、総司令官室のソファーの上で昼寝をしていた。
足元には、飲み干したエナジードリンクの缶が転がっている。
響也をソファーから引き剥がすのを諦めたアクアは、絨毯の上に腰を下ろして、不貞腐れるようにファッション誌を読んでいた。
「アクアさん」
半開きの扉から、カレンがひょっこり顔を出した。
アクアはファッション誌を閉じる。
「どうしたの?」
「それが・・・、UMAの目撃情報が、たった今入ってきましたぁ」
「目撃情報?」
アクアは真剣な眼差しになると、すくりと立ち上がった。
「しまった、架陰とクロナが居ない」
たった今、別の案件で二人を調査に出したばかりなのだ。調査だけなので、早くに帰ってくると思っていたが、時間がかかっている。響也ではないのだから、寄り道をしている訳では無いだろう。
たった今、目撃情報が入ったというのなら、直ぐに追うべきだ。
「なら、カレンと響也はそちらに行きなさい」
アクアは、ソファーの上で口を開けていた響也の頬をつまみ上げた。
「痛い」
「行きなさい」
「分かりましたよ」
その②に続く
その②に続く




