【第118話】 死神躍動 その①
死神とて
日輪の下で踊る
1
「戻れ!! DeathScythe!!」
響也が指示を与えると、離れた地面に突き刺さっていたDeath Scytheが浮かび上がり、響也の手元へと戻っていった。
柄を掴む響也。
(早く、早くしないと・・・!!!)
早く、この悪魔の堕慧児を半殺しにして、城之内カレンの居場所を聞き出さなければならない。
頭の中にそれだけを浮かべて、笹倉に斬りこんだ。
だが、笹倉はそこら中にいる雑魚ではない。
能力【ガーゴイル】と、【名刀・雷光丸】を併せ持ち、飛行と雷撃を駆使したトリッキーな戦い方をする手練。
心を乱し、左腕の骨が折れた響也の攻撃など、簡単にあしらわれた。
「ほらほらほらあっ!!」
連続で雷撃を放つ笹倉。
響也は奥歯を噛み締め、じれったい気持ちを抑えながらそれを躱していく。
しかし、狭い屋上。
響也の動きは簡単に読まれ、避けた場所に雷撃を叩き込まれる始末だった。
「ぐうっ!!」
雷撃をもろに食らう響也。
身体中の神経を蝕む攻撃を気合いで耐え抜く。
「くそっ!!」
「落ち着けよ」
自分に勝機があると見た笹倉は、余裕の笑みを浮かべて、響也との間合いを詰めた。
「お前の目的はわかってるさ」
「っ!!」
接近してきたのを好機に、Death Scytheの刃を斬りあげる響也。だが、笹倉はこれも読んでいて、いとも簡単に躱した。
「ほらよおっ!!」
返す刀で、響也に雷撃を打ち込む。
ドンッ!!!!
衝撃波で吹き飛ばされる響也。
またしても金網に背中を強打した。
「ああくそ!!」
思うように立ち回れず、苛立ちを隠せない。
その様子を見ていた笹倉は、一人、ペロリと下唇を舐めた。
(なるほどね・・・、この女の弱点・・・、城之内カレンか・・・)
この作戦を遂行する前、悪魔の堕慧児たちの間にとある取り決めがあった。
それが、【要注意人物・・・鈴白響也との交戦】についてだ。
UMAハンターの中には危険人物が存在する。
彼らが主に注視していたのは二人。
市原架陰と、鈴白響也だ。
市原架陰は、【魔影】の能力を所持。本体の戦闘能力は低いものの、魔影を発動すれば、身体能力は格段に跳ね上がる。更には、以前、夜行を吹き飛ばした【悪魔大翼】と呼ばれる、一撃必殺にも近い技が脅威。
鈴白響也は、死神の異名を持つこともあり、元のスペックが軍を抜いて高い。
そして、戦闘のセンスにも長けており、独学で編み出した【死踏】と呼ばれる殺陣歩法は、一度術中に嵌れば脅威。
悪魔の堕慧児たちは、この二人をどう対処するかで、この作戦の結果が変わると考えていた。
だが、蓋を開けてみたらどうだ?
(こいつ、仲間のことが気になり過ぎて、戦いに集中できてないな・・・)
笹倉でもわかった。
鈴白響也は、こんなに弱いはずがない。
城之内カレンのことを考えすぎて、動きが鈍っているのだ。
つまり、鈴白響也にとって、城之内カレンは弱点。
(どちらにせよ好都合)
ガーゴイルの翼で空中を飛び回る笹倉は、刀を中段に構えた。
(この機会に、殺させてもらう!!)
柄を握りしめる。
彼の握力に反応して、【名刀・雷光丸】の刃に淡い雷撃が走った。
バチバチ、バチバチ。
エネルギーを増幅させて、一気に解き放つ。
「【雷撃刃】!!!」
響也が顔を上げると、上空から雷撃の刃が迫ってきていた。
「くっ!!」
広範囲の攻撃。
この狭い屋上では、躱すことが出来ない。
「くそ・・・」
響也は舌打ちした。
かわせないのなら、迎え撃つしかできない。
(こいつは、使いたくなかったんだがな・・・)
雷撃が迫る中、折れた左腕の筋肉を引き絞り、何とか手を顔の方にもっていく。
そして、額を掻きむしるようにして掴んだ。
「能力【死神】・・・、発動!!!」
その瞬間、顔面を掴んだ響也の手のひらから、黒い粒子が溢れ出した。
「っ!! あれは!!」
黒い粒子は、響也の体を覆い、侵食していく。
(私も、この能力についてはまだよくわかっていないんだがな・・・)
それは、以前のハンターフェスで、命の危機に陥った響也が、土壇場で習得した【能力】だった。
響也の顔面に、白色の髑髏面が現れる。
そして、彼女の身体を、漆黒の布が覆った。
変貌したその姿は、まさに【死神】。
折れていたはずの腕の痛みが消えた。
「はあっ!!!」
響也は、Death Scytheを両手で握り、安定させると、雷撃に向かって一閃した。
「【命刈り】!!!」
DeathScytheの刃が眩く発光し、響也の斬速に合わせて、白銀の斬撃となって放たれた。
雷撃。
斬撃。
二つの高エネルギーが、空中で激突する。
ドンッ!!!!
空間を裂かんばかりにの爆音が辺りにこだました。
衝撃波が巻き起こり、空中の笹倉がよろめく。
「あいつ・・・、何をしやがった!!」
「あまり使いたくないんだよ・・・、これはな・・・」
死神の姿になった響也は、髑髏の面の隙間から笹倉を睨むと、DeathScytheを構えた。
「こうなったらしょうがない。短期決戦と行くぞ」
その②に続く
補足
響也の能力は【死神】です。
顔面に髑髏の仮面が現れ、身体は黒布で覆われます。能力の発動時間は数分ですが、身体能力が格段に跳ね上がり、斬撃を飛ばすことが出来ます。




