【第134話】 架陰VS鬼丸 再戦 その①
食らい合う
鬼と悪魔
1
「魔影! 【肆式】ッ!」
空中で架陰は能力を発動した。
彼の体表から、黒いオーラが放たれ、一つの生き物のように蠢く。
架陰はそれを操り、自分の腕、脚、そして刀に纏わせた。
「【魔影】…【肆式】…【魔影脚】+【魔影拳】+【魔影刀】!」
最初から、全力の形態。
魔影脚で脚力、及び、機動力の強化。
魔影拳で、腕力の強化。
そして、魔影刀で、一撃の威力を格段に上げる。
「行くぞ!」
架陰は空中に魔影脚で蹴りを入れると、その時に放たれた衝撃波を使って加速した。
目にも止まらぬ速さで、鬼丸との間を詰める。
「来い!」
「魔・影・脚ッ!」
そのまま、全力の蹴りを入れる。
鬼丸は腕を胸の前で十字に交差させてガードした。
「吹っ飛べ!」
ボンッ!
と、衝撃波が炸裂する。
吹き飛ばされた鬼丸は、すぐさま空中で体勢を整えると、足袋で地面を踏みしめて着地する。
しかし、勢いが止まらない。
ボゴッ! ドコッ!
と、アスファルトを抉りながら地面を滑った。
「なるほど」
と、納得したように頷く。
(素晴らしい蹴りだ。確かに、悪魔の【魔影】の能力で強化はしているものの…、架陰の武術でさらに威力が増しているのか…!)
単に腰を入れるだけでは、この蹴りの威力を相殺することができない。
どんどんと遠くに飛ばされる鬼丸を見て、架陰は勝機を見出した。
「もっと、詰める!」
さらに、魔影を纏わせた脚で、地面を踏み込んだ。
ドンッ!
一瞬で、架陰の姿がその場から消え失せ、蜘蛛の巣のようにひび割れたアスファルトがバキバキと捲れ上がった。
「間に合えッ!」
猛スピードで加速して、鬼丸との距離を詰めていく。
迫る架陰に鬼丸はふっと笑った。
「惜しいな、実に惜しい」
「なんだと…?」
「焦るな…!」
ドンッ!
と、鬼丸がその場に踏みとどまる。
地面に脚をめり込ませて身体を固定した鬼丸は、腰の刀に手を掛けた。
「次は私の番だ…」
「ッ!」
一瞬で、辺りがどろっとした殺気に包まれる。
危険を察知した架陰は、地面に垂直に蹴りを入れて、空中に逃げ出した。
(何か来る!)
「逃げても無駄だ…」
鬼丸は刀をすらっと抜いた。
架陰の愛刀【赫夜】に似た、装飾がなされていない木の柄、赤みがかった刃。
その刀を、逆手で握ると、鬼丸は下から掬いあげるように刃を振った。
「【鬼乃坂月】…」
次の瞬間、刃から半透明の赤い斬撃が放たれた。
「ッ!」
架陰が得意とする、【悪魔大翼】よりも範囲の広い一撃。
空中の架陰は、咄嗟に身構えた。
その瞬間、彼の胃袋が何者かによって鷲掴みにされて、握りつぶされるような激痛が走った。
それだけじゃない、肋骨がキイキイと軋む。肺も、プレスに掛けられたような圧迫感に悲鳴を上げた。
「がはッ!」
喉の奥から血を吐く架陰。
(なんだ、この攻撃は…!)
ただの斬撃ではない。まず、斬れていない。
衝撃波だ。しかも、彼の体内に浸透し、内臓や骨を圧迫して潰す効力がある御業。
(くそ、痛い!)
あの一撃をもろに食らった架陰の身体から体力が根こそぎ奪い取られる。
胸や腹が焼けるように痛む。
「くそっ!」
架陰は咄嗟に、魔影刀を虚空に向かって振り下ろしていた。
「悪魔…、大翼!」
黒い斬撃が放たれるが、いつもの威力が発揮されない。
鬼丸のもとに届いたはいいものの、鬼丸は刀を一閃して消し飛ばしてしまった。
「どうした? 技が緩いぞ」
「こなくそが!」
架陰は魔影脚で虚空を蹴りつけ、鬼丸に向かって迫る。
そして、頭をかち割るような勢いで、鬼丸の頭上に蹴りを叩き込んだ。
ボンッ!
しかし、鬼丸は刀でそれを防ぐ。
勢いが脚から地面に流れて、地面に大きく窪んだ。
「もう一発!」
架陰はダメ押しとばかりに、右の拳を叩き込んだ。
「魔影拳!」
ドンッ!
ダメ押しの一撃。
「おおりゃあああああッ!」
その②に続く




