激戦開幕 その②
いざ愉悦の時
醸造血眼修羅の埼
2
架陰と鬼丸は、刀と刀を合わせて、鍔迫り合いを始めた。
「UМAハンターは、ここで仕留めさせてもらう」
鬼丸が静かにそう言って、架陰を押した。
架陰は鬼丸の強襲に耐えながら、辺りの状況を確認する。
襲撃してきたのは三人。
鬼丸と、蜻蛉、そして、彼らが【王】と崇める包帯男。
包帯男の傍らには、カレンが倒れていた。
胸が上下しているので死んではいないようだが、何かされたに違いない。
「お前たち! カレンさんに何をしたんだ!」
「お前の悪魔に聞いてみたらどうだ?」
悪魔に?
鬼丸に言われたように、悪魔が架陰の頭の中で囁いた。
(城之内カレンニ取リ憑イテイタ悪魔ガ、奴ラニ回収サレタ)
「回収、された?」
つまり、城之内カレンの体内から、彼女を暴走させた悪魔が消え失せたということだ。
それだけを聞けば、いいことなのかもしれない。
しかし、悪魔は、「取り込むことで力が上がる」。という性質を持っている。
つまり、悪魔を敵に取り込まれたということは、敵の力が上がるということだった。
「安心しろ」
架陰の思考を読んでか、鬼丸はニヤッと笑って言った。
「我らが王は、あの力をまだ完全に吸収できていない。すぐに貴様に襲い掛かって、貴様の悪魔を奪うような真似はしない」
鬼丸は「だが」と言って続けた。
「時間は稼がせてもらう。王が、城之内カレンの悪魔を完全に吸収するまでの時間を」
「そんなこと、させるか!」
架陰はそう叫ぶと、全力で刀を振り切り、鬼丸を吹き飛ばした。
「完全に吸収できていないってことは! 吸収する前に叩けばいい話だろうが!」
そう言うと、刀に黒いオーラを纏わせて、全力で振り切った。
「【悪魔大翼】ッ!」
刃から放たれた黒い斬撃が、地面にパックリと亀裂を入れながら、包帯男に迫る。
鬼丸は「させん!」と宣言すると、空中で身を捩り、刀を一閃した。
白銀の斬撃が放たれ、横から、架陰の斬撃に直撃した。
ボンッ!
と爆弾が炸裂したかのような轟音が響き、土煙が舞った。
「くそ、相殺されたか!」
架陰はすぐさま刀に力を込めなおした。
しかし、立ち込める煙から気配を消した鬼丸が飛び出す。
「っ!」
ギンッッ!
流れるような一撃を、架陰は何とか防いだ。
「ほう、反応がいいな」
鬼丸は終始余裕の笑みを浮かべると、架陰に向かってさらに畳みかけた。
ギンッ!
ギンッ!
ギンッ!
下から掬いあげるような斬撃、横からの、意表をついた閃撃。さらには、頭蓋骨を割らんばかりの強力な一撃。
そのすべて、架陰は崖と崖の間に通された縄を駆け抜けるような気持ちで受け止めた。
(こいつ! やっぱり強い!)
少しでも油断すれば、すぐに架陰の首は地面に転がる。
(気を抜くな!)
血眼になって、鬼丸が刀から放つ光の軌道を見る。
「どうした?」
鬼丸が刀を振りながら挑戦的に言った。
「防戦一方だぞ?」
「くッ!
「あの時の勢いはどうした…?」
あの時、とは、架陰と鬼丸が初めて刃を合わせた時のことだった。
あの時も、架陰は鬼丸に対して何もすることができなかった。
「あの時のように、もっと挑戦的に打ち込め!」
ギンッ!
大振りの一撃が、架陰の身体を後方に吹き飛ばした。
「くそ!」
内心で「しくじった」と叫ぶ。
(隙だらけの一撃だったじゃないか! そこにカウンターを叩き込めたはずだ! それなのに、こいつの斬撃が怖くて動けなかった!)
着地の勢いは魔影を使ってやわらげた。
顔を上げると、すぐそこに鬼丸が迫っている。
「くそが!」
架陰は、魔影を纏わせた刀を地面に叩きつけた。
ボンッ!
衝撃波で地面が粉砕し、土煙が立ち込める。
「愚かな」
鬼丸は剣術に優れた武人。
煙幕などの小細工、意識を集中させれば簡単に打ち破れるのだ。
煙幕を使って、鬼丸の目を欺いた架陰は次に何をするのか。
(死角からの意表を突いた一撃!)
その瞬間、土煙の向こうから架陰が叫んだ。
「【悪魔大翼】ッ!」
「なに…?」
煙を吹き飛ばし、黒い斬撃が飛んできた。
「ちっ!」
刀で弾く鬼丸。
「あえて裏をかかず正面突破をもくろんだか!」
「違うよ! 裏の裏をかいたまでだ!」
魔影の纏わせた漆黒の刀を携えて、架陰が突っ込んでくる。
鬼丸は、鍔も柄紐も無い刀の刃で、それを受け止めた。
ドンッ!
衝撃波が、鬼丸を弾き飛ばした。
「前のリベンジと行こうじゃないか! 鬼丸ッ!」
その③に続く
補足
鬼丸と架陰の戦いは二度目です。一度目は、架陰の完全敗北でした。




