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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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剣を握る処刑人 その②

「さらば」


と言って旅立つ白鳥の


血濡れた翼に杭を立て


朝日を背に持つ旅人に


あさましき夢を持つ


我を罰せよ




「どういうことだよ…!」


架陰は唇を震わせ、困惑を露わにした。


彼の前に立ち塞がるは、慕うべき桜班・副班長【城之内カレン】の姿。しかし、その身体は漆黒のドレスに覆われ、周りを黒い茨が旋回していた。


ふわりと、つま先が地面から離れる。


「カレンさんが化物って、どういうことだよッ!」


叫んだ瞬間、架陰の胴体に伸びてきた茨が巻き付いた。


彼の身体を引っ張り、隣のビルの壁に叩きつける。


ドンッ! 


と、コンクリートが粉砕して、架陰の身体がめり込んだ。


「あ、ああああああ!」


攻撃は止まらない。


架陰はさらに下に引っ張られ、地面に背中から激突した。


ビシビシと、アスファルトに蜘蛛の巣のような亀裂が走り、粉塵が巻き上がった。


そこでようやく、架陰に巻き付いた茨が消滅する。


「はあ、はあ、はあ、はあ…」


荒い息を立てる架陰。


彼の頭の中で、ジョセフが囁いた。


(無事かい?)


「無事じゃないです」


(そうか。でも立つんだ)


「はい…」


身体中の骨に亀裂が入っている。


少し動かすだけで、焼けるような痛みが彼の思考を鈍らせた。


「ジョセフさん…、カレンさんに、何が…」


(説明は後だ。いいから立て)


「くそ…」


架陰は、よろよろと立ち上がる。


先ほど、花蓮と交換した【回復薬・薔薇香水】は持っていたが、生憎これは外傷用。裂けた肺や、内部の細かな骨折には意味をなさなかった。


ジョセフは架陰の脳裏に囁く。


(落ち着いて呼吸をするんだ。痛みなら、ボクと悪魔の力で和らげることができる)


「はい…」


(君は、城之内カレンを止めることを優先しろ)


「わかって、います…」


城之内カレンが、すっと手を上げた。


この動作は、能力発動に必要な溜めの時間。


架陰は下唇を噛み締めて、殺気を感じ取ると、足に力を込めた。


「ここだ!」


タイミングを合わせて、飛びのく。


上手く茨の攻撃を躱した。


集中しろ。


集中して、殺気を感じるのだ。


そうすれば、攻撃が発動する前に、そこから逃れることができる。


「それで、ジョセフさん! 悪魔! カレンさんに何があったんだ? あの姿はなんだ?」


(あれは、彼女の精神に住み着いていた悪魔が、彼女の身体を完全に乗っ取った証拠だ)


「乗っ取った…?」


(以前、君が悪魔に身体を操られたことがあっただろう?)


「僕が、悪魔の堕彗児に攫われた時ですね?」


思い出すのは、数か月前の【市原架陰奪還作戦】のこと。その時、彼は、初めて【魔影・参式】の発動に成功した。だが、出力を上げ過ぎたあまり、彼の身体は悪魔に乗っ取られたのだ。


(君に取り憑いている悪魔も、城之内カレンに取り憑いている悪魔も、階級は違えど、性質は同じ。悪魔は実体を持たない存在なんだ。だから、誰かに取り憑いて、身体を操る必要がある)


「じゃあ…!」


架陰は、茨の攻撃を躱しながら、確信に迫った。


「カレンさんに取り憑いている悪魔が、彼女の身体を、奪った…!」


(正確には、【一体化した】。という方が合っているかもしれないね)


「一体化?」


(そうだろ? 悪魔?)


(ソウダナ…、アノ女、現実ヲ見ルノガ嫌ニナッテ、悪魔ニ魂ヲ売ッタヨウダ)


「現実って…!」


ふと、共に戦っている城之内花蓮と、暴走している城之内カレンを見比べていた。


同じ城之内家に生まれた双子。


だが、忌み子を嫌った父親により、選別に掛けられ、見捨てられた。


(自分は選ばれず…、姉の方が選ばれたことへの悲しみ…!)


いや、違う。


(憎しみか…!)


一つ一つの攻撃が、まるで煮立った溶岩のようだった。


少し触れるだけで、皮膚表面がチリッと痛み、背中を突き抜けるような恐怖が身体を支配する。


底知れぬ、怒りと憎しみを掻き合わせた、誰にも止められない化物。


「カレンさん…!」


カレンが発狂する。


「あああああッ! あああああああああ、あああ、ッ!ああああ! あああああああああああああああああああああああああああああッ!」


鳥の劈くような悲鳴が、辺りに響き渡った。


その叫びにさえ、鈍重な殺意がのしかかり、架陰と花蓮の動きを鈍らせた。


「くっ!」


胸の辺りに痛みが走る。


(折れた肋骨が…!)


痛みのあまり、力が抜けて、その場に膝まづいた。


(動け! 架陰!)


「無理だ…」


冷静さを欠いていたときに、攻撃を食らいすぎた。


身体中の折れた骨が悲鳴を上げて、彼の足を引っ張っていた。


すかさず、城之内カレンが能力で空間中に茨を発生させると、鞭のようにしならせて架陰を襲った。


「架陰さま!」


花蓮が飛び込んできて、彼を突き飛ばした。


「花蓮さん!」


「あうッ!」


茨の棘が花蓮の背中を掠める。


身に纏っていたゴスロリドレスの布が裂けて、彼女の白い玉肌から血を噴出させた。


花蓮は架陰に覆いかぶさるようにその場に倒れこんだ。


「花蓮さん!」


「架陰さま…、ここは、私が引き留めますから…、逃げてください…!」


「ダメですよ!」


そうこうしているうちに、城之内カレンは音もなく二人に近づいてきた。


(くそ、ここまでか…!)






その③に続く




補足


市原架陰の精神には、悪魔と、ジョセフが住み着いています。時々、彼にアドバイスをしてくれますが、基本的に悪魔は彼の身体を乗っ取ろうと画策しています。

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